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2009年12月 2日 (水)

☆『空気人形』☆

1日(火曜)の夜。前々から観たかった1作『空気人形』を職場近くのミニシアター“ソレイユ”で鑑賞して来た。
たまたまであるが、本日が1日(=ファーストデー)ってことで、1000円で観ることが叶った☆ ここ“ソレイユ”では、この先も『クヒオ大佐』『母なる証明』『リミッツ・オヴ・コントロール』・・と言った凄まじい佳作群の上映が控えてもおり「大手シネコンを圧倒する勢いやん!」と嬉しくて仕方のないワタシである。

本作、『誰も知らない(2004)』で世界に名乗りを上げた(?)是枝裕和監督の最新作でもある。
しかし、予想してた以上に、上映館やら観客層やらを「自ら狭める」かのような(?)面白い意欲作に仕上がっていた。常人であれば、もっともっと資金を集めて「中身はない(薄い)けど鼻息荒い1本」をぶちかますトコでもあろうが、この題材は一体どうしたことだろう? カントク(⌒〜⌒ι)

港湾にほど近い東京の下町“銀町”の一角。
とあるアパートに関西出身の中年男・秀雄(板尾創路)が暮らしていた。彼が“のぞみ”と呼び、性欲のはけ口(!)とするのは“ラヴリーガール・キャンディ”と言う名の希望小売価格5980円(⌒〜⌒ι)の「空気入りビニール人形」。

どうしたことか、ある日“のぞみ”は心を持ち・・自らの意思で動き、歩き始める・・戸外に降る雨、町を流れる風、がらんと広い公園とその向こうにそびえる高層建築・・彼女(ペ・ドゥナ)の眼にする総ては、新鮮な驚きに満ちていた。

町で“シネマサーカス”なるDVDレンタル店に入った“のぞみ”は、そこで働く純一(ARATA)と言う青年に出会い、やがて恋に堕ちる・・

監督が「撮りたい作品を、好きなように、楽しんで撮らはったんやな〜」と言うのが伝わって来る。一方で、是枝監督ならでは(?)の号令がかかったか、余貴美子、寺島進、富司純子・・と言ったすんごい面々が集まってた! 中でも、人形工房(=有限会社ツチヤ商会)で孤独に働く青年(=人形師)を演じてた「あのしと」の登場には少しびっくり!
こんな役もやらはるんやね〜。『THE有頂天ホテル(2006)』の“あのバーコード系の筆耕屋”を眼にしたとき以来のサプライズですた(←誰だか分かるっての)

当初の予想では、誰もが思い付く辺りだろうが『ラースと、その彼女(2007)』やら『マネキン(1987)』『マネキン2(1991)』やらのテイストの変形版かな? と思いきや・・連想したのは意外にもクロサワ映画『どですかでん(1970)』だったりした(=^_^=)

とある町を舞台に“どっか空っぽで奇妙な人々”が多数登場する群像劇なテイストがかなり似てたように感じたな。
「空気人形」は確かに物語の“軸”には違いないんだけれど、彼女を「鏡(或いはそのまま“空気”と言い換えても良いだろうか?)のような存在」に見立て、結局は町の人々がそれぞれにささやかに主役を演じてたようにも。

実際に観るまではペ・ドゥナと言う女優のことを全く知らず、ポスターなんかの印象から「美人とも言えないし、おかしな顔立ちの子やな〜」と“おかしな顔立ちである自分”を差し置いて(×_×)勝手に評価を下げてたワタシだったが・・実際に動(いご)くペ・ドゥナさんを拝見して・・恐れ入った。。

まずは体当たり演技が天晴れ! 全裸バックショットは当然(?)のこと、円錐形の可愛いおっぱいが拝み放題(!)なのである。
特にワタシの気に入ったのは「全裸の(横向き)座り姿で、自ら空気を入れる動作」のシーン。
男性のみならず、女性の方々にもご覧頂き“女性の美しさ素晴らしさ”を再認識頂きたい映像である!

しかし何だろ? 冒頭からの映し方では、明らかに秀雄を主人公っぽく描いてるのに、中盤以降はずんずん彼の存在が後退していってた。まるで某コミックの則※千兵衛博士(←いわゆる“スランプなドクター”)のようである(・ω・)

生きてる人間、生きてる人形、それぞれが自らの過ごす日々に“空虚”を感じ、迷いつつ生きてるんだが、そんな中「歪んだ形の愛とその死」が淡々と(?)描写される辺りは、妙に猟奇的に見えてしまい、ちょっと背筋のザワつくのんを覚えた。
(何だか『実録/阿部定(1975)』も連想しました、あの場面)

『誰も知らない』もそんなテイストを含んでたが・・是枝美学(?)の中には「人がひとたび体温を失えば、もはやそれはただのゴミとなる」とでも言うような思想が刻まれてるんやろか? 静かに奇麗に、時に無国籍な映像世界の流れた本作であるが、一方では、この上なく汚い世界を、是枝監督が手がけたが故に、辛うじて「美しく」観客に見せることが叶ったのかも知れないな・・と不思議な余韻を感じたワタシである。

〜 こんなトコも 〜 

♦空気人形が出かける際には、秀雄宅の玄関は施錠されてなかったようだ!
♦映画ネタもちらほら出て来た。苦笑させてくれたのは、レンタル店のポスターにある、ドンランド・ギメリッヒ監督の新作『西暦2万年』とかってヤツ(=^_^=) 他に『スタンド・バイ・ミー(1986)』『ブラック・レイン(1989)』『仁義なき戦い(1973)』『太陽がいっぱい(1960)』『メリーに首ったけ(1998)』などのタイトルがセリフ中に出て来た☆
♦一見ちゃちな空気人形だが、箱には“次世代空気式バディ!!”とか書かれてた☆
♦駄菓子屋の風景。「リリアンあります」の手書きポップ(?)が何とも言えず懐かしい。
♦おヘソの栓(?)から空気を抜いたり、再び吹き込んだりする行為・・ペ・ドゥナの恍惚の表情にやられた! 顔面を紅潮させないとアカンけど、汗までかいたら不自然な訳で・・あのシーンは撮る側もかなりの試行錯誤を重ねたと見た! 類稀(たぐいまれ)なラヴ・シーンである!
♦『ウルトラミラクルラヴストーリー』以来のARATA氏。かの作品でも「思いっきり奇妙な役柄」だったが、本作も何とも奇妙なキャラだった、ふんとに。
♦「※※入りのビニール袋」をゴミ捨て場に運んで(引きずって?)来る人形・・思いっきりホラーじゃん!
♦巡査(寺島進演じる)の借りてった1本は『フェイク(1997)』だったんやろか? ジョニー・デップとかアル・パチーノとか言ってたように聞こえたし・・(・ω・)
♦ラスト近くの「ハッピーバースデー」な演出は『新世紀エヴァンゲリオン』か『ゲーム(1997)』かって感じ。
♦公園周辺(?)を自転車で走り回る秀雄の必死さには、それなりの優しさがあったと思う。

〜 こんなセリフもありました 〜

秀雄「どないする? もう遅いし、今日は風呂やめとこか?」
  「のぞみ・・奇麗や」
  「俺、お前といつまでエッチ出来るんやろなぁ」
  「星座(ほし)にヤキモチ焼いて、どないすんねん」
  「読んだんか? 俺のブログ」
  「なぁ・・元の人形に、戻ってくれへんか? 普通の、只の人形に・・ムリか?」
  「こう言うの、めんどくさいからお前にしたのに・・
   いや、めんどくさいのは、お前やのぅて、他人(ひと)の方や」

のぞみ「き・・れ・・い・・」
   “私は、心を持ってしまいました。持ってはいけない心を、持ってしまいました”
   “心を持ったので、嘘をつきました”
   “私は、空気人形。性欲処理の代用品”
   “私は、空気人形。型遅れの安物です”
   「コレで線、消せるから」
   「ごめんなさい。役に立てなくて」
   「見ないで・・」
   「ああ、ごっつ奇麗やなぁ」
   “心を持つことは、切ないことでした”
   「何で私なの? 私じゃなくてもイイんでしょ? そうなんでしょ?」
   “心なんか、持たない方が良かった”
   「生んでくれて、有難う」
   「誰かの代わりでもイイの」

純一「何かお探しですか?」
  「生きてるものはいつかは死なないと。世界が生き物で溢れちゃうから」
  「空(そら)には空気があって・・それは透明で眼には見えないけど、確かにあるんだ」

店長「あのね、橋の向こうに行くと“ツ※ヤ”があるからね」
  「誰とでもするの? こう言うこと・・イマドキの娘は」
  「ちょっと触ってくれるかな?」

老人「君だけじゃないよ、空っぽなのは」
  「蜉蝣(かげろう)は“ただ生んで、死んで行くだけの生き物”だが、
   我々人間も同じようなものさ・・下らんよ」
  「犬を飼うなんて、悲しいだけさ」
  「済まないが、一寸(ちょっと)触って貰えるかな?」
  「掌(て)の冷たい人は、心の温かい人だと、昔から言うんだよ」

吉野 弘の詩『生命(いのち)は・・』より

 “生命(いのち)は、自分自身だけでは完結出来ないように、作られているらしい”
 “生命はその中に欠如を抱(いだ)き、それを他者から満たして貰うのだ ”
 “世界は多分、他者の総和・・しかし互いに欠如を満たすなどとは、
  知りもせず、知らされもせず・・バラまかれている者同士、無関心でいられる間柄
  時に、疎(うと)ましく思うことさえも許されている間柄”
 “私もある時、誰かのための虻(あぶ)だったろう・・あなたもある時、私のための風だったかも知れない”

純一「他には、どんなこと知りたい?」
のぞみ「あなたのこと、もっと知りたい」

のぞみ「歳を取るってどう言うこと?」
純一「老いてだんだん死に近付いて行くこと。そしてやがて・・生命(いのち)を失うこと」

のぞみ「心を持ってしまったの」
秀雄「・・何で?」
のぞみ「分からない」

老人「わしも・・ずっと“空っぽの代用品”だった」
のぞみ「寂しかった?」
老人「どうだったかな? もう忘れてしまったよ」

人形師「ちゃんと愛されたかどうかは、戻って来た人形の表情で分かるんだ」
   「残念だけど、君たち人形が戻って来れば・・“燃えないゴミ”なんだ」
   「まぁ僕も、いつか死んだら“燃えるゴミ”だから、大した違いはないけどね」
   「君の見た世界に“美しいもの”は少しはあったかな? ・・なら良かった」

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コメント

こんばんは。

中二日ぶりのネットです^^;

『リミッツ・オブ・コントロール』はチェックしてたのに見逃しました。
画像だけ見て想像すると『エル・マリアッチ』みたいですね(これも観てなかった)^^;

>連想したのは意外にもクロサワ映画『どですかでん(1970)』だったりした(=^_^=)

あ~!黒澤映画でも、黄金期後に撮った、一種夢のような世界観ね^^

>♦一見ちゃちな空気人形だが、箱には“次世代空気式バディ!!”とか書かれてた☆

駄菓子屋といい、昭和の臭いがプンプンしてましたね。

それにしても、あの※※入りのビニール袋の透明度も微妙に良かったですよね。
見えそうで見えない、見えなさそうで見える。

秀雄の持ってた最新バージョンって『ラースとその彼女』と同じドールだったのかな~って^^;
そういえば、板尾の監督・主演の最新作は凄いらしいですね。
(ちらしに、そう書いてあったから)^^;

投稿: ituka | 2009年12月 3日 (木) 00時43分

itukaさん、ばんはです。

歳末は流石に、お互い忙しそうですね。。
ま「働ける環境があって、忙しいこと」には感謝すべきなのかも(・ω・)

>『リミッツ・オブ・コントロール』はチェックしてたのに
>見逃しました。
>画像だけ見て想像すると『エル・マリアッチ』みたいですね
>(これも観てなかった)^^;

『デスペラード』を観ときゃイイんでは?(=^_^=)

ワタシはシャーリー版『ココ』をとうとう逃しました(×_×)

>黒澤映画でも、黄金期後に撮った、一種夢のような世界観ね^^

これでコケて、次はロシアに流れて『デルス・ウザーラ』でしたからね(×_×)
クロサワファンの中には『赤ひげ』以後は観ない、ってしともいるようで・・

>駄菓子屋といい、昭和の臭いがプンプンしてましたね。

駄菓子屋の主人役が蛭子能収氏だったら、まんま『僕サイ』ですよね、、

>それにしても、あの※※入りのビニール袋の透明度も
>微妙に良かったですよね。
>見えそうで見えない、見えなさそうで見える。

真似するしとが出て来るかも、、って『OUT』かよっ!

>秀雄の持ってた最新バージョンって『ラースとその彼女』と同じ
>ドールだったのかな~って^^;

出来は良かったですよね。

>そういえば、板尾の監督・主演の最新作は凄いらしいですね。
>(ちらしに、そう書いてあったから)^^;

本作のスピンオフだったりして(苦笑)

投稿: TiM3(管理人) | 2009年12月 3日 (木) 01時17分

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