« ☆『クロニクル(2012)』☆ | トップページ | ☆『グランド・イリュージョン』☆ »

2013年11月 3日 (日)

☆『地獄でなぜ悪い/WHY DON’T YOU PLAY in HELL?(2012)』☆

30日(水曜)の夜。
若干の残業をこなした後、梅田のシネコン『ブルク7』へと向かい“レイトショー”で観て来のは・・園子温が監督・脚本・音楽を手がけた任侠アクションコメディ(?)『地獄でなぜ悪い/WHY DON’T YOU PLAY in HELL?』だった。

当初は「別な作品」を観ようと考えていたワタシだが・・「そっちを観る場合、上映開始まで更に20分も余計に待たねばならない事」「ネットで『地獄で〜』の評価の方がポイントの高かった事」から、いきなり本作鑑賞に切り替えた次第。

で、久しぶりの「ブルク訪問」となったワケだが(少なくとも“約5年ぶり”ではなかろうか?)・・チケットカウンターが消失しており、3台ほどの券売機が並んでたのには驚いた。何とまぁクールな・・

大阪勤務に戻って以来「仕事帰りに立ち寄って観る」って言う経験も(確か)初めてだった事から、適度な「新鮮さ」「解放感」があって楽しめたかも知れない・・が、肝心の作品が「意外にもアレ」だったのがどうにも・・(⌒〜⌒ι)

どうやら自身が“にわかファン”であろう事をぼちぼち公認せざるを得ない(=^_^=) ノリにノッてる映像作家=園子温(そのしおん)の最新作。

関東圏の(?)架空の地方都市=深作市(=^_^=)を舞台に、10年以上の長きに渡り睨み合いを続ける2つの暴力組織を軸に据え、その一方の組長の娘である元CMタレントのヒロイン、そんな彼女に翻弄される若者、そして“映画の神様”との出逢いを渇望する自主映像制作集団のエキセントリックな面々・・の体験する“驚くべきおぞましき1日”が、コメディタッチで、バイオレンス&スプラッターに描かれる。

・・

暴力組織・武藤組を率いる武藤大三(國村隼)は、10年前の抗争の中、命がけで彼を庇い(その結果)投獄されてしまった愛妻=しずえ(友近)の出所をあと9日後に控えていた。

そんな大三としずえの間には、当時キッズタレントとして才能を開花させつつあったひとり娘=ミツコがいたが、抗争事件の影響で(反響の高かった)TVCMは放送中止となり、彼女も女優・モデルとして「決定的なブレイク期」の訪れないままに年頃の娘(二階堂ふみ)へと成長していた。

撮影現場を男と飛び出し1週間。行方をくらましたミツコは囚われ、組の監視下に置かれていたが、対立組織=池上組の襲撃に乗じ辛くも自力で逃げ出す事に成功。

彼女は追っ手をまくため、街でたまたま見かけた青年=橋本公次(星野源)に「今日1日だけ、10万円で“恋人のフリ”をして欲しい」と頼む。
ミツコの魅力にノックアウトされた公次は、気安くOK(?)するが、それは彼の運命(って言うか人生)を大きく変える事となる。

一方、ひなびた映画館『昭和座』に寄生(?)する自主映像集団『ファック・ボンバーズ(以下“FB”)』は、リーダーである自称映画監督=平田(長谷川博己)を筆頭に“永遠に語り継がれる1本”の制作を悲願としつつ、未だ“資金・コネ・キッカケ”の3大不足(=^_^=)のせいで果たせずにいた。

「驚くべき偶然」によって重なり合う事となる公次(&ミツコ)と平田たち『FB』の運命。
彼らは武藤の「間もなく出所して来るしずえのため、愛娘=ミツコの主演映画を撮る!」と言う“鶴の一声”に従う形で“永遠に語り継がれる1本”の制作に取りかからざるを得なくなる。

平田は、自身の目指す“究極のアクション”を撮るため、武藤組と対立する池上組のドン=池上純(堤真一)に“アポなし突撃”で協力を要請、見事に承諾を得る。

かくして「武藤組vs池上組」と言う“マジモンの抗争”をシュールに描き出す、ドキュメンタリーでスプラッターなアクションシーンの撮影が開始されるのだった・・

いつものように(?)暗がりの中、手探りでメモを執りながら鑑賞を進めたワタシだったが、物語のハチャメチャさに、結構ペンが止まってしまい「あちこちを書き逃した感」の残る作品でもあった(⌒〜⌒ι) 監督としては、思う存分ふざけまくったように思えるワケだが、そのふざけ度合いがワタシにとっては“(自身の)ツボ”とかけ離れてて「う〜ん・・」と言う感じ。

最近観た、松本人志監督の『R100』ほどヒドくはないんだが「胸のすく」「ゲラゲラ笑える」ノリかと言うと、正直そうでもなかったかなぁと。

序盤、いきなり始まる「血みどろ抗争」と“血まみれ割烹着姿”で、包丁1本を手に、街中を疾走する組長の奥さん(演:友近)
中盤、町角の祠(?)を「きっかけ」として“強烈な運命”で出逢う2組の主人公ら
後半、リハもなく「長回し」「1テイク」で撮影の決行される“血みどろ”の抗争ドキュメンタリー

・・と言う流れで(大まかな)ストーリーは展開するんだが、1つの街全体で“実録”的に事件が発生⇒推移し描かれるにも関わらず、総じては「断片的かつ密室劇っぽい雰囲気」が払拭出来てないのだ。尤もそれ自体が「狙って撮った密室劇」だったような感はあるんだが・・後半以降、ロケーションが「1ヶ所に完全固定される」ワケでもあり、もう少し「意識して“空間的広がりのあるロケーション”で前半~中盤を描き、後半〜終盤とのメリハリを巧くつけて欲しかったな」と思うのは、ワタシのわがままだろうか。

本作最大の重要人物を「ミツコ」だと思ってたワタシだが、扱いとしては「平田」の方が“最重要”だったのだな、と終盤で(ようやく)気付かされた。確かに、モノローグ(独白)を放ってる人物は、終始平田だったんだが・・それならそれで、彼のキャラクター(特に私生活や家族など)をもう少し「分厚く」設定&描写して欲しかったような。

と言うか、この『FB』って言う集団、とにかく「生活感なさ過ぎ」で説得力に欠けてたし(⌒〜⌒ι)

後半からは、主要キャラ陣のテンションも上がって来て、日本刀を各々握りしめてのリアルチャンバラ(=地獄絵図)に突入するワケだが・・必要性のない(ギャグタッチな)手・足・首の飛び散り方、何だか「客席まで臭気の漂って来ない」血のりの色合い&質感、どうにも「ナマクラそうな」日本刀の(刃の)質感・・ と“悪ふざけなスプラッター展開”の延々と続く印象だった。

『キル・ビルvol.1(2003)』『13人の刺客(2010)』『キックアス(2010)』を期待して観てみたら『悪の教典(2012)』『(ノリの悪い)ブレインデッド(1992)』だった・・みたいな感じだろうか(=^_^=)

色んな意味で物語を牽引してた國村さんが『ディープブルー(1999)』に於けるサミュ・Lおじさんのような“唐突さ”でもって「退場の先陣を切る」に至って、やっとワタシは「ああ、監督は物語そのものを盛大にぶち壊すために、今まで積み上げて来てたんや」と思い知らされるのだった。んでも、いきなり過ぎて“描写を楽しめなかった”のもあるので「國村さんのアレ」シーンは、機会あらば、もう1度観てみたいものである。

やや園作品に違和感の残されてた(=^_^=)のは、堤さん、長谷川さんだったかな? 「そこまでせんでも」「ちょっと(演技が)しんどそう」って印象を受けたりも・・(⌒〜⌒ι) まぁでも、この先しっかり“園子温ファミリー”に組み込まれて行くのかも知んないけど・・

〜 こんなトコも 〜

・全力製薬の歯磨きのTVCMは、インパクトこそあるんだけど・・も少し「全力で」制作して欲しかった(⌒〜⌒ι)
・アクションスター=佐々木のインパクトがとにかく凄かった! 演じた坂口拓氏は「本作出演を以て、俳優界を華々しく引退」されたそうだが「ホントに本作が最期で良かったの?」と素朴に感じたのはワタシだけじゃないように思う。(この作品の演技で)オファーがバンバン来ると思うんだが(まぁ、それが引退決意の決定打となったのかも知れないが・・??)
・しずえを交えた「親子のドラマ」は見事に中断されてしまった。 って言うか、友近の存在は何処に行ったの?
・登場キャラの殆どが「アレ」しちゃう辺りは『戦国自衛隊的(1979)』のノリやね。
・“妄想”を匂わせつつ、劇中の出来事の殆どは“リアル”だった。
・ヒロインを力演した二階堂さんの印象は「“パンクな言動”の宮崎あおい」って感じだった。
・一番の狂人は監督だった!! 「自作のためなら何でもやる」ってノリは、芥川龍之介の小説『地獄変』辺りが元ネタやろか?
・馳星周と同様のノリで「温子園」ってな施設が何処かに出来たら面白いんだが。
・「國村氏退場」は“いきなり”なので要注意!
・「スベりつつも、勢いを落とさぬまま斬り下ろした」って感じでは『R100』に勝ってると思う(=^_^=)
・監督は「インディーズ狙い」で「評価を余り気にせず、伸び伸び撮った」ってトコやろか?
・ミツコが殺陣をするシーンで、斬られた(左右に並んだ)相手からカラフルな血潮が虹のように吹き出る描写にしびれた! あれは『たどんとちくわ(1998)』に対するオマージュか?
・終盤における公次の運命が『ウンタマギルー(1989)』での(フラフラ歩く事となる)小林薫のようだった(×_×)
・監督の“究極の自己満足作”って点では『ピストルオペラ(2001)』にも通じるトコがあるのかな、と。
・北野武作品風に、本作にキャッチコピーをつけるとすれば『全員狂人 完結。』やろかね。
・ヒロインのインパクトを(中盤以降も)維持させ、あんな「あっけないオチ」にはして欲しくなかった。
・ラストの『カット!』発声は、誰もが予想出来そうなオチでイヤだった(⌒〜⌒ι) エンドロールの総て終わった後に「黒い画面に音声のみ」でやったら、更に良かったんじゃないか?
・久々に「怪鳥音」入りの“徹底した”ブルース・リーそっくりさんを観た! イエローのトラックスーツ着用、長髪、細マッチョ、ヌンチャクさばき・・どれを取り上げても、ファンを狂気させてくれる仕上り!(惜しむらくは、ご尊顔が“松重豊”系だったけど、、)
・(成り切り)ドラゴンの迎えるオチは『レッド・ドラゴン/新・怒りの鉄拳(1976)』へのオマージュか?
・関わる男を、残らず“制御不能”にしてゆくヒロイン!
・だが、平田監督だけは“周囲”に全く影響されてなかった!
・誰が観ても「やり過ぎ」な木村刑事は一体どう言うつもりだったの?
・ミツコ&公次の設定を『ロミオ+ジュリエット(1996)』っぽく考慮してはどうだったろ? 公次が余りに「単なる通りすがりキャラ」だったのが悲し過ぎ、、
・國村さんの突然の“アレ”には『模倣犯(2002)』に於けるピース(=網川浩一、演:中居正広)の“アレ”と同じぐらいびっくり!
・もうちょっと「日本刀」の「バッサバッサと斬れますよ!」って描写力を高めて欲しかった。
・「少女」「血で満たされた床」と来れば・・これはもう『シャイニング(1980)』か?
・敵対する組の本拠で「愛娘の巨大なピンナップ」を発見した時の、武藤の「何だこりゃ?」って表情が絶妙だった(=^_^=)
・「覊不放奔(右横書き:ほんぽうふき)」「仁義一道(縦書き)」「徳成武忠(右横書き)」などの墨書が登場。しかし「忠武成徳」って余り聞き慣れないなぁ・・(「忠節ナル武功ガ徳ヲ成ス」なんかな?)
・「深作警察」「広能町交番」「マキノ通り」などは、比較的分かり易いオマージュのようである(=^_^=)
・「回転斬り」を観て『北斗の拳』に登場するフォックスの「跳刀地背拳」を思い出した(=^_^=)

〜 こんなセリフも 〜

平田“総ては(10年前の)あの日から始った”
  “いつもと違う不穏な空気を感じ
   ・・そして彼奴(あいつ)に出逢った”
  「そう! その顔だ!」
  “この日、この時・・俺たち
   『ファック・ボンバーズ』が1つになった”
  「そう来なくっちゃ! 今から撮影だぜ!」
  「良かった! “映画の神”が降臨してた!」
  「“永遠に刻まれる1本”を撮りたい!」
  “つまらない大人になったのか、だって?”
  「情熱とか、愛とか・・ “とか”でいいじゃん」
  「もしかして、今日が“大事な日”かも
   知れないじゃないか!」
  「“戯言(たわごと)”こそが最も神聖なんだ!
   ホォリィ、タワゴト!」
  「物事を“表面だけで捉える”のは止せ
  「・・全然分からん」
  「(その日が)今日だったんだ!
  「考えましょう・・10秒下さい」
  「・・撮れてるぞ」
  「音、頂きます」

ミツコ「今日1日、あたしの恋人になって。
    ・・“フリ”でいいから」
   「“お別れのキス”よ」
   「怖くないの? あたしが」
   「男なら、歯を剥き出して笑いな!」
   「あたしって、どうせバカじゃん。
    死ぬ時まで、どうせバカじゃん。
    だから1回ぐらい、パァッと咲きたかったな」

公次“何故だろう・・この人に抗えない。
   何故、逃げない俺? あなたは誰?”
  「今すぐ、僕と一緒に映画を作って下さい!」

木村刑事「“正当防衛”で、人が死ぬか?」
    「お前、スケベで良かったな」
    「次、行くぞ」

FB「すげぇな! 映画みたいだ!」

手下「バカ野郎! すぐ撃つな!」
  「男だったら覚悟しとけ!」
  「コカイン抱いてろ!」

武藤「おい、枕ぐらい用意してやれ」
  「寝る? 眠った方がいいよ」
  「俺は冷静か?」
  「正気だから、ここにいる
  「ここは“ニセモノ”ばっかりだ
  「“映画班”を作る」
  「いいか、それが“仁義”つぅもんだ」
  「娼婦とは朝飯しか、愛人とは昼飯しか一緒に喰わん。
   俺と一緒に夕飯を喰う女は、
   “俺と一緒の墓に入る女”だ」
  「晩飯を共にするのは“家族”だからだよ」
  「逃げたら殺す。完遂出来なかったら殺す。
   いずれにしても、巧くやらなきゃお前を殺す」

しずえ「空は別に、私を驚かせたくて
    青いんじゃない」

池上「そうか・・撮りたいだけ撮れ。
   ただし・・(俺が)あの角を曲がるまでだ」
  「今日から全員、和服に着替えろ」
  「撮影してるのか?」
  「ここは平和でいいね」

監督「それにあんた今、映画どころじゃないだろう?」

池上の女「“腹をくくる”なら・・和服よ」

老技師「“生涯の1本”・・良い映画を撮ってくれ」

池上「一旦“手打ち”に出来ねぇか?
   お互い、クールになろう」
武藤「ここは一旦、クールに休戦してやる」

佐々木「その日はいつ来るんだよ?!」
平田「いつか来る!」
佐々木「今日じゃねぇんだろ?!」
平田「今日かも知れない!

平田「映画で死ねたら」
佐々木「死ねるか?」
平田「死ねるね」
佐々木「じゃ、死ね!」
平田「なかなか死ねねぇんだよ!」

武藤「分かってくれるな?」
手下「・・少し!」

手下「自信はねぇけど“死ぬ気”でやりやす!」
武藤「本当に死ぬかもな」

池上「どう言うこった?」
平田「その(言葉の)意味するままです」

※「で、その映画はいつ作るの?」
FB「明日!」

刑事「やっぱり“映画”じゃないんですか?」

|

« ☆『クロニクル(2012)』☆ | トップページ | ☆『グランド・イリュージョン』☆ »

コメント

なんだか物凄い作品なのですね。“乗れ”なければ疲労困憊、な世界のようですね。
某紙の映画評ではかなりの高評価だったのですが、私は園監督作品ということでかなりの気合が要りそうと怖気付いたこともあり、、、。
しかし壊れる長谷川さんというのも見てみたかった気もします。

投稿: ぺろんぱ | 2013年11月17日 (日) 17時00分

ぺろんぱさん、ばんはです。

もう少し「投げっ放さない」タイプの作品だと思ってたので、
主要人物が「退場」を開始するに至って・・「あ、こう言う流れにするのね」とちょっと冷めちゃってた自分がいました(=^_^=)

>某紙の映画評ではかなりの高評価だったのですが、

「本作を高評価するのが、センスのある奴」なんてな流れには、決して乗りたくないワタシです(=^_^=)

「残念な部分には、例え世界を敵に回そうとも、はっきり残念だと言おう」
・・と、ぼそりと呟きたいっ(=^_^=)

>私は園監督作品ということでかなりの気合が要りそうと
>怖気付いたこともあり、、、。

『冷たい熱帯魚』なんかに比べれば、随分とコメディ路線なので観やすいでしょう(=^_^=)

>しかし壊れる長谷川さんというのも見てみたかった気もします。

『家政婦のミタ』も『セカンド・ヴァージン』も観てないので、
こんなしとやったんか・・ と、ある種の発見でした。
それにしても、本作では、随分とお若い印象でしたね〜

投稿: TiM3(管理人) | 2013年11月19日 (火) 00時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ☆『クロニクル(2012)』☆ | トップページ | ☆『グランド・イリュージョン』☆ »