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2014年8月 3日 (日)

☆『春を背負って』☆

先月。3連休の最終日でもあった、7月21日(月)の夜。
「イオンモール伊丹」の上層階に位置する、ややご近所なシネコン“TOHOシネマズ”で観て来たのは「生真面目&丁寧に撮(つく)られた作品である事」の実感出来る山岳ドラマ『春を背負って』だった。

本作は『劔岳/点の記(2009)』で鮮烈な監督デビューを飾った“撮影畑出身”の木村大作による2本目。
今回は「山岳測量に材を取った(明治期の)実録モノ」ではなく「山小屋経営を軸にした(現代の)家族のドラマ」なる体裁をとっていた。

音楽は『劔岳』に続き、池辺晋一郎氏が担当。多少、古めかしく(?)も荘厳な印象の調べが全篇を盛り上げてくれてもいる。

富山県・立山連峰。
大汝(おおなんじ)山の頂き(標高3015m)に建てられた「菫(すみれ)小屋」で、長らく管理人をしていた長嶺勇夫(小林薫)が遭難客を救い落命する。
その妻=菫(檀ふみ)は、これを機に近隣の山小屋「雷鳥荘」に「菫小屋」を譲り渡そうとするが、葬儀のため一時帰郷した東京在住のひとり息子=亨(とおる、松山ケンイチ)が「小屋を引継ぐ」と宣言するのだった。

元々、山小屋経営と言うものが、採算の取れぬ“赤字続きの生業”でもあったため、母=菫をはじめ、周囲は猛反対するのだが、亨の意思は強かった。
麓の「民宿ながみね」で菫を手伝う快活な女の子=高澤愛(蒼井優)や、亡き父の(大学山岳部の)後輩だと言う“風来坊気質”の多田悟郎(豊川悦司)の支えもあり、久しく山に向き合って来なかった亨も、次第に「山小屋の主人」としての技量を積み、自覚・自信を身につけてゆく。

悟郎を“山の先達”を仰ぎつつ、数々の登山客らとの出逢い、そして経験を重ねる亨だが、来春に向けて小屋をいったん片付ける「小屋終い」の日に、思いもよらぬ“大きな事件”が巻き起こるのだった・・

笹本稜一氏の著した(同名の)連作短編小説を原作とするが、舞台となるのが「現代」である事や、キャスト陣を豪華にし過ぎてない(?)辺り、より物語そのものに集中して観る事の叶った気がする。また、青年である主人公の「成長のドラマ」「ぎこちない恋愛物語」なども軸になっており、山にとんと詳しくない観客が観ても「取っ付き易い」「微笑ましい」ドラマに仕上がってたように思う。

中でも特筆すべきは、主人公を導く悟郎のセリフの数々! 『レイクサイド・マーダーケース(2005)』や『妖怪大戦争(2005)』『ジャッジ!』ではあんまし良い印象のなかったトヨエツ(豊川)が、ここでは「助演男優賞モノだよこりゃ!」と賛辞を贈りたくもなる程の「存在感」「優しさ」を兼ね備え、心に残る言動を次々と放ってくれた!
多少「キザ過ぎる」「ニヒル過ぎる」きらいはあるんだが、ホンマに男が惚れる程の(?)人物を好演してくれたなぁ・・と思った。

主人公の「元トレーダー」と言う職歴や、バブル崩壊の際に「地獄を体験した」とされる悟郎の過去も、現在の「山と向き合う姿」と対照的に配されてて面白い。

「屋内シーンがスタジオ撮影っぽく見えて」しまったり「重要シーンでの音楽の入り方が強引に聞こえて」しまったり「ドラマ部分の演出が古臭く思えて(←スローモーション映像とか)」しまったりもするんだが、、その辺りの残念さも、作品全体からにじみ出る「生真面目さ」を前にしては、さほど気にならなくなるのが不思議である(=^_^=) まぁ『岳/ガク(2011)』でも、スタジオ撮影っぽいシーンは少なからずあったワケだし・・(⌒〜⌒ι)

トヨエツが苦手な方、本作はおススメです(苦笑) ムリに「ベタ踏み」せずとも、感情移入出来ちゃうハズです。

※本作で気に入られた方には、トヨエツ主演の『1枚のハガキ(2011)』もおススメしときます(=^_^=)

〜 こんなトコも 〜

・木村監督。前作と本作の間に『北のカナリアたち(2012)』の撮影をこなしておられるそうだ。
・エンターテインメント性がやや低めだった印象は(確かに)ある。
・エンドロールで流れるのは、山崎まさよしの「心の手紙」・・書下ろしの新曲だそうで。
・中盤で市毛良枝さんの放つ短歌(俳句?)を・・「完全に聞き逃してしまった」のが悔やまれるトコだ(×_×)
・市毛さんの旦那役とし、どうにも柄本明の顔が浮かんでしまふ、、(⌒〜⌒ι)
・亨の勤務していた「GAC(グローバル・アセット・キャピタル社)」では、専務(演:嶋田久作)や部長(演:仲村トオル)の重い存在感に、観客として観ながらですら息が詰まりそうになってしまった(×_×)
・ガイド役で出演してたしとたち(清水・加賀の両名)は、モノホンなんやろか? 山小屋に3人(亨、菫、愛)を案内し、帰りはスキーで麓まで滑降して行った姿が、ベテラン過ぎて眩しかったで(=^_^=)
・「(最期となる)電話で父親と話せなかった」ってのは『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)』のオスカー少年もそうだけど、かなり心に重く残されてしまうものがあるだろう。
・「菫小屋」で売られてる特製Tシャツは2500円。意外に良心的な価格設定だと思う(・ω・)
・「美人か?」と問われると、ちょいと困ってしまう(←ファンの方、すみません)蒼井優さんだが、その明るいキャラは素晴らしいと思う。標高3000m級の山頂で、彼女と両手を繋いでグルグル回れたら、それはそれで(空気の薄い事も手伝って)メッチャ爽快やろね(=^_^=)
・「山岳監修」の多賀谷治氏は、国際山岳ガイドとの事だ。
・「山桜」「鯉のぼり」「紫陽花」など“まんま季語”みたいな情景を「どストレート」に映してくれるシーンにも、逆に好感が持てた。
・本作を観てて「ロックチェア」が欲しくなって来た! いつか買うぞ!(今の生活では置く場所がない(=^_^=))
・重さ=60キロの荷物を担いで山登り・・ 両膝が砕けるやろな、、(×_×)
・山小屋の朝は「午前3時半起床」との事だ・・ぐふぁっ!(×_×)
・完成したばかりの椅子を背負って(菫小屋に)やって来た、粟巣野家具工房の中川聡史(新井浩文)。そのタイミングがスゴい!
・山頂でも、ネット環境に限っては快適そうだった。
・『重力ピエロ(2009)』を観た直後だと「本作ってば、岡田将生を背負って山を歩くハナシなんやろか?」と勘違いしたりするのかも知んない(いや、ないない)

~ こんなセリフも ~

亨「寒い・・恐い」
 「久しぶりに登ると・・キツいっすね」
 「“山の天気”みたいな人だな」
 「全身が棒になったようだ」
 「親父なら、どうしてたかなぁ」
 「何となく、お前には
  話しておきたかったんだよなぁ
 「この低気圧は脚が速い。
  明日には晴れますよ」

勇夫「一歩一歩、自分の力で歩けばいいのだ」
  「ゆっくりでいい」
  「自分の脚を使え」
  「ザイルに頼ればいい」
  「気をしっかり持て」
  「着いたぞ。良く我慢した」
  「人はな、年を重ねるにつれ
   沢山の荷物を背負って行かなければならない」
  「そこには地図も目印もない。
   行き先は自分で決めなければならん」
  「鶴は、自分の帰るべき場所をちゃんと知っている。
   人間なんて、とても及ばん」
  『もう大丈夫だからな。脚、動かせる?』

菫「全く・・独りで勝手に逝ってしまって」

愛「“此処が私の居場所なんだ。此処で生きたい”って思った
 「(あの人は)窒息寸前の私に、沢山の酸素をくれた」
 「よし、奇麗になった。来年も宜しくお願いします」

悟郎「(登る)先は見ない方がいいよ
  「一歩一歩、負けないように、普通に歩いたらいいんだよ」
  「あんたは荷物とケンカしてる。
   荷物とは仲良くしないと
  「やっぱ、山で吸う煙草の味は格別やね」
  「煙草も人間も、煙になって初めて
   “本当の価値”が分かる
  「山ではお互い様。当たり前の事だよ」
  「気にしない! 気にしない!」
  「いつも自分の居場所を捜して
   旅をしているのさ」
  「人間は裸で生まれて、
   独り手ぶらであの世に逝く」
  「ゆっくりでいい。足元を確認して」
  「落ち着くかって? 当ったり前だよ」
  「3000m級の単独行は駄目」
  「(登山は)“自信の付いて来た頃”が1番危ない
  「同じ失敗を繰り返さない様にしたらいいんだよ」
  「欲をかいちゃいけないよ
  「だから“有難う”って言葉が
   身に沁みて来るんじゃないかな」
  「人生は徒労(無駄な骨折り)の連続なんだよ。
   それでも、一歩一歩歩いて行く。それが人生なんだ」
  「あれは、きっといい奥さんになるよ」
  「話したい事があったら、何でも話したらいい。
   我慢するんじゃない」
  「さ、俺はもう寝るよ」
  「“荒らさず、絶やさず、欲張らず”だよ
  「(これまで)好き勝手に生きて来た。
   人に迷惑をかけてまで生きたくない」
  「有難う・・もういい」
  「還されちまって」
  「ただ今、帰りました」
  「人間は、他人の心との触れ合いが
   あってこそ、生きて行ける」
  「鶴は軽々と超えて行く。
   自分の居場所に還るために」
  「あの2人は“決まり”やね」

聡史「此処が、この樹の居場所なんだな」
  「半端な事ばっかだ」

部長「空気、美味いんだろうなぁ」

※「数字は残酷だ」
 「“幸せの終わり”は突然やって来る

菫「全く“親の心、子知らず”だわ」
亨「それを言うなら“子の心、親知らず”だよ」

悟郎「彼女は今、自分が背負ってる荷物の1ツを
   下ろそうとしている」
亨「・・重かったんだろうな」

亨「俺に酸素をくれたのは、悟郎さんと愛ちゃんだね」
愛「沢山、酸素をあげますね

芭蕉の句『山路来て 何やらゆかし 菫草』

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コメント

木村大作監督。
思い起こせば随分と昔日に、友人に誘われてとか「何となく」とかではなくて、初めて自分の強い「観たい!」の思いで観に行った映画の「撮影」担当が木村氏でした。
パンフレット買いましたよ~、燦然と「木村大作」の名が輝いて見えました。

しかし徹底的にリアリティにこだわる氏の撮影現場は非常に厳しいそうですね。
「ホンモノがあるのに何故CGを使うのか!ホンモノがあるのに何故ニセのロケ地で撮るのか!」というがご持論のようですね。

>屋内シーンがスタジオ撮影っぽく見えて

そうですか、そういうこともあるのですね、やはり。

『劔岳/点の記』は私も(DVDでしたが)観ました。
山岳モノはやはり“迫りくる迫力”ですよね。
撮影現場での香川さんの悲鳴が聞こえてきましたが。^_^;

投稿: ぺろんぱ | 2014年8月 5日 (火) 12時45分

ぺろんぱさん、ばんはです。

昨夜、ベランダの床にカエル君がやって来てました。2階までどうやって上がって来たのかが、実に不思議でした。
何故だか『マグノリア』を思い出してしまいました(⌒〜⌒ι)

>思い起こせば随分と昔日に、友人に誘われてとか「何となく」とかではなくて、
>初めて自分の強い「観たい!」の思いで観に行った映画の「撮影」担当が木村氏でした。
>パンフレット買いましたよ~、燦然と「木村大作」の名が輝いて見えました。

どの作品なのでしょうね? パッと思い浮かぶのは高倉健さんのご尊顔なのですが。。

>しかし徹底的にリアリティにこだわる氏の
>撮影現場は非常に厳しいそうですね。
>「ホンモノがあるのに何故CGを使うのか!
>ホンモノがあるのに何故ニセのロケ地で撮る
>のか!」というがご持論のようですね。

スタッフ泣かせな方でもあるのかも知れません??

>そうですか、そういうこともあるのですね、
>やはり。

「撮りたいシーン」以外は妥協されるのか・・?
いやいや、ちゃんと撮影したはるのかも知れません。。

>『劔岳/点の記』は私も(DVDでしたが)観ました。
>山岳モノはやはり“迫りくる迫力”ですよね。
>撮影現場での香川さんの悲鳴が聞こえてきましたが。^_^;

また観直したいですね!

投稿: TiM3 | 2014年8月11日 (月) 02時07分

カエルくんによろしくです。
マグノリア、そういえば空から降って来ましたもんね。

木村氏撮影の映画は『復活の日』です、すみません、サラッと書いとけばよかったですね。先日BSでやってたのを録画したままですので、時間を作ってゆっくり観返したいものです。

投稿: ぺろんぱ | 2014年8月13日 (水) 09時05分

ぺろんぱさん、ばんはです。
今週末は、観に行けませんでした(⌒〜⌒ι)

>カエルくんによろしくです。
>マグノリア、そういえば空から降って来ましたもんね。

因みに、リュック・ベッソン監督の『最後の戦い』では、空からお魚が降って来ましたっけ、、

>木村氏撮影の映画は『復活の日』です、すみません、
>サラッと書いとけばよかったですね。先日BSでやってたのを
>録画したままですので、時間を作ってゆっくり観返したいものです。

おお、ウィキで調べてみました。
女王陛下の草刈さんが主演なんですね! 元気のある頃の、多少「暴走気味」っぽい(?)カドカワ作品と言う事で、観てみたい気持ちがフツフツと高まってます(=^_^=)

投稿: TiM3 | 2014年8月18日 (月) 01時22分

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