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2008年12月28日 (日)

☆『まあだだよ(1993)』☆

25日(木曜)の夜、衛星第2で放送されたものを鑑賞。

以前に“何気なく”TV鑑賞した覚えはあり、その時は「まったりしてるなぁ〜」と感じたに過ぎなかったが・・今回は流石に「今春から放送されて来た“没後10年・黒澤明特集〜全30作放送〜”のラストを飾る、監督の“文字通り”最後の作品」ってことで、確かに感慨深いモノがあった。

作家・内田百閒(1889-1971)の教師(=法政大学のドイツ語教授)生活引退後の半生(1943〜)を、かつての教え子らとの心温まる交流の日々を軸に描いた佳作ドラマ。
その作品(随筆など)で取り上げられた幾つかのエピソードを、軽妙に描いた造りなのだが、特に中盤以降で40〜50分ほどの時間を割いて丁寧に演出される“愛猫ノラを巡るハナシ”がとても良かった。

これはウィキペディアからの情報(の鵜呑み)で恐縮なのだが・・還暦の翌年から、門下生や主治医(=^_^=)らを集め毎年盛大に開催された誕生会「摩阿陀會(まあだかい)」は実在した集まりだそうだ。「ノラ(←野良猫からの命名)」「クルツ(←短い尾からの命名、Kurzは独語で“短い”の意)」なる飼い猫2匹の名もまた然り。

「私もどうやら、書いたものが売れるようになった」と意気軒昂に文壇に殴り込みをかけた(?)百閒(松村達雄)であるが、狙い通りの裕福な生活は実現しなかったようで、劇中では空襲で自宅は焼け落ちるわ、続いて住んだのがまさにアバラ屋だわ、となかなか波乱の作家人生だったようにも。。

アクションシーンを期待しても仕方のない(=^_^=)本作。
作家と教え子の織りなすドラマもむろん微笑ましいが、やはり秀逸なのは妻(香川京子)とのやり取りであろう。

馴れ初めは一切描かれないし、性的なシーンなぞ微塵も演出されないんだが、寄り添う2人の「オイ」「ハイハイ」な“つうかあの雰囲気”が素晴らしい。
(一見“亭主関白”に見えるんだが、当然ながら奥さんの方が“1枚も2枚も上手”なのだ(=^_^=))

また、普段は飄々としてて、毒舌で、ふざけてばかりで、掴みにくい性格の百閒なんだが「2シーンだけ」寡黙で弱虫な“素(す)”の彼が拝める所はメリハリが非常に効いていて良い!

・自宅で雷に襲われた時
・ノラがいなくなった時

ワタシも年を取ってしまったか・・後者(ノラ騒動)における百閒の憔悴し切った、女々しくも痛々しい様子には、ついウルウルと来てしまった(×_×)

後年には恐らく語り継がれぬであろう(文豪の周りの)凡な(←ある意味、名もなき)人々(妻や教え子)が・・実に、表面的な彼(百閒)の明るさの裏(=実像)を知る希有な存在だった・・ってな脚本は巧いし、徹底して客観的に描かれ続けた彼の内面(心中)に「最後の最後」に至ってようやく大胆に切り込む“あの映像演出”にも技巧的に感心させられるトコロがある。

ふと思ったのは、

・所ジョージ演じた“活気あるサラリーマン”の役を、若き日の植木等がやってたら、それはそれでパワフルだったろうし面白かったやろな〜。
・第1回「摩阿陀會」の冒頭、百閒が巨大ジョッキでビールを一気飲みする演出は「長回し(カット&映像切替なし)」で見せて欲しかったな〜。

ってトコかな。

にしてもあの“一気”は、その恐ろしさを知ってるワタシにはかなりの緊迫感を与えてくれた。。今のご時世では、ホントのところ「ちと配慮すべき表現」と言えるかも知れませんな・・(・ω・)

〜 こんなセリフもありました 〜

百閒「文士なんてそんなもんさ」
  “世の中に、人の来るこそ嬉しけれ、とは言うものの、お前ではなし” ←内田邸玄関の一首
  「こりゃまさに“干天の慈雨”だ」
  「人間生きてると、色々と持ち物が増えて困るよ」
  「昔の歌はいいねぇ・・私は昔の歌が大好きだ」
  「おいおい、そんな話は困るよ」
  「威張ってる重役は、じゅうえき(重役)にかけなければならない」
  「ここはまさに“金殿玉楼”だよ」
  「我ながら名案だと思うよ」
  「みんな、自分が本当に好きなもの、大切なものを見つけ、そのもののために努力しなさい。
   君たちはその時、努力したい何かを持っている筈だから」

教え子A「しかし先生、どうしてあんなに・・」
教え子B「先生は、感受性も想像力も俺たちとは違うんだ」

教え子A「良く眠ってる・・夢を見てるらしいよ、でも先生はどんな夢を見るのかなぁ」
教え子B「夢も“金無垢”だよ、きっと」

妻「主人のステッキを・・」

教え子「短いから祝辞だ。長いと弔辞になる」

追記1:戦後の焼け野原ぽいシーンは『素晴らしき日曜日(1947)』の終盤を想起させてくれる。
追記2:「女性の描き方を忘れはったんでは?」と心配になってしまった『影武者(1980)』鑑賞以降のクロサワ作品だったが、本作は「描き過ぎず、かと言って足りない訳でもなく」巧いと感じた。まさに“クロサワ印ドラマの総決算”な1本と言えよう(念のためも1回書いときますが(=^_^=)・・アクションシーンはないッスよ!)。

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