« ☆『デンジャラス・ラン』☆ | トップページ | ☆『鍵泥棒のメソッド』☆ »

2012年9月18日 (火)

☆『夢売るふたり』☆

14日(金曜)の夜。
クルマで“ワーナー・マイカル・シネマズ綾川”に向かい、夕食後に「レイトショー」で観たのは・・これも期待値を高めてた1作『夢売るふたり』だった。

『ゆれる(2006)』『ディア・ドクター(2009)』と、その手がける作品の質が飛躍的に“洗練”されてゆく、才能の極まりつつある女流監督=西川美和による長編ドラマである。

東京都内の片隅。

「開店5周年」を迎えた小料理屋『いちざわ』の店内は活気に溢れていた。
厨房で精力的に働く料理人=市澤貫也(阿部サダヲ)、その姿を見守りつつ甲斐甲斐しく働く妻=里子(松たか子)。

常連客にも恵まれ、ささやかながらも充実した日々を送っていた市澤夫妻だったが・・焼き鳥を調理中の(火の)不始末により、調理場は紅蓮の炎に包まれる・・

瞬く間に店舗は全焼。一瞬にして“積み上げて来た総て”を失ってしまった2人。

上京後10年目にして、失意のどん底に叩き落とされた貫也に対し、前向きな里子は「もう1度やり直そう」と“酒浸り”となってしまった夫を支えるべく、ラーメン屋で働き始める。

そんなある日、かつての常連客=玲子(鈴木砂羽)と終電間際の駅のホームでバッタリ「再会」した貫也は“成り行き”から彼女と一夜を共にしてしまう。

“誤摩化す事の出来ない”この「不器用な夫」の不貞は、たちまち妻の知るトコロとなるが・・里子の中に「寂しい女の人生(=心の隙間)に、夫をつけ入らせる事で、容易く大金を貢がせる事が出来るのではないか?」と言う“尋常ならざるアイデア”が閃くのだった。

そして・・

結婚願望の強い出版社OL=咲月(田中麗奈)、幸薄き風俗嬢=紀代、孤独な社会人ウエイトリフティング選手=ひとみ、幼い息子を持つシングルマザー=滝子(木村多江)・・ 貫也の“秘められた才能”が開花し、夫婦は次々と百万円単位の金を借用する事に容易く成功する。

それと共に「スカイツリーを遠くに望む新店をオープンする」と言う夫婦の夢(目標)も、現実味を帯びて来る。

そんな中・・「女性を騙し続ける行為に次第に“麻痺”してゆく夫」「夫との“性生活”を他の女性に委ねる事に、心を病んでゆく妻」「恋人の“愛情”を確かめんがため、私立探偵=堂島(笑福亭鶴瓶)を雇う決断を決断をする女」のそれぞれの思惑が“捩じれた形”で交錯する事となり・・


まずは・・長い! 上映時間=137分と言う物語に、少々ヘトヘトになってしまった(×_×)

松さんの“狂気性”みたいなモノは、既に『告白(2010)』でたっぷりと見せて頂いてたので、それなりに違和感なく観る事が叶ったが、、阿部さんの“コミカルな持ち味”が完全に生かし切れてた、とは言えず(←ワタシ個人の感想です) どっちかと言うと「ネクラなキャラ」で貫徹されてたので「勿体ないなァ」と残念に思った。
「コメディ作を期待してジム・キ※リーの新作を観に行ったら・・完全なるヒューマンドラマでして」にも通じる残念さである(×_×)

“結婚詐欺師”としての才能が覚醒し、調子に乗って来て、ムチャクチャな言動モードに突入しちゃう・・ぐらいの“過激な暴走”を見せて欲しかったトコである。
「“大捕り物”に発展する後半」なんかでもイイし『たどんとちくわ(1998)』に於ける真田広之篇的な“妄想カラフル世界”でも悪くはないだろう。

「夫婦で結婚詐欺」って展開の“滑稽な悲しみ”にもっと強烈なスポットが当てられるのかと思いきや・・バランスが悪いと言おうか、市澤夫婦の「スキンシップ」みたいな演出は意図的に(?)殆ど描かれず、妻が夫の「詐欺師言動」を手取り足取り指導するってな演出も、ベランダでの“電話対応”ぐらいしか出て来なくて残念だった。

私的には、あのベランダのシーンがとても楽しかったので、もっともっと同じネタを引っ張って、引っ張り回して欲しかったトコである(=^_^=)

貫也と女たちの“馴れ初め”みたいなトコも、殆どがバッサリ割愛されており「違和感」が残された。
それに、時代が“現代過ぎる”のも、ファンタジー要素を一切排してるようで「惜しいなぁ」と。

特に、遠景映像に於いて“シンボル的”に登場する「スカイツリー」は“完成後の姿”ではなく“建造中の姿”に止めておいて欲しかったトコだ。

って事で、鈴木砂羽にせよ、鶴瓶にせよ・・ちょっとサプライズ気味(?)に登場する香川照之、伊勢谷友介にせよ・・も少し「彼らが彼らでなければならなかった」起用理由を、万人に分かるように脚本の中で示して欲しかったモノである。

久々に、観終わった後で「疲れ」と「疑問符」のみが残ってしまったワタシだった。

〜 こんなトコも 〜

・あちこちに“意味深なフリ”をちりばめつつ、その殆どが「中途半端」「意味不明」「描写不足」で残念に思えた。本来はもっともっと丁寧に練り上げられてた筈の脚本が、撮影後にズタズタに編集された結果、スッカスカになってしまってた気もする(・ω・)
・香川照之演じる兄弟は、どうやら「一卵性双生児」的な設定だったようだが、それ以上に膨らむモノでは決してなかった。
・木村多江さんと“再会”する流れも、妙に偶然過ぎて驚けない。
・鶴瓶演じる私立探偵=堂島ってば、元警察関係者だったんか? にしては「背中に背負(しょ)ってるアレ」が物々し過ぎる。。
・とある「1本の刺し身包丁」を巡る展開(物語の動き)が、何ともわざとらしかった・・
・ラストで松さんが、妙な“カメラ目線”で何かを(我々観客に)訴えて来るんだが・・それが何なのかはとうとう掴めなかった。
・松さんって「“死相”すらも現れて来てはるし・・きっと絶対に(心身共に)ヤバいと思う!」と総ての観客に思わせてくれたが・・
・コップを振り上げる、包丁を掴み階下へ向かう、など「自発的に何かをしようとする」シーンが、総て“未遂”に終わってしまってた里子さん。
・注意すべきキャラは、木村多江さんではなく、その小僧の方だった!
・瞬間的に“暴力キャラ”と化す鶴瓶もちょっと恐かったが『OUT(2002)』に於ける佐竹(演:間寛平)の凶暴ぶりには(流石に)叶わなかった。
・西川監督はコレまで「自らの見た夢」に材を取り、アイデアを映像化させて来たそうだが・・流石に本作は粗かった。荒唐無稽なコメディに逃げ切るやり方「も」選ばなかった以上、しぼんだ展開になってくのは必定だったンでは?
・「いちざわ」店内の壁に書かれたメニュー「みぞれ鍋(1000円)」や、スタッフの着る黄色シャツに『旨くてご麺!』の文字も踊る(=^_^=) 「ラーメン大統領」の「プレジデントラーメン(580円)」には、食欲をそそられた。
・「みすず銀行」「177銀行」は、共に実在しない金融機関らしい。
・「雄CAN(ゆうきゃん)」「ホテル・ドリーム浅草」「有限会社金山折本所」「酒処・とまり庵」「しま津」「株式界社飯田」などの店名/施設名が看板等で登場。特に「雄CAN(ゆうきゃん)」については『愛と誠』の劇中でも(確かに)眼にした覚えがある(⌒〜⌒ι)
・某駅のシーンで「寳登山(ほどさん)電車」のポスターが貼られてた。ロケ地は埼玉県秩父界隈だったんやろか?
・久しぶりに「登場人物が、緑色の公衆電話(=電話ボックス内)で話すシーン」を観た気がする(・ω・)
・某シーンに登場する貼り紙(?)に「雪平鍋とは?」みたいな言葉が書かれてて、思わず帰宅後にネットで調べてしまった(=^_^=)
・里子が厨房に潜んでたネズミに気付き、瞬間的に沈黙してしまうシーンがあるが・・アレってば『コラテラル(2004)』でジェイミー・フォックス&トム・クルーズが道路を横切るコヨーテに遭遇するシーンに対するオマージュなんやろか?(そんなに深いか?)

〜 こんなセリフも 〜

貫也「お前は風呂敷、広げ過ぎなんだよ」
  「何(なん)が“え~?”ですかあんた」
  「ほら、トマトば食べんしゃい!」
  「もう“悪いウワサ”回ってんだよどうせ」
  「あそこはクソたい・・いや、クソ以下たい!」
  「店長、優しかろ? ・・“里ちゃん”って呼ばせてんだ」
  「不満があるのは、お前の方なんだよ!」
  「俺なんかといると“ロクな事”なかぜ?」
  「絶対、返すから!」
  「まずは“城”ばい!」
  「また、お待ちしてます」
  「まだ運が残っとったんやろね・・お前に逢わしてもろた。
   やっと人生、建て直す気になれた」
  「こんなもん、要らんちぅとろうが!」
  「俺は人生、懸けとっとばい」
  「“お前の眼に映ってる世界”の方が、よっぽど気の毒だよ」
  「場所は分かんないけど、何処かには着くと思うから」
  「お前のしたい事は何だ? ホントは何がしたい?」
  「お前は今が1番、イイ顔してる」
  「こっちは参ってんだよ!」
  「諦めたのは、俺のせいか?」
  「ヒドいなこの包丁・・全然切れない」
  「・・自分は板前ですから」

里子「あんたのこの服、何処で洗って来たと?」
  「私、分かるなぁ・・」
  「あんたに会わなかったら・・彼女、線路の上で
   “真っ赤なミンチ”になってたかも知んない」
  「成る程ねぇ」
  “みんな寂しくて、惨めな想いを抱えているのよ”
  “夢なら、ほんの少しで十分よ。
   ほんの少しだけ“素敵な夢”を見せてあげれば”
  「これ、倍にして返そうね」
  「・・引き上げよっか?」
  「“自分にしか出来ない事がある”って凄い事よ」
  「そんな事は、ひと言も、言ってない」

※「“もっといい場所”で勝負しろ」

女たち「膣内(なか)で出して!」
   「白井さんのが・・膣内(なか)で泳いでる」
   「通用しませんよ、それ」
   「少しは“蓄え”もあるの」
   「あたしが恐い? “殴る”と思ったと?」
   「・・あたしは“怪物”じゃない」
   「私は今が幸せだよ・・“自分の脚”で立ってるもん」
   「ホントは、何処かで“辞める理由”を探していたんだ、私」
   「何で逃げんのよ!」

堂島「結婚、結婚って・・思う程のもんじゃないですよ」
  「僕? 僕は・・(彼女の)おじさんですわ」
  「手ぇ上げたらアカン、言ぅたやろ?」

里子「10年前と同じやん。何も恐くないよ」
貫也「・・10年は長かよ」

貫也「死ねや!」
里子「きさん(貴様)こそ!」

里子「まだまだ足りん・・全然足りん」
貫也「お前の“足りん”は・・カネやなくて
   腹いせの“足りん”たい」

玲子「ママさん、大丈夫ですか?」
貫也「あいつはバリバリですよ。
   凄いです・・もう“見てるのがツライ”です」

里子「“ハズレ”でしたね」
ひとみ「・・ヤバいっすね」

貫也「可哀想? あの人がか?」
里子「いやいや」
貫也「・・俺がか?」

追記:最近、邦画作品の上映時間がダラダラと長引いて来てる気がする・・それでも楽しけりゃイイんだけどねぇ・・

|

« ☆『デンジャラス・ラン』☆ | トップページ | ☆『鍵泥棒のメソッド』☆ »

コメント

こんばんは。

初めて本作の情報をキャッチした時、てっきりコメディー要素たっぷりのドラマだと思っていました。
阿部さんは勿論、最近の松さんのコメディエンヌ振りも印象深いので。でもほぼ100%シリアスドラマだったみたいですね。

西川監督最新作ということで私もチェックはしていましたが、確かに上映時間は長いですね(最近の私には長いと感じる時間です)。
いまのところスルーになりそうなのでDVD化されれば是非手に取りたいです。

>『OUT(2002)』に於ける佐竹(演:間寛平)の凶暴ぶりには

そうなのですか!?
小説の『OUT』は2度読みましたが、映画化で「佐竹役をカンペイさんが?!」という違和感が拭えなかった私でした(鑑賞は未だ叶わず)。
しかし、映画としてカンペイさんの佐竹役は正解だったということなのでしょうか??

投稿: ぺろんぱ | 2012年9月18日 (火) 20時42分

ぺろんぱさん、ばんはです。

今週もヘロヘロな感じになってました〜
でも、この週末は・・「アレ」に行きます!

何だか香川照之づいてます(=^_^=)

>初めて本作の情報をキャッチした時、てっきりコメディー要素
>たっぷりのドラマだと思っていました。
>阿部さんは勿論、最近の松さんのコメディエンヌ振りも印象深い
>ので。でもほぼ100%シリアスドラマだったみたいですね。

そうなんですよ・・ 予告編の造りが巧過ぎです(=^_^=)

>西川監督最新作ということで私もチェックはしていましたが、
>確かに上映時間は長いですね(最近の私には長いと感じる
>時間です)。
>いまのところスルーになりそうなのでDVD化されれば是非
>手に取りたいです。

それが良いと思います(・ω・)

>そうなのですか!?
>小説の『OUT』は2度読みましたが、映画化で「佐竹役を
>カンペイさんが?!」という違和感が拭えなかった私でした
>(鑑賞は未だ叶わず)。
>しかし、映画としてカンペイさんの佐竹役は正解だったということ
>なのでしょうか??

殆どセリフがなくて、それ故にコワかったですね〜
香川照之さん演じる十文字さんが、アレされてました(×_×)

でも今観たら、印象が全然変わって来るのかも。。
大森南朋さんの股間のボカシも懐かしいです(=^_^=)

投稿: TiM3(管理人) | 2012年9月22日 (土) 01時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ☆『デンジャラス・ラン』☆ | トップページ | ☆『鍵泥棒のメソッド』☆ »