☆『R100』☆
10月6日(日曜)の午後、ご近所のシネコン“MOViXあまがさき”に出掛け、観て来たのは・・公開の始って間もない、松本人志による4本目の監督作『R100』だった。
これまでに、松本監督がメガホンを執った3本の作品を総て観て来たが、自身が主演も兼ねた『大日本人(2007)』は終盤に於ける“失速ぶり”にガッカリさせられ、同様に『しんぼる(2009)』では“引き延ばし過ぎな1シチュエーションコメディ”に残念さを覚えた。
次の『さや侍(2011)』では、自身が監督業に専念(?)する事による「進化/深化」を期待したものの“笑えるでもなく泣けるでもない物語世界”に、ただ苦笑の止まらなかった気がする・・
そんなワケで本作。主演に大森南朋を迎え、その周囲を豪華女優陣が固める・・って事でかなり期待はしていたんだが、、
※
3年前から妻=節子(YOU)が「遷延性意識障害」で人事不省となっているサラリーマン=片山(大森)。
大手家具店で真面目に勤務し、郊外の一戸建で8歳になる息子=嵐(あらし)と慎ましく暮らす彼は、ふとした気の迷いから(?)都内の古びたビル(大光ビルヂング)の一室に居を構える秘密SMクラブ『ボンデージ(BONDAGE)』に赴き「1年間の入会契約」を交わしてしまう。
しばらくは、支配人(松尾スズキ)の言葉通り「日常生活の中で、いつやって来るか分からない緊張感」を満喫する片山だったが、次第に『ボンデージ』の差し向ける“女王様”の出没先は「職場」や「自宅」まで及び、その行為もまたエスカレートして行く。
そんなある夜、自宅にやって来た“女王様”とのプレイ中に「とある事件」が起こってしまう。
以前から「クラブ退会」を申し出るも、認められなかった片山は、その1件を機に『ボンデージ』と戦う事を決意する。
そんな彼の前に現れたのは、国の特務機関に所属すると言う謎の男=岸谷(渡部篤郎)だった。
※
事前情報を殆ど(?)シャットアウトし、鑑賞に臨んだワケだが・・正直、(またもや)期待し過ぎたようで(×_×)
導入部こそ、キューブリック監督の遺作(かつ怪作、、)『アイズ・ワイド・シャット(1999)』を思わせる、そこそこにミステリアスさを帯びた幕開けなんだけれど・・次第に「陳腐でおかしな方向」へと物語は転がり出す。。
中でも「“したたか”やなァ」と言おうか「そう言う“躱(かわ)し方”はイヤやなァ」と強く感じたのは「片山を主人公とした物語」自体を劇中劇(いわゆる“メタ構造”)として描き、主人公と観客の間に「もう1枚の、客観的な立場の存在」を挟み込む、巧妙な(狡猾な?)演出を施した事。
でもって「彼ら」に「観客のツッコまんとするポイント」を総て“先回り”し指摘させてしまった!
で、コレをやられてしまうと、観客はもう何も言えなくなるし、その「言えないフラストレーション」が募ったり、或いは「制作側に軽視されてるような気持ち」を覚え始めたりするのである。
大森南朋と言う素晴らしい俳優を主演に迎えたにも関わらず、彼の持つ「らしさ」「潜在能力」を封じ込め、単調かつコント的なシチュエーションの連続や、CG加工された表情などで「折角の“大森南朋の良さ”を余りに殺してしまってる」ように感じたのはワタシだけだったろうか?
中盤以降では『ボンデージ』なる秘密クラブの存在が、いきなし「世界的な組織」にまで拡大し描かれ始めちゃうワケだが、そこまでの荒唐無稽な展開なんてのは、正直必要なかったし、例えそれ(必要性)があったにせよ、もっと「ハッキリ描かず、臭わせる」程度で“寸止め”しといて欲しかった。
第1回監督作品『大日本人』からこっち、どうにも作を重ねる毎に「見かけ倒しになっている」「つまらなくなっている」と感じざるを得ないワケで・・何か「投げやりになってしまう理由」があるのかないのか、その辺りの監督の考えを訊いてみたいトコである。
まぁ、訊いた所で「このような形で放たれてしまった」作品の評価が、世間でも、ワタシの中でも、回復するのは難しいが・・
~ こんなトコも ~
・冒頭部分ではモノクロ映像の味わいが奏功してた! 「レトロな建造物」や「立ち上る紫煙」がホントに良く似合う色合いだ!
・時代設定は古いらしい(1983年頃か?)が、登場する車両、装置などの「こだわりぶり」が甘い(現代の車とかが走ってた)
・『アイズ・ワイド・シャット』のテイストと思いきや、クローネンバーグ監督路線や、鈴木清順監督の『ピストルオペラ(2001)』なんかを遠回しに批判するような狙いか?
・“劇中劇”な演出が、妙に粗い。
・唐突に「拳銃を使いこなし」「バイクを乗りこなし」「英会話に堪能な」主人公は・・実は「潜入捜査官」だった?
・渡部篤郎の役柄を、板尾創路氏が演じても面白かったか(⌒~⌒ι)
・世界規模の組織との戦いに突入して行く辺りから、悪い意味で松ちゃんの「稚拙さ」や映像作家としての「集中力の無さ」が露呈してたように思う。
・大森南朋の用い方は勿体ない、特に中盤以降は・・
・YOU、前田吟、渡部篤郎は、まさに後半で“退場”状態だった。往年の某番組内のミニドラマ『木瓜の花(1993)』みたいだ。
・“丸呑み”のどこが「女王様プレイ」なのか? また吐き出すの? 『アナコンダ(1997)』のジョン・ボイトみたいに、、
・嵐くんの「半裸(パン1)+緊縛+吊り下げ」行為ってば、児童虐待(児童ポルノ)に抵触しない?
・板前さん業界は眉を潜めそう(連続で「寿司を平手でバン!」な演出)
・「どっきり」シチュエーションの拡大版、とも言えそうか?
・「入会金」「年間契約料」は一体幾らで、どう工面したのか?
・高級な寿司屋にぶらっと立ち寄ってた主人公。慎ましい生活とのバランスがちょっとおかしくない?
・某女王様は「大量の手榴弾の詰め込まれたアタッシュケース」を杉浦邸に持ち込んで、一体どんなプレイをする気だった?
・嵐君が途中から「トシオ君」に見えて来た(=^_^=)
・「唾液が追跡装置になってる」とはどう言う意味?
・YOU、前田吟、渡部篤郎の“退場”を、片山は(結局)知らなかったハズ・・
・『タイムコップ(1994)』に於ける“時空移動シーン”のような波紋映像演出は独特だった。
・ラストはてっきり「群像劇+大地震のオチ」と思ったが・・
・CEOのゴツさが印象的。。あの巨躯はやっぱり「CG処理」だったのか? ガンダルフやクセルクセス王的な・・
・細かい「笑える」ネタは多いけど、、「ごっつい」のや「尾を引く」のは皆無だった(×_×)
・某ビルで開催されてた「中国農民画展」に興味津々。
・「ソルピデム」と言う薬品に興味が湧いた。
・40分ほど過ぎてからの、ようやくのタイトル表示に「遅過ぎるわ!」とツッコミ(=^_^=)
・わがままな老監督の言動(?)を眺めてると『100年の時計(2012)』の爺さまを思い出した。
・劇中に登場する「城楠大学附属病院」の外観は、大阪城公園の敷地内にある「旧・大阪市立博物館」のレンガの建物だろうか? 似てる気がしたが・・?
・花言葉が「希望」なのは・・“ガーベラ”らしい。
・いきなり始る「関係者インタビュー」こそ、本作最大の“松ちゃんらしい演出”だったのかも知れない(=^_^=)
・本作も「喫煙シーン」が目立ってた。
・劇中に登場する、木製の包丁(?)ケースに『涼』の1文字が、、
・『ユーフォリア(Euphoria)』は「多幸感」を意味するそうだ。
・劇中に登場する店舗(看板)として「洋菓子ポアール」「うなぎ天地屋」「鮨の六兵衛」「大久保興業」「喫茶若草」などがあった。
~ こんなセリフも ~
片山「で、分かりました?」
「ベートーベンは作詞もしているんです」
“人は総てのものを2つに分けたがる”
「パパがちゃんとしないとな・・パパ、ちゃんとするからな」
「嵐に何をした?」
「とにかくやり過ぎだ。ちゃんとルールは護ってくれ」
「そもそも“(彼女が)生きてる”のを観た事がない」
「俺の身体は縛れても、俺の心までは縛れない」
支配人「・・お帰りですか?」
「“女王様”は常に貴方の傍にいますよ」
「でも、興奮しませんでしたか?」
「向上心の強い娘でしたね」
「ここから先は“彼女の弔い合戦”ですよ」
「CEOが動いたと言う事は・・
いよいよ本部を本気にさせたようですね」
「Mは、Mを極めるとSになる」
「Sは、より強大なSに導かれ・・“真の扉”が開かれる」
杉浦「節子・・もう“こんなもの”を着けて
生きるのは止めよう」
嵐「パパ、何かあったの?
コロッケがグチャグチャだよ」
岸谷「ちょっと寝てみて」
「あんた“ヤバいクラブ”に手を出してるだろ?」
「忠告しに来たんだ」
「あいにく、これは“プレイ”じゃないんだよ」
「敵は、こいつの唾液について来てるんだよ」
「よだれく~ん!」
女王様「ドキドキしたいんだろ?」
「あんたの“止めてくれ”は“やってくれ”
にしか聞こえないんだよ」
「いい事、言うじゃない」
「あたしも頑張ってみようかしら?」
「時間厳守は“ビジネスの第一歩”ですから」
「さてと、そろそろ行こうかね」
「(CEOは)大胆なのに繊細な方よ」
警官「それじゃムリだって。動きようないよ」
「プロレスは暴力じゃない」
「(当事者は)未成年でもないし」
「まぁ、実際に“分別ある大人”なのか
どうかなんて、分からないですけどね」
インタビュアー“(彼女は)どんな人だった?”
“CEOってどんな人?”
関係者「はい! もうダメ!」
「この後も“丸呑み”があるので」
「(前作と)テイストが違い過ぎだろ?」
「そもそも、知らない※※※※の声、
何で真似出来るワケ?」
「“100歳を超えないと理解出来ないだろう”
って監督が」
CEO「ここからは“高級ボンデージコース”だ」
「カ~タ~ヤ~マ~!」
関係者A「あの“揺れてる”“揺れてない”ってのは、
“何かの伏線”なのかね?」
関係者B「監督は“今の日本に於けるリアリティ”と
申しております」
※「揺れてる? ・・違うか」
「あれ? 今、揺れてます?」
「揺れてる? ・・違うか」
片山「どう言う事だ?!」
女王様「こう言う事だよ」
片山「ここは私の職場だぞ!」
女王様「たった今から“あたしの職場”だよ!」
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