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2009年1月30日 (金)

☆『グッドナイト・スリイプタイト』を観た☆

※以下の記事は「映画評」ではなく「演劇評」です!

17日(土曜)の午後、西梅田にある“サンケイホールブリーゼ”にて、三谷幸喜脚本&演出による2人芝居『グッドナイト・スリイプタイト』を鑑賞した。
以前(07年5月)に同氏の作品『コンフィダント・絆』を観て以来、都合がつけば足を運んでいる(大阪公演に限るが、、)“三谷演劇”であるが(とは言え、他に舞台で観たのは『エキストラ(07年12月、於:京橋)』ぐらいだけど)今回も、観るまでは「2人芝居だし、冗長なだけでショボいんじゃないだろうか」と不安になってたら・・予想以上に良いデキで驚かされた。参りました(⌒〜⌒ι)

⇒なお『コンフィダント・絆』の鑑賞レビューは「2007年6月5日(火)」の記事を参照下さい。

未だに“映画監督・三谷幸喜”に対しては「余りよその畑に足を踏み入れん方がよろしいのとちゃいますやろか?」とアドバイスしたくなることも少なくないんだが、、人数を絞り切った世界に、男女の愛憎劇なんかを描かせたら、メチャメチャにうまい! 「舞台劇の執筆の才能」に関しては心底、尊敬いたします。

名もなき夫妻(中井貴一&戸田恵子)の邸宅にある“ベッドルーム”を舞台に、彼らの30年間の長きに渡る「夫婦感情の移ろい」を断片的に綴った小品。

ついに離婚を決意し、それぞれの荷物を整理する“最後の夜”の2人。
そんな中、夫の見つけ出した「小さな函(はこ)」は“3ケタの数字で開くダイヤル錠”でぴったりと閉ざされていた。
函の中には何が隠されているのか? そして2人はどのような経緯でその函に秘密をしまうことにしたのか?

中井さんはほぼ出ずっぱり、戸田さんは(退場するパターンの多い代わりに)お色直ししまくり、な印象があった。映画関係だと「中途半端なカリスマ性をちらつかせる悪党役←『陰陽師2(2003)』『亡国のイージス(2005)』『どろろ(2007)』」の多い(?)中井さんだが・・コミカルでちょっとエキセントリックな役柄を与えられたら、こんなにも輝かはるのか! と改めてその器(=懐)の深さに気付かされる。
一方で「若くて精神年齢も幼い頃」から「他人の助けをもはや必要としなくなった、熟年世代の女」までを1人で演じ切る(声も、姿勢も、総てを変えてみせる!)戸田さんの演技幅も負けじとスゴい。

基本的に、物語は「何かの“できごと”を控えた」「何かの“できごと”が進行中の」「何かの“できごと”を終えた」それぞれのベッドルーム内だけで進行するため、描かれない部分は彼ら夫婦のセリフから想像を膨らませないといけないんだが・・そこの「想像幅」の取り方が良いのだ。

⇒連想したのは映画『約三十の嘘(2004)』などだろうか(・ω・) あの作品も“本来描かれる筈のシーン”が敢えて描かれず、それが故に個性を放っていた☆

また、場合によりシーンが(暗転を経て)現在⇒過去⇒現在⇒・・と時間軸を置換し描かれる演出テクニックは、悔しいまでに効果を上げている。

舞台の右上には「電光掲示板」が表示され、(暗転から)新たなシーンの始まるごとにデジタルの“とある数字”が増えたり減ったりし観客に示される。
それが“どのような規則性を持った数字なのか?”と言うことは、それぞれのシーンにおける夫婦の言動(や容姿)を眺める内に、やがて気付かされるんだが、そんな所にも「分かる人は、分かった上で楽しんでね」といたずらっぽく(客席に)挑戦するような“三谷センス”がバッチリ光っていた。

「言うても、たった1つのロケーションやん」とナメてたら・・ベッドの距離が近付き始め、照明&効果音によって、ベッドルームは“新婚時代のタヒチのホテル”に時間&空間を瞬時に移動させたりもする!

2人の会話の中には“ペットのタロー”や“クニマサさん(←国松さん、かも知れません、、)”などの「後で次第に明らかとなって来る(場合もある)キャラ」を絶妙に配したり。

ナンセンスさの極まってるのは、彼ら夫婦自身が「舞台(ベッドルーム)が時間軸を行き来してること」にうすうす(?)勘付いてる点。そう言うぶっ飛んだ“超現実的な感覚”もスゴい!
タローが死んでしまい、その骨壺が部屋の隅(観客側)にちょこんと置かれてるんだが、舞台が暗転する(=時間移動を始める)寸前に、それが「パコン!」と(舞台)床に格納され、瞬時に消えてしまうのだ・・それも夫の見てる前で。
中井さんがそれを目にして「えええええ?!」と驚愕するシーンなどはかなり面白かった!

後半では、とある“浮気の証拠”を処理せんがため、夫はとっさに舞台から外に飛び出し、隠し場所を探すんだが・・“部屋の境界線”をまたぐ瞬間に、何やらモノ凄い電気ショックが全身に走るらしく「わぁぁぁぁ!!」とか(その度)激痛に身をくねらせたりもする。

本作を眺めて、改めて

・悲劇に喜劇の味付けをすると、この上ない「エンタテインメント」と化す
・夫婦2人だけの世界で、彼ら2人共が“事実”と捉えたことは・・実際にはそれが“間違い”だったとしても・・彼らの中で“事実”とし永遠に残って行くものである(←観客だけには“事実”が実際にどうであったかが明かされる)

なんてことを再認識させられた次第である。

ラストでは、再びベッドルームが過去へ飛び「小さな函」のシーンが描かれる。
ここで舞台が幕となる訳で・・こう言う構成だと、ラストシーンは“ハッピーエンド”にも映るんだから面白い。

「絶頂期をそのラストシーンに配した、(晩年は悲劇的だった)誰か有名人の自伝映画」を観たような感もあり、本来は切なさを感じなければならぬ筈の(?)ラストにも、妙に爽快さを覚えてしまうワタシだった。

少人数に絞り切った“三谷演劇”・・これからも眼が離せなくなりそうである(・ω・)

追記1:「グッドナイト・スリイプタイト(Good Night Sleep Tight)」は“ぐっすりお休み”を意味する慣用句らしい。
追記2:“ぐっすり”は「Good Sleep」から派生した、なる“三谷説”もチラリ(←彼も親類(?)から聞いた、と言うことだが・・)
追記3:(職業が)作曲家である夫による「コスモ保険」のCMソングはなかなかにインパクトがある! どうやらこの「コスモ保険」は“(今はなき)奈良ドリ※ムラ※ドの公式スポンサー”だったそうだ(⌒〜⌒ι)
追記4:舞台で倒立⇒前後開脚・・を披露された戸田さん。そのサービスぶりには客席もどよめいてますた(=^_^=)
追記5:妻の職業が「ミュージカル女優」「ペットシッター」「英会話教室経営者」「美術商」と思いつきっぽくもクルクル変わって行くのは面白い。
戸田さんの放った「(安藤)広重に200万出せる人間なら、300万だって出せるわよ」のセリフは言い得て妙であった(=^_^=)

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