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2011年3月 2日 (水)

☆『武士の家計簿(2010)』☆

1日(火曜)。
夕刻の高松市内は、若干の雨がパラついてたが・・久々にミニシアター“ソレイユ”に向かい、少しだけ興味のあった『武士の家計簿』なる邦画を観てから帰宅した。 ←たまたま“ファースト・デー”で、サービス料金ですた(=^_^=)

監督は『ハル(1996)』『失楽園(1997)』『39/刑法第39条(1999)』『黒い家(1999)』『模倣犯(2002)』『阿修羅のごとく(2003)』『海猫(2004)』『間宮兄弟(2006)』『(平成版)椿三十郎(2007)』などで知られる、作品の完成度に差が大き過ぎる(=^_^=)森田芳光氏。

森田監督の名前を聞いただけで「大丈夫か・・?」と正直、不安の募るワタシだったが、、まぁ作品自体も無難なテイストの路線だし、大失敗ってことはなかろう、と読んだ次第。

幕末の時代、天保年間(1830-43)。
「100万石」と目される加賀藩・前田家(石川県)において、刀ではなく算盤(そろばん)を手に、日々「巨藩の帳簿」を相手に格闘を繰り広げた“算盤役人”を“御算用者(ごさんようもの)”と言った。今で言う、会計係である。

藩の抱える150人もの“御算用者”の内、当代で7代目を数えるのが、下級武士の一族=猪山(いのやま)家だった。
父=信之(中村雅俊)、息子=直之(堺雅人)、そしてその息子=成之・・

3代にも渡る“算盤侍(そろばんざむらい)”の人生を、彼らの直面する様々な“困難”を交えつつ描く・・

予想では、もっと「メリハリの利いた物語回し」だったんだが・・意外と「武士」なる言葉から連想される「無骨で、ストイックで、常に(生の中で)死を覚悟してます」的なピリピリした世界観では殆どなく、どちらかと言えば“庶民的”と言おうか「腰に帯びとるのは、実はタケミツなんですよ。だって物騒ですやん」的な、ちょっと肩の力の抜けたような物語世界だったか。

「茶器を愛で、体裁を気にする」信之。「家計(と猪山家の将来)を冷静に見つめ、自身なりの誇りを失わぬ」直之。
そんな父に厳しく育てられたが故「愚直な“算盤侍としての生き方”に激しく抵抗を示す」成之。

3者のキャラ造型に大きく“違い=メリハリ”を持たせてるので、その辺りの組立て方ばかりは面白いんだが・・正直、3代目に移ってからの描き方がググッと「それまでの味わい深さ&重み」をぶち壊しちゃっとる印象があり、残念だった。

私的には、3代目は冒頭&ラストでチョロっとなぞるぐらいでイイから、もっと「信之〜直之の代」の生活風景をこそたっぷり見せて欲しかったものだ(・ω・)

また、藩の“隠し米(=御救ひ米)”の存在を暴く顛末(快挙?!)を皮切りに、直之が“公私に渡り”算盤を弾(はじ)いてく展開は、眼のつけドコロこそ面白いんだが・・徹底的な猪山家の家計の見直し(=借金返済)を進め行く中で“下級武士”“庶民的な暮らし”を前面に押し出して節制に励むにしては・・まだまだ工夫の足りぬ気がしたのはワタシだけやろか?

これは恐らく、ワタシがそれまでに観て来た『たそがれ清兵衛(2002)』『武士の一分(2006)』などの“下級武士故の悲しみ”を妙に記憶してしまってるからに相違ないンだろうが・・例えば「使用人に暇を出す」「傘張りなどの内職をする」「月代を剃るのをやめる」「継ぎ当てた服を着る」など・・更に「取り組んでますやんか!」っぽい“説得力溢れる演出”をやってくれたなら、もっと唸らされたことだろう。

その一方で、奥さんを連鎖的(?)に孕ませはったりするトコ、やっぱり「“お世継ぎ”などと称し、結局は“そっち方面の享楽”に耽ってしまうんやろかなァ」とフクザツな気持ちになってしまったりもした。。

どうにも、生活の苦しそうな人に対してこそ“家族計画性のなさ”を感じてしまったりもするんだが・・それってワタシの「勝手なヒガミ」なんやろかネ・・(⌒〜⌒ι) ←私見です。済みません。

序盤〜中盤にかけての“大家族ドラマぶり”の反動って感じで、後半では次々に主要キャラが「天寿を全うしてく」流れとなってくんだが・・もう少し“盛り下がらない”“しんみりさせない”展開をお願いしたかったようにも。

特に直之&成之(の父子)に至っては「観てて和むようなシーン」が殆ど見受けられなかったように記憶している。

それと、直之の老けメイクがどうにも“『インセプション(2010)』なケン・ワタナベ状態”とでも言おうか・・殊更“老い”を強調し過ぎてるが故に「コントすれすれですやんか!」っぽい危うさをも醸し出してた。。

ってことで、作品としての着眼点にはそれなりの魅力を感じたモノの「ベテラン監督=森田芳光作品として、どうよ?」と正直感じた。

まだしも「家計の苦しさに追い詰められた直之夫婦が、毒入り酒を飲み“交合した状態”のまま果てる(で、同心に発見される)」とか「奉行に呼びつけられた直之が、いきなり“自爆”して果てる(で、ごっつい腕時計(え?)が床に転がる)」とか言った、ファンサービス(?)とも言える演出をこそ、盛り込んで頂きたかったトコである・・と言ったら、如何なさいます?(=^_^=)

〜 こんなトコも 〜

・幕末ともなれば(?)城内の朝の挨拶は、まんま(?)「御早う御座居ます!」でエエんやね。
・信之の禄高は70石だったようだ。
・お駒(仲間由紀恵)が直之に渡した“麦湯”に興味津々。それってつまり、麦茶?
・直之&お駒の婚礼シーン・・流石に「ピアノ伴奏の曲」を(バックに延々)流されては、戸惑っちまうンですけど。。
・“よさんぱち”と呼ばれてた直之の剣術の師(演:西村雅彦)。あだ名と思いきや、本名(西永与三八)だったんやね。。
・豆腐のことを“十富”と表記したりするらしい。
・『塵劫記(じんこうき)』なる、当時のパズル集(?)みたいな書が面白そう。
・高級な櫛の値段が「2分」だった。
・当時の利息(年利)は1割8分だとか。
・「若杉窯(九谷焼)の名品」「五十嵐一門の茶器」「地黒(?)の小袖」「玉翠(?)の櫛」「加賀兼若の刀剣(快刀?)」と言った逸品が登場。
・「鶴と亀が合わせて100匹。足の総数が272本なら、鶴と亀はそれぞれ何匹ずつ?」って問題が・・(×_×)
・加賀藩の出兵に加わった成之の軍装(?)の左腕に「加州」と書かれた布が下げられてたが・・加賀のこと? 或いはカリフォルニア?(←何でやねん!)
・「印象的な題字」は村田清雪と言う方の筆によるもの。左から右に書いてたようだが、それはそれで良いんかな?
・老いた直之が成之に背負われる終盤。“老けメイク”の極まっとるご尊顔とは対照的に、手指に殆どメイクが施されておらず「え?」と感じた。忘れてたん?
・堺雅人の“キョーレツな老けっぷり”に比べ、仲間由紀恵&西村雅彦の経年変化が緩やか過ぎるのが衝撃的だった! それって“バイオリレーション”?! 或いは“MISOPETHA-MENOS”?!
・あの櫛については、更にもう1度、終盤なりで“ネタ”に使えると思ったが(・ω・)

〜 こんなセリフも 〜

直之「父上は“帳尻だけ合っておれば良い”と?」
  「算盤は“猪山家の命”なのだ。
   これしか、生きる術(すべ)がない」
  「質素な宴も“物入り”である」
  「こんな時になんだが・・“能登の輪島勤め”と相成った」
  「金澤は、美しい」
  「大切なのは、体面か?」
  「書き出してみますと・・6260匁(もんめ)の借金・・
   つまり、猪山家は“風前の灯”で御座居ます」
  「(借金を)取り繕う方が、恥と思いまして」
  「まずは此処から“決意の程”を示すのです」
  「本祖の御苦労を思えば・・」
  「砂糖は、舐めると力が出る故」
  「“生まれ来る子の顔を、真っすぐ見ていられる親”で居たいのだ
  「皿の数は、変わっておりません」
  「落ち着いて来ました故、そろそろ始めましょうか」
  「“お家芸”を身につけねば、家は継げぬぞ」
  「この不足を如何する?」
  「借金は、放っておいても消えないぞ・・何か手を打たねば」
  「“借りる”手は、何度も使えない」
  「借金はどんどん増えて来るぞ。さぁどうする?」
  「自分で何とかしなさい」
  「では是を“拾った4文銭”とする・・落ちていた場所に戻して参れ」
  「“武士としての誇り”を失うな」
  「今度は・・壊れなんだぞ」
  「・・城へ行きたい」

お駒「“貧乏”と思えば暗くなりますが、
   “工夫”だと思えば、面白う御座居ます」

信之「何しろ、江戸屋敷は年々“不如意”・・」
  「算盤も剣術も“粉骨砕身”か・・ま、当たって砕けぬと良いがな」
  「帳簿と言うのは、奇麗にし過ぎても・・軋(きし)む」
  「間違って弾(はじ)くと・・戻せぬぞ?」
  「(泣く女は)泣かせておけ・・いつものことだ」
  「我が猪山家の“命”は刀ではない・・こちら(算盤)だ」
  「あの月は、日々欠けてゆく・・そして新月と・・」 ←突然に!

成之「私は、この加賀の地で算盤だけに埋もれたくはありません!」
  「“もし私が死んだら、それが定めだ”とあなたは言われました」
  「私には、父上におぶって頂いた覚えがありません」
  “幾つもの命を踏み台に、新しい時代が来た”

お常「ならぬ。武士の嫁が1歩前に出れば、1歩その身分が下がる」
  「着物は“女の命”よの」
  「我が子か、鬼か?」

与三八「剣は“からっきし”だなぁ」

上司「分かった・・昼飯の後に致そう」
  「帳簿と言うのは・・“仕舞の数字”が合ってれば良い」
  「拙者は、恙無(つつがな)く勤めたいのだ」

役人「“狸米(たぬきまい)”じゃの」
  「彼奴(あやつ)・・能登辺りに飛ばされるかも」

大村「これからの戦は“タークティクス”だ。
   つまりは、的確な補給が勝敗を左右する」
  「“しっかりと算盤を使える存在”こそが必要だ」

農民ら「ひもじいわいや〜! 米くれわいや〜!」

直之「粉骨砕身、相勤めます」
信之「この父を見習って、ほどほどで良いぞ」

直之「それに不器用だ。出世出来そうにない・・それでも良いか?」
お駒「イヤです」
直之「・・・」
お駒「・・と言ったら、如何なさいます?」
直之「・・困る」
お駒「その“生きる術”の中に、私も加えて下さい」

同僚「いつもながら、美味そう(な弁当)で御座るな」
直之「奥(=妻)の手造りで御座る故」

成之「何をしているのですか?」
直之「・・葬式の費用だ」
成之「何処の家でも、そうするのですか・・こんな夜に?」
直之「・・家によって違う」
成之「“算盤侍”だから?」
直之「・・そうだ」

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