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2010年11月26日 (金)

☆『笑の大學(2004)』☆

24日(水曜)の夜。
いよいよ、3夜連続の“三谷幸喜特集”も幕となり・・ラストを飾る1作『笑の大學』を楽しみつつ、観た。

本作と言えば・・5年ほど前、旅先に持参した(?)ノートPCにて、DVD版を観たことを思い出す。

それまでは、三谷さんと言えば“刑事コロ※ボをパクったようなドラマとかで、薄く軽く、テキトーに稼いだはる売れっ子脚本家”ぐらいの印象しかなかったんだが、、本作を観てハッキリと「認めたくはないけど・・スゴい人やんか!」と感服し、それ以来、舞台劇は観れる限り観ようと心に決めたものである。

『エキストラ(2006)』『コンフィダント/絆(2007)』『グッドナイト・スリイプタイト(2008)』『なにわバタフライN.V(2010)』・・と結構、近年の公演はおさえてるつもりである。

で、改めて三谷さんに対し感じるのは「どうやら、映画監督には向いてないンかも」「“過去を絡めた、少人数による恋愛劇”でこそ、恐ろしいまでの真価を発揮しはる」ってことだ。

「ムリして(?)群像劇映画の制作にチャレンヂし続けはる、その熱意&パワーを・・“密室シチュエーション”の舞台劇にこそ、注いで頂きたい」とアドバイス差し上げたいトコである。 ←ナニを偉そうに!(=^_^=)

昭和15年。“日独伊3国軍事同盟”の締結されたこの年、我が国は大戦に向かって静かに、しかし確実に転がり始めていた・・

浅草にある「劇団・笑の大學」の座付作家=椿一(つばきはじめ:稲垣吾郎)は新作喜劇『大悲劇/ジュリオとロミエット』の台本を抱え、警視庁保安課・検閲係にやって来る。

彼を迎えるのは“笑いと言うものを理解しない”凄腕の新任検閲官=向坂(さきさか:役所広司)。
“相応しくない表現”の含まれた、当世の演劇を規制し、問題ある台本には容赦なく「不許可」印を押しまくる向坂。

台本に次々と厳しく注文(難癖?)を付け、上演中止に追い込もうとする向坂に対し、何とか上演許可を得ようと自作を手直しして行く椿であったが・・

監督=星護(ほし・まもる)なる人物についての予備知識がなく「コレって三谷幸喜の偽名(=別名)なんやろか?(いわゆる“アラン・スミシー”系)」などと、とんちんかんなことを考えてもしまってたが・・むろんそうじゃなく、ちゃんと実在される監督さんなのだった(済みません)。

しかしアレだ・・安心して観てられると言おうか、構図や映像演出などに『ラヂオの時間(1997)』『みんなのいえ(2001)』とは格の違う(←こうまで書くと、ちと書き過ぎかも知れんけど(⌒〜⌒ι))質の高さ、完成度があった。

って言うか「たった1つの密室の中に、国家/個人、規制/自由・・などの相反する幾つもの要素が詰め込まれ、それでいて作品世界に恐ろしく広がりを持たせている」ってトコからして、脚本がサエまくってる!

こんな普遍的で、背筋の思わず伸びてしまう作品に比べたら・・ラジオドラマがハプニングでどう転がろうが、どんなチグハグな家が建とうが・・もうそんなことはどうでもイイ気すらして来る(=^_^=)

・・

気弱そうな中に、骨太で反骨な“お笑い精神”をたたえている稲垣くんの存在感もなかなかだが、やはり本作は「表情と内面に、ある種の2重人格性を宿す」さまを、微妙&絶妙に演じてみせてくれる役所さんのスゴさに注目すべきだろう。

役所さんと言えば・・後年の『パコと魔法の絵本(2008)』においても「不器用ながら、次第に変わって行く偏屈ものキャラ」を好演されたのが記憶に新しいトコだが・・本作に比べたら、まだまだ“手遊びレベル”にも見えてしまう。

そんなワケで・・稲垣vs役所の対決と言えば・・近年では『13人の刺客/The Thirteen Assassins』ちぅのもあったが・・その原点は、本作にこそあったのではないか!? と世界で恐らくただ1人(?)強引で勝手な決め打ちをしてしまうワタシである(・ω・)

〜 こんなトコも 〜

・戦前から既に「付箋(ふせん)」ってのは存在したんやろかね〜?
・検閲官を辞し、浅草で芝居小屋再建に燃える向坂を主人公に、続編を作って欲しくもある(=^_^=)
・役者を2人も揃え、脚本さえ面白ければ・・十分に傑作は完成し得る、と思い知らされる!
・『ターミナル(2004)』のビクター・ナボルスキー氏に言わせれば・・「許可」印を押す確率は1/2ってトコだろうか?(=^_^=)
・チョイ役過ぎるが、木村多江さんも出ておられます☆

〜 こんなセリフも 〜

向坂「私は一切、そう言うのは観ない主義なんです」
  「私は“そう言う類の男”ではありません」
  「検閲など要らない! (喜劇など)総て禁止してしまえばイイんだ!」
  「2度と“今川焼を差し出すような真似”はしないように」
  「どうやら・・あなたは“最もタチの悪い検閲官”に引っ掛かったようですね?」
  「(今川焼は)そこに置いといて下さい。気が向いたら・・持って帰るかも知れない
  「いや、自信ありと見たな・・私は」
  「(赤い紙を貼らないのは)問題が多過ぎるからだ!」
  「今迄の検閲官は、これで許可を出していたんですか? 私に言わせれば“職務怠慢”だ!」
  「日本人であるあなたに“チャーチルの握った寿司”が喰えますか?」
  「私は、この作品は“駄作”だと思う」
  「もしこれが“悲劇”だとしたら・・明らかに失敗だ」
  「笑わせて貰おうじゃないか・・さぁ!」
  「あなたは解説が多過ぎる」
  「ここで? ウケる? ・・分からない」
  「何故、これが面白い? どうして?」
  「これでは・・到底、上演許可は出せないな」
  「あなたは“人の話を聞かない人”だな」
  「私は“このままでは出せない”と言ったんです」
  「話にならん! これでは上演中止だな」
  「良く1晩でこれだけ直したものですね・・感心しました」
  「バレましたか、じゃない!」
  「昨日は敢えて黙っていたんです。これは“私なりの思い遣り”です」
  「笑うためだけの芝居なら、上演する必要はないんだ!」
  「台本の何処かに“お国のため”と言う台詞を3回繰り返して貰いましょうか」
  「ご出身は? ・・ただの世間話です。
   申し訳ないね・・“取って付けたような世間話”が出来なくて」
  「昔から、書くのがお好きだったんですか?
   ・・そんなに面白いものですか? 芝居と言うものが」
  「私は、笑いに対する感覚が鈍いと言われます。
   興味がないんです、人を笑わせると言うことに」
  「あんたね・・ここは“喜劇作家の養成所”じゃないんだ。 ←ここは爆笑!
   ハッキリ言って、どんどんつまらなくなっている」
  「クドさで笑えるのは、3回が限度だ」
  「まぁ、こんな感じで、まとめて来て頂けると、有難いです」
  「不思議な気持ちだ・・検閲すると言うより、
   あなたと一緒に“台本を面白くする手伝い”をしてるみたいだ」
  「かなり洗練されて来たね! まぁ・・別に私としては、面白くならなくても良いんだが」
  「君はそれでイイのか?」
  「“人を甘く見る”のもイイ加減にし給え!」 

椿「慣れないものですね・・こう言う雰囲気は」
 「あの・・ここはまだ“面白い所”ではありません」
 「元ネタが有名なほど“もじり”は面白くなるんです」
 「長年の勘で分かるんです・・ここで“ドッと笑いの起こること”が」
 「こんな検閲は聞いたことがない・・これはもはや“ホン(台本)直し”だ!
 「厳しい所をついて来ますね・・まぁ、それを言われると・・」
 「舞台と言うのは“ナマモノ”ですから、現場の“雰囲気造り”が大事なんです」
 「イイんです、言いたい奴には言わせておけば・・
  僕は面白い芝居が打てれば、それでイイんです」
 「これは戦いなんです、僕の」
 「どうして、人を笑わすことがいけないんですか?
  どうして、庶民の娯楽を国は奪おうとするんですか?」
 「喜劇作家には、喜劇作家なりの戦い方があるのではないかと思いました。
  検閲で言われた一切を書き直し、更に面白い本にしてみせる・・それが僕のやり方だと。
  それが、権力に対する“僕なりの戦い”だったんです」
 「その台本の中には、僕が浅草の中で学んだことの総てが入っています」
 「たとえ台本が在っても・・演出する人間がいなければ幕は開かないんです」

向坂「あなた今、そう思いましたね? ・・正直に答えなさい」
椿「・・ちょっとだけは思いましたけど」
向坂「それで良いんです。私は、そう言う男なんです」

向坂「詭弁だね」
椿「・・どっちが」

向坂「強引に(台本を)書き換えたことにより、内容に無理が出て来た」
椿「強引だからこそ、面白いんです」

椿「笑えるでしょ?」
向坂「いや、笑えはしなかった」

向坂「私は別に“笑いを増やせ”と言ってる訳ではないんだ
椿「この筆が、つい滑りました。
  性分なんですね・・つい“笑いの方向”に走ってしまうんです」

向坂「“人を笑わせる”と言うことが、そんなに大事なことだろうか?」
椿「・・大事だと思います」
向坂「私は、心の底から笑ったことなどないが・・どうにかここまで生きてます」

向坂「警官のくだりなんだが・・私はまだ納得していないんだ。
   登場に何の必然性もない
椿「それを言いますか・・元々(あなたに言われて登場させた)
  “必然性のない役”なんですから」

椿「出来るか出来ないか、やってみなくちゃ分からないだろう!」
向坂「あなたのその自信はどこから?」
椿「自信なんかない・・でも僕は自分を信じてる。今迄だってそうだったんだ!」

向坂「良く1晩でこれだけ直せましたねぇ」
椿「“死ぬ気”でやりました」

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