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2008年12月10日 (水)

☆『デルス・ウザーラ(1975)』☆

6日(土曜)の夜、衛星第2で放送されたクロサワ映画『デルス・ウザーラ』を観た。
青年期、その原作(探検記)を読み肝銘を受けた黒澤明が、助監督時代から映画化に向け構想を温め続けていた、とされるロシアもの。

初のカラー作品でもあった前作『どですかでん(1970)』がいわゆる“大ゴケ”し、邦画界においてかなりな苦境に立たされた彼に手を差し伸べたのが当時のソ連政府だった、と言うのは皮肉ながらも素晴らしい偶然だったように思う。

【序】
1910年、シベリア・コルフォフスカヤの開拓地。「3年前に埋めた、友人の墓」を探し、1人の男がここへやって来た。が、開拓の中で周辺の樹々は総て伐採されてしまっていた・・

【第1部】
1902年。地誌的研究のためウスリー地方にやって来た、ウラジミール・アルセーニエフ隊長率いる探査隊は、ある夜野営地に独りやって来たゴリド人の猟師=デルス・ウザーラに案内役を乞う。小柄で、ロシア語も決して流暢ではないこの男は、時に隊員たちの嘲笑を買ってしまう。
だが、デルスの言動の総ては、隊を、そしてアルセーニエフの生命を救うこととなる。
いつしか彼は、旅の中でこの小柄な猟師に尊敬の念を抱くようになる。

やがて最終目的地である、ハンカ湖周辺の探索が完了。
隊は解散、アルセーニエフも故郷ウラジオストクへ帰郷することとなる。
彼はこの“偉大なる友人”に「来ないか?」と誘うも、デルスはその申し出を断り、ただ1人森の中へと戻ってゆくのだった。

【第2部】
1907年。日露戦争が終結し、ウスリー地方の探査が再開される。
ある日、隊は密林で「ゴリド人の猟師を見た」と言う情報を得る。
懐かしさも手伝い、霧がかった深い森の中、旧友の名を呼び駆け出すアルセーニエフ隊長。そして・・それに応える「カピタン(隊長)!」の声・・
再会した2人は、もう一度デルスを隊の案内役に、旅を続けることとなる。

濁流を渡るトラブルなどを経て、更に結束を強めたかに見えた一行とデルス。
だがある日、彼は“カニガ(=森の精霊)の使い”とされる虎(アンバ)を威嚇するつもりが、誤って銃撃してしまう・・
走り去った虎の背に「わしは、何てことをした・・」と衝撃を受けるデルス。

やがて、デルス自身に大きな変調が起こる。
その身を案じたアルセーニエフは、彼を説得し、故郷ウラジオストクへと連れ帰るのだが・・それが大きな悲劇に繋がってしまうことに、アルセーニエフは気付いていなかった・・

果たして黒澤監督おん自らがメガホンを執るべき作品だったのかどうか・・ちょっと評価の難しいトコロはあるも、デルスと言う人間の魅力に溢れる1作、と言う事実にかわりはなく、退屈もせずイッキに2時間20分ほどを観た☆

私的には“冒険篇”とも言うべき【第1部】がかなり気に入った! こちらだけだと約80分程度だったと思うが、【第2部】に突入し、ドラマの流れの萎んで行ってしまう展開ともなるので「オープニング(1910年)へと繋げ、帰結させる構成」としては必要だったのだろうが、ちょっと盛り下がってしまった感は否めない(×_×)

シベリアの大自然において“サバイバル術の天才”と思われたデルスも、街に来ると「猟で得た大金は騙し取られ」たり「庭でテントはダメ、猟銃の携行はダメ、なる条例に凹まされ」たりして、実に生き辛そうであった。。

野に住む人間を都会(?)に住まわせ、快適な文明のただ中に身を置かせ、それで良いのか? と言うと決してそうではなく、却ってその者の命を縮めるだけではないのか? とか、色々と考えさせられもする。

作品的に至極まじめに作られてるこの映画であるが、唯一「??」と良く分かんなかったのは、【第2部】の半ば、隊長の眠るテントの壁(布地)に、ハッキリと映し出された「虎の動く影」であった・・!
アルセーニエフがテントを飛び出し、虎(の影)が走り去った方向に駆け付けると・・虎の姿などはなく、ただ幻影に怯えるデルスが、彼のテントの中で錯乱(?)してるような展開となるんだが、誰がどう観ても、あのシーンでは「第3者(=観客)に虎の姿を見せてる」訳で、アレが概念的なものだったのか、それとも怪現象なのか、ハッキリ言って良く分かんなかった。
あのシーンだけはある意味“ホラー的”であり、思い出すに「ゾッとしてしまう」演出でもあった。。

〜 こんなセリフもありました 〜

アルセーニエフ“自然は我々にその魅力や、時として陰惨さも見せる”
       “私は驚くべき洞察力と美しい心を持つこの男に驚嘆した”
       “自然の中で、人間は余りにも小さい”
       “彼との再会を思うと、胸は高鳴った”
       “思えばこの出来事が、次に起こる悲劇の予告だった”

デルス「撃つな、わし、人間!」
   「兵隊がやって来て、獲物を撃つから、わし、喰えない」
   「家族、天然痘で、みな死んだ」
   「お前たち(=探査隊)、子供と同じ、何も見えてない、1人で山に住んだら、すぐ死ぬ」
   「鳥、鳴き始めた、雨、すぐ止む」
   「あの人(=太陽)一番偉いが、死ぬ、我々も、みな死ぬ」
   「火、水、風、みな怒ると怖い」
   「わし(ビンを吊り下げた)ヒモ、撃つ、そしたら(落ちた)ビン、わしに呉れるか?」
   「若い人、つま先で、老人、かかとで歩く」
   「すぐ、(ここから)戻るか? わし、少し心配」
   「風、(わしらの)足跡を消す、戻ろう」
   「ここ、通ってない、違う!」
   「夜、来ると、わしら終わり」
   「たくさん草を刈る、刈らないと、わしら2人、死ぬ」
   「急げ、休むな!」
   「一緒に働いた、だから礼、要らない」 ←このセリフはイイ!
   「わし、クロテン探す、金も食物も、要らない」
   「ここに来る中国人、獣を無駄に殺す、悪い」
   「撃たれた虎、死ぬまで走る」
   「わしの鼻、眼より良く見える」
   「わし、何故、当たらない?」
   「わし、どうやって、これから生きる?」
   「この人、言葉、正しく話す」 ←蓄音機に
   「なぜ、水に、金を払う?」
   「どうして人、(窮屈な)箱の中(=家)にいられるか?」
   「街ではテントもだめ、銃を撃つのもだめ・・わし、息が詰まる」
   「わし、街、いる、苦しい・・街、出る」

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コメント

こんばんは。

つい先日、アメリカで制作されたドキュメンタリー『KUROSAWA』をビデオで見まして、その中で、黒澤作品の名スクリプターである野上さんが「撮影で最も(物理的に)しんどかったのは『七人の侍』ですが、(物理的+精神的に最も)しんどかったのは『デルス・・・』だった」と語っておられたのが印象に残っています。

『デルス・・・』は黒澤監督の自殺未遂事件後初の監督作品だったようですね。
それだけに、監督に、「再起をかける」といいますか、「もうこの作品で自分自身を世に示すしかないのだ」という追い詰められた精神状態が満ちていたようで、それはやはり製作現場に自ずと伝わっていたようで・・・。

本レヴューも大変興味深かったです。
殆どの黒澤作品を鑑賞されたTiM3さんならではの地に足の付いた御感想と拝読しました。

また、自国以外で、しかも監督降板云々の事件もあったアメリカで、(名だたる俳優達も出演するような)骨太のドキュメンタリーを組まれる黒澤監督って「本当に凄い監督だったのだなぁ」と改めて思った次第です。

投稿: ぺろんぱ | 2008年12月10日 (水) 22時22分

ぺろんぱさん、ばんはです。

今宵は酔ってしまってヘロヘロです(×_×)
まだ金曜じゃ、ないんやね〜。

>つい先日、アメリカで制作されたドキュメンタリー
>『KUROSAWA』をビデオで見まして、

(本来、それを製作すべき)日本は先を越されてしまったんでしょうかね、情けなや・・

>その中で、黒澤作品の名スクリプターである野上さんが「撮影で最も(物理的に)しんどかったのは『七人の侍』ですが、
>(物理的+精神的に最も)しんどかったのは『デルス・・・』だった」
>と語っておられたのが印象に残っています。

『七人〜』は資金難が、一番大きかったんじゃないかな、と解釈してます。でも「俳優が揃い、脚本家が集い、気力が充実してた頃の黒澤」でしたでしょうから、大した難局ではなかったんかもな〜と。

>『デルス・・・』は黒澤監督の自殺未遂事件後初の監督作品だったようですね。

そうなんですよね、、

>それだけに、監督に、「再起をかける」といいますか、
>「もうこの作品で自分自身を世に示すしかないのだ」という
>追い詰められた精神状態が満ちていたようで、
>それはやはり製作現場に自ずと伝わっていたようで・・・。

現地(ロシア)入りした日本人スタッフは、監督を含め「わずか5人」だったと紹介されてました。

でも、ですね。
そんな焦りが画面に微塵もにじみ出てなかったのは流石でした。

普通「追い詰められた状態で撮る」と、映像的/演出的に「どっかすべってる」もんなんですよね。
観る分には極めて「淡々と進んでた」展開は、なかなかのものでした。

>殆どの黒澤作品を鑑賞されたTiM3さんならではの
>地に足の付いた御感想と拝読しました。

監督が耳にしたら、虎(アンバ)を差し向けられるかも知れませんが、、

>骨太のドキュメンタリーを組まれる黒澤監督って
>「本当に凄い監督だったのだなぁ」と改めて思った次第です。

これは偏った意見かも知れませんが・・こと「モノクロ時代」のクロサワは「無敵」だったように思います。

投稿: TiM3(管理人) | 2008年12月11日 (木) 01時03分

懐かしい映画です。

実は良かったという印象はないんですが.....
> そして・・それに応える「カピタン(隊長)!」の声・・
この「カピタン!」の声が今でも心に残っています。

私はこの映画を観たとき、二部でかなり眠っていたような思い出があります。しんどかった。

投稿: west32 | 2008年12月11日 (木) 21時48分

west32さん、ばんはです。

>懐かしい映画です。
>実は良かったという印象はないんですが.....

ダイナミックなクロサワ作品を期待して観に行った方は「??」
って感じだったでしょうね。

>この「カピタン!」の声が今でも心に残っています。

カピバラ探偵・・の意味では、少なくともないんでしょうね(=^_^=)

>私はこの映画を観たとき、
>二部でかなり眠っていたような思い出があります。しんどかった。

そうでしょうね・・(・ω・)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年12月11日 (木) 23時20分

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