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2010年8月17日 (火)

☆『キャタピラー』☆

16日(月曜)。
昨夜の帰松が“午前様”に迫ってたのもあり、何となく疲れの抜けぬ今日だった。

今夜は・・地上波で『恋空(2007)』ちぅ恋愛系邦画が放送されるので、チャッチャッと仕事が終わり次第帰宅するつもりでいたが・・
期待値の高まってた1作『キャタピラー』が、いよいよ商店街のミニシアター“ソレイユ”で解禁(?)となったこともあり「こいつはやっぱし観て帰ろうかな!」と直感的に決めたワタシ。

「R15指定」の付いとるこの作品。
終戦後65年を経た今となっては「えっ? 日本とアメリカが戦争したことなんてあるの?」とか言ってるちびっ子(やその若い親御さん)も、世間一般に決して少なくないんじゃないか? なる“懸念”のなかなか払拭出来ないワタシにとっては「まさしく大人向け」である本作ってば、それだけで「単なるちっぽけな(?)“家族対応の夏休み向け反戦作品”なんかじゃないんやね〜」と、ちとスクリーンを見上げる背筋のシャンと伸びる心地すらもしたり(・ω・)

日中戦争の続く1940年に始まり、1945年夏の敗戦に至るまでのニッポンの姿を・・“軍神”と崇め奉られた1人の傷痍軍人とその妻の暮らすとある村落(新潟県か?)を舞台に描いた物語。

黒川久蔵少尉(大西信満)がその村に復員を果たした時、彼の妻=シゲ子(寺島しのぶ)は衝撃と恐怖心から、田園へと思わず駆け出すのだった。
「いやあぁ〜!」と叫びながら・・

「“忠烈なる武勲”を褒め讃える新聞記事(パネル加工済)」「陛下より賜った“3つの勲章”」「“軍神”としての恒久の栄誉」
・・これらと引き替えに久蔵が戦場で失ったモノもまた、大きかった。

「四肢」「聴力」「言葉」・・ 戦場での“非道な所業の記憶”をよみがえらせては暴れ「貪り喰う・眠る・妻の身体を貪欲に求める」・・と本能の命じるまま故郷での生活を再スタートさせる“変わり果てた姿の夫”に対し、次第に「これまで押し殺して来た感情」を爆発させて行くシゲ子であった。

観る前から「こりゃ江戸川乱歩の短編『芋虫』であり、山上たつひこの劇画『光る風』の世界なんやろなァ」・・と即座に思い至ったワタシであるが、改めてああ言う“小説”や“漫画”の世界が「リアルに実写化されること」の凄まじさを、大スクリーンで突き付けられたことに、正直ゾクッとさせられた。

コレまでも『フォレスト・ガンプ/一期一会(1994)』や『ボクシング・ヘレナ(1993)』なんかで「こりゃ、スゴいわ」と圧倒されてしまった(その手の)描写はあったが、本作の“容赦なさ”ってばそれらを凌駕してる!
そして「VFX処理&特殊メイク」に負けじと、これまた頑張ってくれてる・・いやさ、頑張り過ぎてくれてるのが寺島さん。

何かもう、スゴいッス!
最近では「な〜んてね☆」な〜んてなセリフで「おお!女優力、上がって来てますやんか!」とワタシをして感心せしめた女優さんもおられたが・・寺島姐さんの頑張りの前では「まだまだあんたってば国内レベル」って感が拭えなく思えて来るし(⌒〜⌒ι)

主演2人の頑張りぶりはスゴいし、ラストで「ズ〜ン」と心に一撃を加えてくれる、元ちとせの歌う『死んだ女の子』(編曲:坂本龍一!)なるナンバーの採用もバッチリなんだが、、私的には映像が(全体的に)明る過ぎ、クリア過ぎる気がした。

あの作品性からすれば、もっと画像を重く、暗く、必要によっては粗くすらもして良かったんじゃないかな、と。

また『芋虫』を意識し過ぎる(?)余り、色んな(展開の)可能性の広げられてた終盤を、結局は“あのラスト”に持って行かざるを得ない“ある種の呪縛に勝ててないっぽさ”を痛感してしまったな。

妻が夫をひしと抱き「大丈夫・・2人で生きて行こう!」と・・誓うように、絞り出すように言い聞かせるセリフや、久蔵が※※※※を用いて“あるコミュニケーション手段”を開発(?)する演出を「わざわざ」描いてたのが、アレじゃ勿体ないなぁ・・と(・ω・)

まぁ、予告編だけでは全く分からないンだが・・久蔵の“過去の言動”が次第に明らかとなって行くのには、意外さがあった。観客によっては「こうなったのも“自業自得”なんじゃ?」と感じる方もおられたかも知んない(・ω・)

〜 こんなトコも 〜

♦寺島しのぶのスゴいのは「“女前(?)にすっぱりと脱ぐ”けど、決してそれで終わりじゃなく、全裸をさらして尚“余裕&可能性”を感じさせる」そんな女優さんであるトコだと思う。半面、男性観客としては、ヴィジュアル的に「あんましドキドキしないタイプ」の方なんだけど・・(スンマセン)
♦篠原勝之さんの演じるキャラが強烈である! たけし監督の『座頭市(2003)』でもあの手のキャラが配されてたが、更に立ち位置が際立ってる!
♦ARATA氏が(冒頭の)1シーンのみ出演。ファンは見逃すな!
♦ウィキ記載によれば、本作ってわずか「撮影期間:12日、スタッフ:11人」で仕上がったらしい! それってスゴい!
♦タイトルからするに、久蔵ってば、戦地で「戦車に轢かれてしまったのか」と思ってた(⌒〜⌒ι)

〜 こんなセリフも 〜

シゲ子「あんなの久蔵さんじゃない! ね? 違うわよね? 違うって言ってよ!」
   「こんな姿で、生きてるって言えるの? 死んじゃいたいでしょ?」
   「私は“軍神の妻”ですから」
   「分かりました・・脱げばイイんですね?」
   「まだ足りないのですか? ・・食べること、寝ること、それしかないんですものね」
   「勝手に怒ってればイイわよ」
   「“ご褒美”が欲しいのね?」
   「ホントは殴りたいんでしょ? 殴って言うことを聞かせたいんでしょ?
    殴ってみなさいよ、ホラ」
   「昔は、私ばっかり殴られてたのに・・残念ね」
   「今日は、楽しかったですね」
   「“軍神様”は皆の誇りですね。“ご褒美”を差し上げますね」
   「何でそんな眼で私を見るの? 何でよ!」
   「・・今日は疲れてるんです」
   「何なのよ! 軍神様、軍神様って! 軍神様って何なのよ!
    こんな姿で帰されて」
   「どうして、こんな姿で帰って来たのよ」

※「こんな姿で、生きて帰られたってよぅ」
 「これじゃ・・只の“肉の塊”だ」
 「あなたの貞節こそ美徳。まさに“銃後の妻の鑑(かがみ)”ですな」
 「家庭は“最期の決戦場”です」
 「恥を知る者は強し」

追記1:やっぱし『芋虫』のラストのように、久蔵の“D(イング)メッセージ”ぐらいは遺して欲しかった。
追記2:考えたら・・本作ってば、シゲ子による“一人芝居”と言うスタイルで舞台化しても面白い気がする。
追記3:終盤で「御国の為に、絞首台にぶら下がる」みたいな(ある敗軍の士官の)決意の言葉が画面に映し出された。 ・・ふと思い出したのは、三谷幸喜氏による某作品(2004)で某キャラの放った「御国の為になんか、死んではいかん。死んで良いのは、お肉の為だけだ!」みたいなセリフだった(=^_^=)
追記4:大西&寺島は『赤目四十八瀧心中未遂(2003)』でも共演してたそうだ! 残念ながら、未見なのよ。。

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コメント

ご覧になられたのですね。

テアトルで流れていた予告編を観て、その凄まじさに怖気付いてしまった私です。
乱歩の『芋虫』、本作を観る代わりに読んでみたいです。

TiM3さんのレヴューを拝読させて頂いただけでも余りある“ゾクッと感”を感じることができました。

投稿: ぺろんぱ | 2010年8月17日 (火) 22時12分

ぺろんぱさん、お早うございます。

実家に頼んで『真夏のオリオン』を録っといて貰いました。
また、帰阪の折に観なきゃ・・

>テアトルで流れていた予告編を観て、
>その凄まじさに怖気付いてしまった私です。
>乱歩の『芋虫』、本作を観る代わりに読んでみたいです。

高校生ぐらいの頃に読了したんでしたっけ・・
何ておマセな乱歩ファンだったんでしょう(⌒〜⌒ι)

短編集が出てて『鏡地獄』『2廃人』『赤い部屋』とか、
とにかく短いけど、インパクトありまくりの作品群でした。

>TiM3さんのレヴューを拝読させて頂いただけでも
>余りある“ゾクッと感”を感じることができました。

女性にはゼヒ、寺島姐さんの体当たり(し過ぎ)ぶりをご覧頂き、
感想をうかがいたいトコです・・

大西信満さんも、何処となく榎木孝明さんを思わせる、
静かだけど力強き「眼の表情」が印象的でした。

投稿: TiM3(管理人) | 2010年8月18日 (水) 07時15分

この映画はちょっと刺激がキツ過ぎるようなので躊躇しています。

TiM3さんの言葉「ああ言う“小説”や“漫画”の世界が「リアルに実写化されること」の凄まじさ」。これってやっぱり怖ろしいですね。

予告編を観て、怖くなってるので、やっぱりしばらく時間を置いてからとします。

PS 全裸をさらして尚“余裕&可能性”を感じさせる・・・半面、男性観客としては、ヴィジュアル的に「あんましドキドキしないタイプ」
   言えていますね。富司 純子さんがちらりと見せる着物の裾足のゾクッ感とかなり違います。

投稿: west32 | 2010年8月18日 (水) 22時33分

westさん、ばんはです。

>この映画はちょっと刺激がキツ過ぎるようなので躊躇しています。

映像からのプレッシャー以上に、奥さんの心情描写に
「憤り」「嘲り」「貪り」と言った感情の混じって来る
展開(?)がズーン! と来ます。

イマドキの草食系男子には耐えられない生々しさかも(=^_^=)

>「リアルに実写化されること」の凄まじさ」。
>これってやっぱり怖ろしいですね。

「ある種のタブー」に踏み込んだトコには、
拍手を送りたい心地がします。

>予告編を観て、怖くなってるので、やっぱり
>しばらく時間を置いてからとします。

「戦争に想いを馳せる時期」に観とくべき作品、とは思います。
具体的には、8月上旬〜中旬。。

>言えていますね。富司 純子さんがちらりと見せる着物の裾足の
>ゾクッ感とかなり違います。

どうも、ワタシの中では「ストーブ貸してくんちぇ〜」とリアカーを
引きながら歩いておられる冨司さんの(近年の)印象が強烈すぎて・・(⌒〜⌒ι)

投稿: TiM3(管理人) | 2010年8月19日 (木) 20時13分

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