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2009年7月 5日 (日)

☆『ディア・ドクター/Dear Doctor』☆

4日(土曜)の夜。
昨日(3日)より(出張絡みで)帰阪しており・・久しぶりに昼過ぎまで12時間もの(!)“寝だめ”を敢行しちゃったりもしたこの日(=^_^=)
やっぱり、実家のベッドの寝心地はなかなかによろしいのである!

何処にも出かけず終日(ひねもす)ゴロゴロ・・と言う選択肢もなくはなかったが(・ω・) 「折角のオオサカ滞在だし、いち早くホンマもんの新作(?)を1本こなしとこう!」と考え、狙っていた『ディア・ドクター』を観て来た☆

シアターは、大阪勤務時代に『パンズ・ラビリンス(2006)』を観て以来(確か一昨年の秋頃)、久しぶりの“Movix八尾”と言うシネコン。レイトショーの時間帯でしか都合がつかなかったが、代わりに料金が1200円で済み、少し嬉しかった。
それにしては、なかなかの入り(入場率)だったなぁ!

茨城県の山奥に位置する神和田(かみわだ)村。この村では、3年半を勤め上げたベテラン診療医=伊野治(笑福亭鶴瓶)の突然の失踪に、村内の誰もが動揺を隠せずにいた。
スクーターで村を走り去る伊野の後ろ姿を目撃した者、道路脇に残されていた(彼の)白衣を拾い上げた者、約束した翌日の診療を受けることの出来なくなった者・・

その中には、数ヵ月間と短いながら、彼の助手とし「へき地医療」の手助けをしていた青年研修医=相馬啓介(瑛太)の取り乱した姿もあった。

果たして彼は何処へ消えてしまったのか? そして、彼の消えてしまった、
いや、消えざるを得なくなった“その本当の理由”とは・・?

物語は、伊野の失踪事件に東京から来た2刑事(岩松了、松重豊)が関わり、本格的に“メスが入れられてゆく”過程と共に、
相馬が、赤いBMWに乗り、この神和田村にやって来た日からの展開が綴られる・・

原作・脚本・監督が『ゆれる(2006)』の西川美和さんってことで「今回も難解気味で、(真相を)観客に投げっ放す系なのかなぁ?」と多少の不安を覚えてしまったモノだが・・
「観客各位が“神の視点でもって目撃者となる”と言う要素」は更に磨き上げられ、笑いのセンスなども(主に前半ばかりだが)ちりばめる余裕も出てたりして、正直、驚かされた!

西川さんの処女作(?)『蛇イチゴ(2002)』はまだ(HDに録画したまま)観れてないワタシであるも・・『ゆれる』より更に“表現力&(作品)世界の幅”のパワーアップしてる気がした!
ちと(物語の)根っこの部分に芥川龍之介の小説「薮の中」や、滝田洋二郎監督の『おくりびと(2008)』などのエッセンスを取り込んでる気もしたが(←ワタシの単なる妄想かも)、もしそうにせよ、良い方向に昇華(?)してるので、それは素晴らしいことだと思う。

特筆すべきはキャラ造型の巧みさで、

・“公の部分”では本心が読めないが“私の部分”だと「心の揺れ」が伝わりまくって来る鶴瓶さん
・「チャラチャラしてる、イイ奴」だけに終わらぬ“秘めた言動”があり、それが赦せる瑛太くん
・本質は小悪党なんだけど“正義感としての精神”をも秘めた、難解な演技を苦もなくこなす香川照之さん(持ち味?)
・「ヒネた見方をする(=^_^=)観客」が心に秘めてるであろう想いをズバズバとセリフにして放ってくれる松重さん(刑事の立場で)
・最も(事件の)核心に近く、恐らくは“真相”を知っていたにせよ、それを秘め続けた余貴美子さん(ラストでは、彼女の“漠然と恐れ続けて来たこと”が現実となる・・)

彼らベテラン陣が“秘める”(または“暴く”)と言う演技に関し、それぞれの持ち味をいかんなく発揮し、(悪くすれば観客の中で)表面的に流れ去ってしまうドラマの「裏側」までもを感じさせてくれてたのは素晴らしい!
ワタシの中では「2009年に観た邦画」の中で、かなりな上位に喰い込んで行く1本ではないかな? と早くも(?)確信してしまう1本となった。

(私的に)惜しむらくは、
・終盤で、舞台がトウキョウにシフトしてしまっていた
・「へき地医療」に対する切り込みは、中途半端に終わってしまってた感もあった(結論は出せないんだけど)
・ラストの演出はちと“唐突”かつ“蛇足”ぽくも感じたか(流れ的に必要だとは思うんだが・・)
・ウルウルさせる演出には乏しかった
・祭りの風景とか、神和田村ならではの“ゆったりシーン”が欲しかった。時間的にカットされたかな?

辺りだろうか? それにしてもパワフルで上映時間(2時間越え)を感じさせぬ「映像+演出=完成度」だった! この作品は良い!

〜 こんなトコロも 〜

♦無医村(むいそん)に勤めれば年収2000万円ほどが支給されるそう。心身の休まる暇はないけどね(×_×)
♦村の集会所(?)には「心洗」なる書額が。(「洗心」だったかも、、)
♦伊野が相馬のクルマで患者の所へ向かう際のセリフ「僕、※※※※のよ」がかなり強烈! この“フリ”はスゴい!
♦鳥飼かづ子(八千草薫さん)や鳥飼りつ子(井川遥さん)の「顔を背けたまま“重要なこと”を言う」って演出は、改めて“これぞ邦画や! 日本人や!”と観客の愛国心を高めてもくれる(・ω・)
♦斎門(さいもん)(香川)の“咳込み具合”に妙な不安を覚えた。。
♦とある処置の際、患部に顔を近付けた伊野の「眼鏡の曇る演出」が光ってた!
♦とある処置の直後、へたり込む大竹さん(余さん)の演技も印象的だった!
♦帰郷時、台所でぼんやり「棒アイス」を食べ始めた循環器内科医のりつ子。“あること”に気付き、アイスなんかは流しにポンと捨てる! プロや・・(・ω・)
♦伊野が村外れで“最後に出会った人物”とは?!
♦母娘(かづ子&りつ子)を画面の両端に配するカメラワークも印象的。ど真ん中に「敷居」のあるのが“2人の心の溝”みたいなんですよね。
♦フロントバンパーの外れたBMW。あのままだと「整備不良」で検挙されると思うんですが・・(=^_^=)
♦余りに機械的な(=^_^=)「ドアが閉まります」でさえ、セリフとして十分な効果を上げていた☆
♦何でもかんでも「ドクターヘリ」で搬送・・とはいかないんスね(×_×)
♦JR「上菅谷駅」(の駅舎)が登場☆ 当駅で下車の折は(看板の映ってた)「茨城第一交通(有)」のタクシーを使ったげて下さい(=^_^=)
♦劇中の病院は「東京医科大学病院(新宿区)」とのこと。架空の医大の名は「若槻医科大」ですた。
♦ラジカセ(!)で流れてた落語は「10代目・金原亭馬生(きんげんていばしょう)」って噺家の『親子酒』。ユゥチゥヴで観れそうですね☆

〜 こんなセリフもありました 〜

伊野「何でまたこんな診療所へ? “罰ゲーム”か何か?」
  「辛抱が一番の毒です」
  「CTのある病院? 車で2時間かからんかな?」
  「何やクチから出とるで・・赤貝や!」
  「“縄張り意識”と違う・・“不可侵条約”や」
  「あないに離れてて“お隣”て」
  「あんまり精を出さんようにね」
  「家族は? 家族に説明する!」
  「ここの人は“(医者が)足らん”と言うことを受け入れてるだけや」
  「あんた、随分と“入れ込んだ”なぁ」
  「好きでここに残っとんのと違う」
  「(弾が)飛んで来たら撃ち返す・・毎日がその繰り返しや」
  「もう※※、言いなや」
  「ああぁ、鬱陶しいなぁ〜!」
  「上司の愚痴ぐらい、聞けるようにしとけ」

相馬「(医科)大学や病院では“見えない”ことが、村でなら“見える”って思うんです」
  「ここだとちゃんと“人に喜ばれる”んです」

刑事「こんな村の診療医ったって・・年寄りが死んでくの、眺めてるだけの仕事だろ?」
  「代わり(の医者)が来りゃ、何だってイイのか?」
  「くどいようですが、※※は※※では※※んですよ」
  「伊野を神仏に仕立てようとしたのは、あんたらの方じゃないのか?」
  「案外、村人に“袋叩きにされる”のは僕らの方かも知れませんな」

村長(笹野高史さん)「ここじゃ、神や仏より先生こそが“神様”ですから」

村人「こんな大往生、ねぇよ」
  「最期はホント、イイお顔・・」

かづ子「(ご飯の)お代わりは?」
伊野「いいです。自分で入れます」 ←おい

かづ子「この歳になると、何処かへ出て行くのもくたびれちゃって」
   「何にもしなくてイイんです。何にもしたくないんです」
   「子供達にも必死で築き上げた生活がありますから。(娘たちの)足手まといになりたくないんです」
   「だから先生・・一緒に“嘘”をついて下さいよ」

斎門「自分の手の中に、他人の命綱が握られているような・・そんな気がするんです」
  「(愛とは)そう言う感じじゃないですか? 多分」 ←「人間の本質」を衝くアクションが冴える!

りつ子「・・納得がいきました」
   「診るのは“他人の親”ばかりで」

りつ子「先生、ご両親様は?」
伊野「十分、親不孝をしております」 ←ここのやり取りにウルッと来る観客も少なくない?

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コメント

こんばんは。
鶴瓶さん主演というのが抵抗の種(決して嫌いなのじゃありませんが)でしたが、西川監督最新作ということで・・・観てきてよかったです。

病への観点、病との接し方等、本筋とは違うかもしれませんが結構そういうところで根底から何かが覆されるものを感じました。

西川監督、人間の心のざわめきや暗部に巣食う“美しくはないもの”など、そんなものを風景や音や小道具の演出でぐぐッと迫り来るものとして見せてくれるのには、改めて凄いなって思いました。

投稿: ぺろんぱ | 2009年7月 5日 (日) 22時37分

ばんはです、ぺろんぱさん。

>鶴瓶さん主演というのが抵抗の種(決して嫌いなのじゃ
>ありませんが)でしたが、西川監督最新作ということで・・・
>観てきてよかったです。

ワタシもバラエティ番組とかを全く観ないので、
動く鶴瓶さんを観るのは久しぶりでした(=^_^=)
彼を好かない人は、どんなに誘っても、観に行ってくれそうにないですね(=^_^=)

>病への観点、病との接し方等、本筋とは違うかもしれませんが
>結構そういうところで根底から何かが覆されるものを感じました。

実際に「へき地で奮闘してる医療者の方々」に対するエール・・
には(必ずしも)仕上がってなかったように感じましたが。。

>西川監督、人間の心のざわめきや暗部に巣食う
>“美しくはないもの”など、そんなものを風景や音や
>小道具の演出でぐぐッと迫り来るものとして見せてくれるのには、改めて凄いなって思いました。

何となく河瀬直美監督っぽい風景描写を感じたりもしました。
河瀬ヴァージョンならば、きっと伊野センセイ役は國村隼さんでしょうか・・(⌒〜⌒ι)

そうそう、診療所の人たちが集合写真を撮るシーン・・
は、何としても入れて欲しかったモノです。ラストにでも・・

投稿: TiM3(管理人) | 2009年7月 6日 (月) 01時20分

こんばんは。

本作は巷の評価が結構高いですね。
主演のつるちゃんが地でやれてそうなキャラなので敬遠してました^^

投稿: ituka | 2009年7月10日 (金) 21時56分

itukaさん、お早うございます。

>本作は巷の評価が結構高いですね。

『おくりびと』と俳優のかぶってるトコもあるけど(=^_^=) 良かったです。ちと薬品の説明とか、専門的で分かんなかったですが、、

>主演のつるちゃんが地でやれてそうなキャラなので敬遠してました^^

善し悪しの部分ですね。
私的には「動いてるつるちゃん」を観る貴重な機会でした(=^_^=)
バラエティでは一切観ないお姿ですし・・

投稿: TiM3(管理人) | 2009年7月11日 (土) 10時28分

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