☆『悪人』☆
14日(火曜)。
今週もまた、高松を離れ・・愛媛県内に2泊コースで出張してゐる。
これまで、出張の夜と言えば・・大抵は「ホテル界隈を徒歩でウロウロし、適度に酔っ払う」って程度だったが、今回は自転車を借りることが叶ったもんで、少し足(車輪?)を伸ばし“シネマサンシャイン衣山(きぬやま)”なる市内で(恐らく)最大規模と言えるであろうシネコンに行ってみることとした。
ホテルのフロントで「徒歩で行けますかね?」と念のため訊ねたら「(とんでもない、的に)40〜50分はかかりますよ」と答えが返って来たが・・自転車で実際に走ると10分ちょいだったので、歩きでも25分程度と見込んだら、行けないことはなさそうだった。
(以前、同じホテルから何気なく徒歩で“石手寺”に向かったら、それこそ45分程度かかってしまい、ぶっ倒れそうになったモノだが、、)
・・
この時期は「抑えとかなきゃ!」って新作もさほどはなく(と、私的には思え)「パッとしたん、ないなァ」とつい表情も曇ってしまったが・・そこにピンとひらめいた1作が邦画『悪人』だった!
殺人を犯した青年と、出会い系サイトで知り合った貞淑で(?)幸薄き女性の逃避行・・ 題材とし、さほど光るモノでもないんだが、どうにも気になってしまう2人の主演俳優・・妻夫木聡&深津絵里がタッグを組んでるってことで「こいつぁ名作ではありますまいか?!」と勝手に期待値をグイッと引き上げたワタシだった(=^_^=)
※
孤独を抱えたまま生きて来た青年=清水祐一(妻夫木)は、長崎で生まれ育った27歳の金髪の解体処理作業員。
幼い頃に母と別れた彼を育て上げたのは、祖母(樹木希林)であり祖父(井川比佐志)であった。
彼には“(携帯の)出会い系サイト”を介し知り合った、福岡に暮らす“彼女”がいた。それは21歳の保険外交員=石橋佳乃(満島ひかり)である。
祐一は佳乃に会うため、頻繁に長崎から福岡にクルマを飛ばし、駆け付けるのだった。
しかし佳乃にとって祐一は“単なる遊び相手(いわゆるセ※レ)”でしかなく、ホンキで狙ってたのは湯布院温泉郷の老舗旅館の1人息子(ドラ息子)=増尾圭吾(岡田将生)なのだ。
その夜も「デートの約束を取付けてた」佳乃を“偶然現れた”増尾に“眼の前で”奪われてしまった祐一の心の中で、どす黒い感情がフツフツと沸き起こって来るのだった。
・・
そして翌朝(?)、郊外の三瀬(みつせ)峠にて“絞殺後、崖下(約7メートル)に投げ落とされた”佳乃の遺体が発見される。
福岡県警は、被害者と最後に接触したであろう大学生(=増尾のこと)を追うも、彼は既に何処かへ逃亡した後だった。
一方、佐賀に住む紳士服販売店勤務の中年女性=馬込光代(深津)もまた、出会いを求め“携帯サイト”に書き込む。
そこで出会ったのが、年下の祐一だった。
やがて、増尾が潜伏先(名古屋)のカプセルホテルで発見される。
捜査の結果、間もなく彼に対する嫌疑は晴れ、いよいよ警察の調べは本格的に祐一の身に迫ることに・・
祐一&光代の逃避行。
彼らの向かった先は海・・2人だけの“秘密の場所”だった。
※
2時間半ほどの「物語そのもののストレートさに比べ、やや長尺な上映時間」を持つ本作。丁寧でゆっくりとした構成&描写は、何処か『チョコレート(2001)』をほうふつとさせるシンプルさ&重さだったか。
・物語が途中から始まり、後に「そこに至る経緯」が語られる(描かれる)
・肝心なシーンの映像はカットされ、観客それぞれが(そこを)補わねばならない
・物語の総て終わった後で「なくても良いけど重要な、そして温かさを感じさせるシーン」が“わざわざ”描き加えられる
などの演出には「やるなぁ!」と唸らされた。ラストなど『タイタニック(1997)』『チェンジリング(2008)』に(静かながらも)肉薄する“確かな余韻”を残してくれたモノだ。
ワタシの中では「誰が“悪人”なのか?」なる問いかけ以上に「誰が“愚か”なのか?」「誰が“分かってない”のか?」などの“少し違った角度からの問い”がグルグルと巡り続けたりもした。
“愚かで悲しい”と言う点で言えば、増尾にも佳乃の父(柄本明)にも、さほど大きな違いはないのだろう。
「数多(あまた)の記事(報道)だけを鵜呑みにしている、更に多くの人々」こそが愚かで悲しく“真の悪人”なのでは? と言う(逆説的な)問いかけを含んだ「呟き」が、ラストで某人物により放たれ・・はからずもそこで唸らされるワタシがいた。
物語の表面だけをなぞれば、誰が“真の悪人”であるかなど「考えるまでもなく明らか」なのに、だ。
この作品は「祐一と光代」以上に「佳乃とその父」に対し何処まで&どのように感情移入出来るか、で物語の捉え方や評価が激変する、面白くも難しい“難作”だと解釈したワタシ。
そう言う意味では・・将来、評価がガラリと変わってしまう気もするが、、何はともあれ現時点では「もの凄い1作」であるとは断言しときたい! 「(今年の)年内最強最大の邦画」となるかも知れんぞコレは!!
〜 こんなトコも 〜
・光代の登場は、物語が始まって40分近く経過してから!
・祐一の乗るは「白の日産スカイライン・GT-R(R33)V-SPEC」。「峠を下りつつ、カーブで後輪滑らせたり」「テール振ってUターンかましたり」と言ったハデな演出も印象的。シーンによっては「走り屋モノ?」と感じちゃうかも(=^_^=)
・あ、でも・・“ス※ルファン”のワタシとしては「WRX STi」を駆って欲しかったカモ(・ω・) ←かつてブッキー(妻夫木)が(イ※プレ※サの)CMキャラだったしぃ。
・タイトルでは「左」に祐一の顔(無表情)、「右」に“悪人”の文字がシンプルに表示され「白⇒赤」と(文字がその)色を変えるのが、何かの“暗示”にも思えた。
・「死者は話せない」・・が故に、必要以上に美化されてしまうンやろか?
・九州女子にすれば、やはり「ユニバーサル・スタジオ(大阪)」ってば憧れのロケーションなんやろか? それと、決して「USJ」と言わないのがポイントなんやろか?
・「蹴られた人がアタマをぶつけしばらくうずくまる」って暴力描写が2〜3度登場し、ちとイヤな気分になった(×_×)
・「またお前か!」な“ウェルテルくん”登場。どんどん彼の評価が下がってく・・(因みに彼の携帯は“旧型iPhone”)
・「月給(手取):15万」「湯布院1泊:5万」「夕食のワリカン:(1人)2680円」「漢方代:263500円」・・全般的に価格設定がリアルな感じ。。
・長崎⇒博多間を(片道)1時間半で走れる祐一。通常は2時間半以上かかるそうで・・(ネット調べ)
・崖下に投げ捨てた際の「心情や映像」は描かれなかった(敢えてか?)
・娘の“真の姿”を知らず、掴めてもいなかったあの父親もまた“愚かで悲しき悪人”ではなかったかな、と。
・ブッキーに『ジョゼと虎と魚たち(2003)』の頃の姿を、深津に『ハル(1996)』の頃の姿を重ねてしまった(・ω・)
・崖を巡る「女1人+男2人」のドラマは何処か『ゆれる(2006)』を思わせるトコもあったか・・
・「容赦なき報道陣」「増尾の(ポンコツな)ご学友ども」など、作品世界のあちこちに“悪人”が点在気味。。
・祐一を棄てた母役に「あの大物女優」さんが! でも本作では「数歩下がった立ち位置」ですた・・まぁこんなモノか。
・松尾スズキ演じる漢方ドクター=堤下(つつみした)のキャラも、なかなかに“悪人道”を爆走してましたでぇ(⌒〜⌒ι)
・安置室で娘の裸足がはみ出てるのに気付き、シートを覆い直す・・「大学生1人、捕まえれんで・・なんが警察か!」と激昂した後、小さな声で「済んません、お願いします」とペコペコ頭を下げる・・いずれも、柄本さんの演技が、半ば神がかってる!(=^_^=)
・静かにスリリングな、久石譲によるピアノのスコア(楽曲)がシンプルながら効果的に響く。
・「自転車置き場で泣く女」に、、図らずもキュンとなってしまった(恥)
・皿に盛られたイカの眼(のアップ)から・・と言う映像演出に『サイコ(1960)』を何故か感じた(☉д☉)
・「峠で無灯火で停車する」ってのは・・かなりな自殺行為だと思うっちゃが・・(⌒〜⌒ι)
・意外と「雨シーン率」高し。邦画では『雨あがる(2000)』に次ぐ高さでは?(そんなにかい!)
・ブッキー&深津さんは「会話なし」でも「ロングショット」でも“絵になってる”2人だと思った。
〜 こんなセリフも 〜
祐一「でも、この前のカネ・・」
「どっこも行っとらんよ・・」
「あの、清水やけど・・」
「俺も、似たようなもん・・」
「眼の前に海の在ったら・・
もうそん先、何処へも行かれんような気になるよ」
「これしか無(な)かとけど・・」 ←“払いグセ”がついてるネ、、
「・・謝りとぅて」
「俺もホンキで、誰かと出会いたくて」
「もっと早(はよ)ぅ、逢(お)うとけば良かった」
「良かけん、乗れって!」
「眠れんで・・誰かと話したくて」
「ちょっと待てって!」
「俺の言うことなんて、誰も信じらんかった」
「今、光代とおると苦しか。一緒におればおる程、苦しぅなる」
「何でこんな人間なんやろ、俺」
「俺は・・“あんたが思ぅとるような男”じゃなか」
光代「何かわたしも、分かる気のする・・“急になんかを変えとぅなる”こと」
「どがんする?」
「なんば、いきなり言いよっと? 吃驚(びっくり)したやん!」
「女だってさ・・“そがん気持ち”になることあるよ」
「ねぇ? ホンキで言いよっと?」
「別に、謝らんで良かよ」
「わたしの人生って、あの国道から全然離れんやったとね。
あの国道を、行ったり来たりしよっただけで」
「わたしは・・ホンキでメール、送ったとよ。
・・ホンキで誰かと逢いたかったと・・ダサかやろ?」
「やっぱり、佐賀と長崎って遠かよねぇ」
「着いたら、連絡頂戴。起きとくけん」
「祐一? どうしたと?」
「何があったか知らんけど・・
話しとぅなかったら、話さんで良かよ・・わたし、待つけん」
「生まれて初めて“ズル休み”した・・思ぅとったより、簡単に出来っとね」
「わたし・・“やっと幸せになれる”て思ったとよ」
「ここで降りたら、もう迷惑かからんわけ? バカにせんで!」
「わたし、待つけん・・何年でも。
・・良かよね?」
「夢? どがん?」
「うち、大丈夫やけん。全然、平気やけん」
“あと1日だけ、一緒におりたかと”
“ごめん。でも、わたし・・やっぱりあの人と離れとぅなか”
「今のわたしたちには、ここしかなかやん!
もう戻る場所なんて、どこにもなかやん!」
父「晩ご飯、なん喰うね?」
「正月ぐらい、ちゃんと帰って来(こ)んね」
「ちょっと漫画ば読んで、待っとってな」
「お前・・なんしよっとか? こげん寒かとこで」
「誰がお前ば、こげん眼に遭わせた?」
「お前は悪ぅなかぞ・・悪ぅなか」
「そんなに可笑(おか)しかね? 娘ば殺された父親の姿が」
母「“蹴り出した”て・・何で、そげんこと」
佳乃“顔は映さんでよ”
“顔、映さんねって!”
「聞こえたらどうすると?」
「あの男とおったら、イライラするっちゃ。
一緒におっても、全然楽しくないっちゃね」
「運転とセ※クスだけは巧いっちゃが」
「だって“そのため”に逢(お)うたんやけん」
「ちょ・・寒いやん」
「バカにせんでよ!」
祖母「しっかし世の中には、惨(むご)たらしかことする人が、おるもんやね」
「悪かことして、そう逃げ切れるもんね」
憲夫「何でんかんでん、祐一に頼っとったらダメばい」
刑事「ただ、結論から言いますと・・犯人は別におるようです」
祐一「・・もう、良かよ」
光代「なんが? “もう良か”て、どう言うこと?」
光代「祐一って、なんも話してくれんよね?」
祐一「俺には・・なんも言えんよ」
光代「・・そやなくて、何か言うてよ。ちゃんと話してよ」
父「なんね?」
母「あんたちょっと・・何や知らん・・警察から」
※「降りてくれんや」
「あんた、何か安っぽか」
「あんた、誰のクルマにでも乗るっちゃね?」
「誰が、あんたのことなんか信じると? 誰も信じんよ」
「今までは、生きとるのか死んどるのか、良ぅ分からんかった」
「全く“良か人間”に育ててくれたよ・・」
「あんたが悪かワケじゃなか。しっかりせんと、いかんよ」
「違うと。あの人は・・ホントは“悪か人”じゃなかとよ」
「あんた・・“大切な人”はおるね? “その人の幸せな様子を思う”だけで、
自分まで嬉しくなって来るような人は?」
「今の世の中・・“大切な人”のおらん人間が多過ぎる」
「“自分には失うもんがない”と、強くなった気になっとぅ。
失ったり、欲しがったりする人間を・・バカにした眼で眺めとぅ。
・・ホントはそうじゃないとよ。それじゃ、人間はダメとよ」
「そうやって、ずっと人の事ば、笑ぅて生きていかんね」
「おカネば、返してくれんですか?」
「ごめんね・・何もしてやれんで」
「世の中には、酷か男がいるもんやね。“人間の出来ること”じゃなかですよ」
追記1:久々に劇場で「関連グッズ」を購入しちゃいますた。「シナリオ版の文庫本」なんですけどね、ええ(・ω・)
追記2:博多弁(福岡弁)・長崎弁・佐賀弁が全般的に飛び交ってたもので、かなり聞取りがテキトーだった気がする。。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント