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2009年2月14日 (土)

☆『羅生門/デジタル完全版(2008)』☆

14日(土曜)の午後。阪急・高槻駅界隈の商店街の中に位置するミニシアター『高槻ロコ9プラス』にて短期上映の始まったクロサワ作品『羅生門(1951)』のデジタル復刻版を観て来た☆
(本日が何と初日! ・・で27日まで)
そもそもは、先月上旬に新梅田シティ内のミニシアターにおいて、期間限定で公開されてたのを観逃し(連日、上映開始時間が早かったのれす・・)、悔やんでた矢先だったので、意外な近場(?)で観られることに喜んでしまったワタシ。

皆さん、そないには食指が動かぬのか、恐れてた“大混雑”とはほど遠い入り(=入場率)ではあった。ま、分かる人が観れば良いのでしょう(=^_^=)

芥川龍之介(not茶川)の小説『薮の中』『羅生門』を原作とした和製ミステリー。平安期の京都を舞台に、とある“事件”を巡って語られる「食い違う証言」を軸に、人間の抱える根源的な“自尊心”“虚栄心”“脆弱さ”“邪悪さ”などをあぶり出す。

上映時間=約90分、とその意外な短さにまず驚かされる。
最初に観た時は(確か学生時代だったろうか?)「内容って『薮の中』だけじゃん!」とストレートにツッコんでしまった覚えもあるが・・メインで描かれる“事件”を挟み込みつつ、前後を中心に『羅生門』をミックスさせた構成は、なかなかにしたたかながら自然で巧い!
半壊した「羅生門」の造型も素晴らしく、あの門が(今や)実存しない事実を知る我々としては「もはや映像遺産やん!」と評価せざるを得ない!

役者としては三船敏郎、京マチ子、森雅之、、志村喬、千秋実、加東大介、、とそうそうたる“クロサワ座俳優”の集結してた感(『七人の侍』も4人ほど入っておられますし(=^_^=))。

物語は、とある“事件”に関連する「樵(きこり:志村)」「盗賊・多襄丸(三船)」「武士の妻(京)」「武士自身(!)」の4人の口から“検非違使(けびいし:平安期における、京の治安維持を担った機関)の庭”にて語られるが、特に「武士自身」の語る“巫女”を介した証言に意外性があって面白い!
更にその後、“オフレコ扱い”でとある人物が“目撃した本当の顛末”を再び語ることとなる・・

“事件”そのものは「関山から山科へと向かう」森林の中で起こるので、ヴィジュアル的なインパクトにはかなり欠けるが、それを補うのが驟雨の降り続く、半分焼け落ちた「羅生門」の門の下である。この辺りのメリハリはイイ!

真相を巡って、観客自身が激しく揺さぶられる造りは、後年の『戦火の勇気(1996)』『ユージュアル・サスペクツ(1995)』にも影響を与えたっぽく思われ、終盤まで(現実世界で)ひたすらに雨の降り続く演出は『セヴン(1995)』を連想させてくれる。

正直、京マチ子さんの「スゴさ」が、中盤までは殆ど感じられなかったワタシだが(×_×)、後半に至って初めて「スゴいわ、こりゃ」と脱帽してしまった。例えるなら『情婦(1957)』におけるマレーネ・ディートリッヒさんみたいな感じか。

さて・・期待した「デジタル修復」に関してであるが「美麗!」と驚かされるのではなく「自然!」と言う静かな感動がまず前面に出たか。
特筆すべきは、登場人物の「肌に浮かんだ汗玉」や「薄ら脂がかった(額の)皮膚」などの鮮やかさの際立っていたことかな、と。また音響面でも(オリジナルに見受けられる)「ボソボソ感」の軽減が観られた。
(なお“キ※ガイ”と言うセリフもはっきり聞き取れました、、(⌒〜⌒ι))

事件そのものはまさしく“薮の中”なんだけど、その中でも「足跡」「遺体の発見場所」「傷口とその深さ」などを入念に調べたら・・ある程度は真実に近付けたような気はしたか。まぁ現場一帯は(事件)3日後の驟雨でかなり状況を変えられてしまってることでしょうが・・(×_×)

終盤で、いきなり“とある人物”が現れ、その人を巡る3者(樵、法師、下人)の善悪観が激突することとなるが・・それぞれの「憤り」や「諦観」なんかが、どれもグサリと観る者の心に刺さって来たりする。

最後の最後に雨が止み、そこに残された2人(?)の静かなやり取りが、(周囲が)静かであるが故に厳かで、清々しさをも感じさせてくれたのは良かった。

人が迷いつつも、何かを信じ行きてゆく・・それが叶ったからこそ、羅生門自体が朽ち果てても、日本人は戦乱の世&混沌の世を乗り越え、これまで生きながらえて来られたんじゃないかな?
・・などとお行儀の良いことを感じつつ、劇場を後にしたのだった・・

〜 こんなセリフもありました 〜

樵「分かんねぇ・・さっぱり分かんねぇ・・何が何だか分かんねぇ」
 「わしには、わし自身の心が分からねぇ」

法師「今日と言う今日は、人の心が信じられなくなりそうだ」
  「人間の命などは、朝露のようにはかないものです」
  「人間は・・弱いからこそ、嘘をつく」
  「人間がそんなに罪深いとは考えられない」
  「人が人を信じられなくなったら、この世は地獄だ!」
  「私は・・恥ずかしい事を言ってしまったようだな」

多襄丸「青葉を揺らす、あの風さえ吹かなければ・・あの男も殺されずに済んだものを」
   「出来れば“男を殺さずに女を奪おう”と思った」
   「これほど気性の激しい女は見たことがない」
   「この俺と20合も斬り結んだのは、天下にあの男だけだ」
   「未練がましく女を苛めるのは止せ」

武士の妻「2人の男に恥を見せるのは、死ぬより辛いわ」
    「何処へでも連れて行って下さい」 ←女の心変わりは恐ろしいのぉ、、
    「女の私に何が言えましょう」

下人「本当のことを言えねぇのが人間さ」
  「女って奴は、涙で自分自身すらも騙しちまうもんなのさ」
  「一体、正しい人間なんてものがいるのかい?」
  「この門に棲んでいた鬼さえ、人間の(やることの)恐ろしさに逃げ出したって話だぜ」
  「嘘だとことわって、嘘を言う奴はいないからな」
  「人の気持ちなんざ気にしてたら、キリがねぇや」

武士“これほど呪われた言葉が、かつて1度でも人間の口から出たことがあったろうか?”
  “その言葉だけでも、盗人の罪は赦されると思った”
  “何処かで誰かが泣いている・・”

※「今となってはこんな※より、あの葦毛(馬)を盗られる方が惜しい」
 「女は腰の太刀にかけて自分のものにするもんなんだ!」
 「何をする! この子の肌着まで剥ぐつもりか?!」

追記1:小説『羅生門』では「髪を盗む老婆」が“悪の象徴”とし登場したが、本作では「着物を盗む男」がその立場に置き換えられていた。
追記2:至近距離から顔に唾を吐きかけられるミフネさんにはびっくり(×_×)
追記3:「疑われること」に対する2通りの態度「嘘をつく」「黙り込む」がキャラにより明確に描き分けられていて面白い。「黙ってることは認めたってこと」とは、昔からワタシも家庭で(=^_^=)教えられたことだが(=^_^=) 今にして思えば「ちょっと違う」と考える。
澱みなく“反撃の言葉”を返して来る人間をこそ「おかしい」と批判したくなるこの頃だ。「黙する優しさ」や「黙する弱さ」はもっと評価されて良いと思う。

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コメント

こんばんは。
この作品、劇場で観た事ってないです。んで、気になってましたが、
気がついたら上映終わってたという感じでした。

京マチ子さんに関する
>『情婦(1957)』におけるマレーネ・ディートリッヒさんみたいな感じ
っていう所にめちゃ食い付いてしまいました。
「情婦」好きです。そして、あのマレーネ・ディートリッヒも。

京マチ子さんの狂気をおびた様な表情とおどろおどろしい暗い映像、
そんな印象しか残ってないんで、あらためて劇場で観てみたかった。
こちらに伺って、ますますそんな気に。
うーん、『高槻ロコ9プラス」ですかぁ。悩むなぁ。
それにしてもデジタル復刻版というもののおかげで、
思わぬ作品が再上映される機会が増えたのは嬉しいことですね。

投稿: ゆるり | 2009年2月15日 (日) 23時15分

ゆるりさん、ばんはです。

この週末は寛げましたか?

>この作品、劇場で観た事ってないです。んで、気になってましたが、
>気がついたら上映終わってたという感じでした。

昨日からだから、まだまだ間に合いますよ。
因みにJR高槻駅で下車すると「大失敗」ですので(×_×)
阪急高槻駅ですよ。

>>『情婦(1957)』におけるマレーネ・ディートリッヒさんみたいな
>感じっていう所にめちゃ食い付いてしまいました。
>「情婦」好きです。そして、あのマレーネ・ディートリッヒも。

あれはスゴかったですね。
ああ、アレもモノクロだったんだ(・ω・)
ビデオ鑑賞にも関わらず、終盤では身を乗り出してましたもん(=^_^=)

>京マチ子さんの狂気をおびた様な表情とおどろおどろしい暗い映像、
>そんな印象しか残ってないんで、あらためて劇場で観てみたかった。
>こちらに伺って、ますますそんな気に。

京マチ子さんの言動の前に、三船さんもタジタジでしたし、、

>うーん、『高槻ロコ9プラス」ですかぁ。悩むなぁ。

阪急高槻駅ですよ!(ええい、うるさい)(=^_^=)

>それにしてもデジタル復刻版というもののおかげで、
>思わぬ作品が再上映される機会が増えたのは嬉しいことですね。

ハナシは変わりますが、新聞で知ったのが
『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』
のデジタル復刻版の(間もなくの)上映です。気になる!

考えたら、冒険して名作をリメイク⇒失敗するより、
デジタル版にして「上映で稼ぐ」「ソフト化で稼ぐ」って方が、
手堅くて賢いやり方って気もします(・ω・)

映画業界全体として、それで良いのかどうかは分かりませんが・・

投稿: TiM3(管理人) | 2009年2月16日 (月) 00時41分

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