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2010年9月16日 (木)

☆『悪人』☆

14日(火曜)。
今週もまた、高松を離れ・・愛媛県内に2泊コースで出張してゐる。

これまで、出張の夜と言えば・・大抵は「ホテル界隈を徒歩でウロウロし、適度に酔っ払う」って程度だったが、今回は自転車を借りることが叶ったもんで、少し足(車輪?)を伸ばし“シネマサンシャイン衣山(きぬやま)”なる市内で(恐らく)最大規模と言えるであろうシネコンに行ってみることとした。

ホテルのフロントで「徒歩で行けますかね?」と念のため訊ねたら「(とんでもない、的に)40〜50分はかかりますよ」と答えが返って来たが・・自転車で実際に走ると10分ちょいだったので、歩きでも25分程度と見込んだら、行けないことはなさそうだった。
(以前、同じホテルから何気なく徒歩で“石手寺”に向かったら、それこそ45分程度かかってしまい、ぶっ倒れそうになったモノだが、、)

・・

この時期は「抑えとかなきゃ!」って新作もさほどはなく(と、私的には思え)「パッとしたん、ないなァ」とつい表情も曇ってしまったが・・そこにピンとひらめいた1作が邦画『悪人』だった!

殺人を犯した青年と、出会い系サイトで知り合った貞淑で(?)幸薄き女性の逃避行・・ 題材とし、さほど光るモノでもないんだが、どうにも気になってしまう2人の主演俳優・・妻夫木聡&深津絵里がタッグを組んでるってことで「こいつぁ名作ではありますまいか?!」と勝手に期待値をグイッと引き上げたワタシだった(=^_^=)

孤独を抱えたまま生きて来た青年=清水祐一(妻夫木)は、長崎で生まれ育った27歳の金髪の解体処理作業員。
幼い頃に母と別れた彼を育て上げたのは、祖母(樹木希林)であり祖父(井川比佐志)であった。

彼には“(携帯の)出会い系サイト”を介し知り合った、福岡に暮らす“彼女”がいた。それは21歳の保険外交員=石橋佳乃(満島ひかり)である。
祐一は佳乃に会うため、頻繁に長崎から福岡にクルマを飛ばし、駆け付けるのだった。

しかし佳乃にとって祐一は“単なる遊び相手(いわゆるセ※レ)”でしかなく、ホンキで狙ってたのは湯布院温泉郷の老舗旅館の1人息子(ドラ息子)=増尾圭吾(岡田将生)なのだ。

その夜も「デートの約束を取付けてた」佳乃を“偶然現れた”増尾に“眼の前で”奪われてしまった祐一の心の中で、どす黒い感情がフツフツと沸き起こって来るのだった。

・・

そして翌朝(?)、郊外の三瀬(みつせ)峠にて“絞殺後、崖下(約7メートル)に投げ落とされた”佳乃の遺体が発見される。

福岡県警は、被害者と最後に接触したであろう大学生(=増尾のこと)を追うも、彼は既に何処かへ逃亡した後だった。

一方、佐賀に住む紳士服販売店勤務の中年女性=馬込光代(深津)もまた、出会いを求め“携帯サイト”に書き込む。
そこで出会ったのが、年下の祐一だった。

やがて、増尾が潜伏先(名古屋)のカプセルホテルで発見される。

捜査の結果、間もなく彼に対する嫌疑は晴れ、いよいよ警察の調べは本格的に祐一の身に迫ることに・・

祐一&光代の逃避行。
彼らの向かった先は海・・2人だけの“秘密の場所”だった。

2時間半ほどの「物語そのもののストレートさに比べ、やや長尺な上映時間」を持つ本作。丁寧でゆっくりとした構成&描写は、何処か『チョコレート(2001)』をほうふつとさせるシンプルさ&重さだったか。

・物語が途中から始まり、後に「そこに至る経緯」が語られる(描かれる)
・肝心なシーンの映像はカットされ、観客それぞれが(そこを)補わねばならない
・物語の総て終わった後で「なくても良いけど重要な、そして温かさを感じさせるシーン」が“わざわざ”描き加えられる

などの演出には「やるなぁ!」と唸らされた。ラストなど『タイタニック(1997)』『チェンジリング(2008)』に(静かながらも)肉薄する“確かな余韻”を残してくれたモノだ。

ワタシの中では「誰が“悪人”なのか?」なる問いかけ以上に「誰が“愚か”なのか?」「誰が“分かってない”のか?」などの“少し違った角度からの問い”がグルグルと巡り続けたりもした。

“愚かで悲しい”と言う点で言えば、増尾にも佳乃の父(柄本明)にも、さほど大きな違いはないのだろう。

「数多(あまた)の記事(報道)だけを鵜呑みにしている、更に多くの人々」こそが愚かで悲しく“真の悪人”なのでは? と言う(逆説的な)問いかけを含んだ「呟き」が、ラストで某人物により放たれ・・はからずもそこで唸らされるワタシがいた。

物語の表面だけをなぞれば、誰が“真の悪人”であるかなど「考えるまでもなく明らか」なのに、だ。

この作品は「祐一と光代」以上に「佳乃とその父」に対し何処まで&どのように感情移入出来るか、で物語の捉え方や評価が激変する、面白くも難しい“難作”だと解釈したワタシ。

そう言う意味では・・将来、評価がガラリと変わってしまう気もするが、、何はともあれ現時点では「もの凄い1作」であるとは断言しときたい! 「(今年の)年内最強最大の邦画」となるかも知れんぞコレは!!

〜 こんなトコも 〜

・光代の登場は、物語が始まって40分近く経過してから!
・祐一の乗るは「白の日産スカイライン・GT-R(R33)V-SPEC」。「峠を下りつつ、カーブで後輪滑らせたり」「テール振ってUターンかましたり」と言ったハデな演出も印象的。シーンによっては「走り屋モノ?」と感じちゃうかも(=^_^=)
・あ、でも・・“ス※ルファン”のワタシとしては「WRX STi」を駆って欲しかったカモ(・ω・) ←かつてブッキー(妻夫木)が(イ※プレ※サの)CMキャラだったしぃ。
・タイトルでは「左」に祐一の顔(無表情)、「右」に“悪人”の文字がシンプルに表示され「白⇒赤」と(文字がその)色を変えるのが、何かの“暗示”にも思えた。
・「死者は話せない」・・が故に、必要以上に美化されてしまうンやろか?
・九州女子にすれば、やはり「ユニバーサル・スタジオ(大阪)」ってば憧れのロケーションなんやろか? それと、決して「USJ」と言わないのがポイントなんやろか?
・「蹴られた人がアタマをぶつけしばらくうずくまる」って暴力描写が2〜3度登場し、ちとイヤな気分になった(×_×)
・「またお前か!」な“ウェルテルくん”登場。どんどん彼の評価が下がってく・・(因みに彼の携帯は“旧型iPhone”)
・「月給(手取):15万」「湯布院1泊:5万」「夕食のワリカン:(1人)2680円」「漢方代:263500円」・・全般的に価格設定がリアルな感じ。。
・長崎⇒博多間を(片道)1時間半で走れる祐一。通常は2時間半以上かかるそうで・・(ネット調べ)
・崖下に投げ捨てた際の「心情や映像」は描かれなかった(敢えてか?)
・娘の“真の姿”を知らず、掴めてもいなかったあの父親もまた“愚かで悲しき悪人”ではなかったかな、と。
・ブッキーに『ジョゼと虎と魚たち(2003)』の頃の姿を、深津に『ハル(1996)』の頃の姿を重ねてしまった(・ω・)
・崖を巡る「女1人+男2人」のドラマは何処か『ゆれる(2006)』を思わせるトコもあったか・・
・「容赦なき報道陣」「増尾の(ポンコツな)ご学友ども」など、作品世界のあちこちに“悪人”が点在気味。。
・祐一を棄てた母役に「あの大物女優」さんが! でも本作では「数歩下がった立ち位置」ですた・・まぁこんなモノか。
・松尾スズキ演じる漢方ドクター=堤下(つつみした)のキャラも、なかなかに“悪人道”を爆走してましたでぇ(⌒〜⌒ι)
・安置室で娘の裸足がはみ出てるのに気付き、シートを覆い直す・・「大学生1人、捕まえれんで・・なんが警察か!」と激昂した後、小さな声で「済んません、お願いします」とペコペコ頭を下げる・・いずれも、柄本さんの演技が、半ば神がかってる!(=^_^=)
・静かにスリリングな、久石譲によるピアノのスコア(楽曲)がシンプルながら効果的に響く。
・「自転車置き場で泣く女」に、、図らずもキュンとなってしまった(恥)
・皿に盛られたイカの眼(のアップ)から・・と言う映像演出に『サイコ(1960)』を何故か感じた(☉д☉)
・「峠で無灯火で停車する」ってのは・・かなりな自殺行為だと思うっちゃが・・(⌒〜⌒ι)
・意外と「雨シーン率」高し。邦画では『雨あがる(2000)』に次ぐ高さでは?(そんなにかい!)
・ブッキー&深津さんは「会話なし」でも「ロングショット」でも“絵になってる”2人だと思った。

〜 こんなセリフも 〜

祐一「でも、この前のカネ・・」
  「どっこも行っとらんよ・・」
  「あの、清水やけど・・」
  「俺も、似たようなもん・・」
  「眼の前に海の在ったら・・
   もうそん先、何処へも行かれんような気になるよ」
  「これしか無(な)かとけど・・」 ←“払いグセ”がついてるネ、、
  「・・謝りとぅて」
  「俺もホンキで、誰かと出会いたくて」
  「もっと早(はよ)ぅ、逢(お)うとけば良かった」
  「良かけん、乗れって!」
  「眠れんで・・誰かと話したくて」
  「ちょっと待てって!」
  「俺の言うことなんて、誰も信じらんかった」
  「今、光代とおると苦しか。一緒におればおる程、苦しぅなる
  「何でこんな人間なんやろ、俺」
  「俺は・・“あんたが思ぅとるような男”じゃなか」

光代「何かわたしも、分かる気のする・・“急になんかを変えとぅなる”こと」
  「どがんする?」
  「なんば、いきなり言いよっと? 吃驚(びっくり)したやん!」
  「女だってさ・・“そがん気持ち”になることあるよ
  「ねぇ? ホンキで言いよっと?」
  「別に、謝らんで良かよ」
  「わたしの人生って、あの国道から全然離れんやったとね。
   あの国道を、行ったり来たりしよっただけで」
  「わたしは・・ホンキでメール、送ったとよ。
   ・・ホンキで誰かと逢いたかったと・・ダサかやろ?
  「やっぱり、佐賀と長崎って遠かよねぇ」
  「着いたら、連絡頂戴。起きとくけん
  「祐一? どうしたと?」
  「何があったか知らんけど・・
   話しとぅなかったら、話さんで良かよ・・わたし、待つけん」
  「生まれて初めて“ズル休み”した・・思ぅとったより、簡単に出来っとね」
  「わたし・・“やっと幸せになれる”て思ったとよ」
  「ここで降りたら、もう迷惑かからんわけ? バカにせんで!」
  「わたし、待つけん・・何年でも。
   ・・良かよね?」
  「夢? どがん?」
  「うち、大丈夫やけん。全然、平気やけん」
  “あと1日だけ、一緒におりたかと”
  “ごめん。でも、わたし・・やっぱりあの人と離れとぅなか”
  「今のわたしたちには、ここしかなかやん!
   もう戻る場所なんて、どこにもなかやん!」

父「晩ご飯、なん喰うね?」
 「正月ぐらい、ちゃんと帰って来(こ)んね」
 「ちょっと漫画ば読んで、待っとってな」
 「お前・・なんしよっとか? こげん寒かとこで」
 「誰がお前ば、こげん眼に遭わせた?」
 「お前は悪ぅなかぞ・・悪ぅなか」
 「そんなに可笑(おか)しかね? 娘ば殺された父親の姿が」

母「“蹴り出した”て・・何で、そげんこと」

佳乃“顔は映さんでよ”
  “顔、映さんねって!”
  「聞こえたらどうすると?」
  「あの男とおったら、イライラするっちゃ。
   一緒におっても、全然楽しくないっちゃね」
  「運転とセ※クスだけは巧いっちゃが」
  「だって“そのため”に逢(お)うたんやけん」
  「ちょ・・寒いやん」
  「バカにせんでよ!」

祖母「しっかし世の中には、惨(むご)たらしかことする人が、おるもんやね」
  「悪かことして、そう逃げ切れるもんね

憲夫「何でんかんでん、祐一に頼っとったらダメばい」

刑事「ただ、結論から言いますと・・犯人は別におるようです」

祐一「・・もう、良かよ」
光代「なんが? “もう良か”て、どう言うこと?」

光代「祐一って、なんも話してくれんよね?」
祐一「俺には・・なんも言えんよ」
光代「・・そやなくて、何か言うてよ。ちゃんと話してよ」

父「なんね?」
母「あんたちょっと・・何や知らん・・警察から」

※「降りてくれんや」
 「あんた、何か安っぽか」
 「あんた、誰のクルマにでも乗るっちゃね?」
 「誰が、あんたのことなんか信じると? 誰も信じんよ」
 「今までは、生きとるのか死んどるのか、良ぅ分からんかった
 「全く“良か人間”に育ててくれたよ・・」
 「あんたが悪かワケじゃなか。しっかりせんと、いかんよ」
 「違うと。あの人は・・ホントは“悪か人”じゃなかとよ」
 「あんた・・“大切な人”はおるね? “その人の幸せな様子を思う”だけで、
  自分まで嬉しくなって来るような人は?
 「今の世の中・・“大切な人”のおらん人間が多過ぎる」
 「“自分には失うもんがない”と、強くなった気になっとぅ。
  失ったり、欲しがったりする人間を・・バカにした眼で眺めとぅ。
  ・・ホントはそうじゃないとよ。それじゃ、人間はダメとよ」
 「そうやって、ずっと人の事ば、笑ぅて生きていかんね」
 「おカネば、返してくれんですか?」
 「ごめんね・・何もしてやれんで」
 「世の中には、酷か男がいるもんやね。“人間の出来ること”じゃなかですよ」

追記1:久々に劇場で「関連グッズ」を購入しちゃいますた。「シナリオ版の文庫本」なんですけどね、ええ(・ω・)
追記2:博多弁(福岡弁)・長崎弁・佐賀弁が全般的に飛び交ってたもので、かなり聞取りがテキトーだった気がする。。

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