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2008年9月21日 (日)

☆『おくりびと』☆

21日(日曜)の午後、大阪市内へ繰り出し新作邦画『おくりびと』を観て来た☆ 劇場は“なんばパークスシネマ”。
とにかく駅から歩かねばならず、私的には「平日夜にチョイスする可能性の極めて低いシネコン」でもある。

「葬儀関係の仕事に奮闘する主人公のドラマ」ぐらいしか前知識はなかったが、世間的には結構評判が良いらしく、シアター内も混んでたし、何より(観客の)年齢層が高めなのが印象的だった。

・・で、観終わって感じたのは「ワタシの中で、今年ナンバー1の邦画となるかも!」ってことだ。

どうにも物語とかタイトルなどが“地味”な印象なので、CMや特番をがんがんやって集客を狙う、ちぅタイプの作品ではないように感じるんだが、宣伝が地味であろうとも、その分どんどん“クチコミ”でヒットして欲しい1作だし、そのために拙ブログが少しなりと「訪問者さんの食指を動かす存在」となれたら良いな、と願う次第だ(・ω・)>

プロのチェロ奏者を目指し「一緒に世界各地を演奏旅行しよう!」をプロポーズの言葉に、美香(広末涼子)を妻とした主人公=小林大悟(本木雅弘)。
だがある日、曽根崎オーナーの「解散します・・!」のひと言(&一礼)により楽団は突然に“死”を迎えてしまう。
大悟の手元に残ったのは、借金して買った“1800万の高級チェロ”のみ・・
自身の奏者としてのレベルが限界(=ソロでは食べて行けない)であることを悟った彼は、妻と共に故郷・山形へ戻る。

そんなある日、新聞で「高給保証」「未経験者歓迎」などの文句が踊る“NKエージェント”なる会社の正社員募集広告を目にした大悟は“安らかな旅のお手伝い”の事業説明コピーに「旅行代理店だろうか?」と疑問を感じつつ、面接に向かう。
彼の差し出した履歴書に殆ど目も通さず「採用!」と言い放ったのは同社々長=佐々木(山崎努)。

何やら過去ありげな事務員=上村(余貴美子)と3人での運営となった“NKエージェント”だが、その業務内容は・・「納棺(NK)」であった。
様々な“年齢層”で、様々な“境遇”を経て亡くなった人々を“おくる”納棺師の仕事をこなしてゆく大悟。

そんなある日、彼の仕事を知ってしまった美香は「そんな恥ずかしく、汚らわしい仕事は辞めて!」と夫に切り出すのだった・・

序盤こそ「おっかなびっくり」で観始めた(俺だけ?)観客に「意外なツボ」で笑いを提供してくれる流れだが、次第に取り扱う“おくられびと”たちの境遇が大悟自身の人生に密接に関わって来る構成がなかなか。
幾つかのケースで「(亡くなった当人に)反発する人間」「(納棺師を)歓迎しない人間」などをまず配しておき、そんな彼らが“納棺の儀”を眼にする事で「変わって行く」展開に持って行くんだが・・ここで

「反発していた人間(=代表的なご遺族の1人)が、棺のふたが閉まろう、とする寸前に泣き崩れるシーン」

があり、そのうちの2シーンでは泣けて泣けて仕方なかった。珍しく「へぐっ」だか「ぐすくっ」だかの嗚咽が漏れてしまったし・・情けなや(⌒〜⌒ι)

「舞台が山形県であり、庄内弁が飛び交う」「割と贅沢に(?)庄内地方の四季が描写される」「主人公らの食事シーンが意図的に盛り込まれる」ってポイントに、何処となく“藤沢周平作品へのオマージュ”が見え隠れしてたようにも妄想するワタシ。
ま、あちゃらは時代劇なので、根本的には全く違うんだけどネ。。

主人公が「その筋では新人」と言いつつ、流石に「もはや青臭い若者とも言えん年齢」・・ってことで、ある程度の「成長シーンの割愛」が入ってたのは小気味良かった。

「深夜の電話で呼び出され、駅前のホテルで首吊り自死した客を“おくる”」ってな仕事などは「うげ〜、それをいちいち描くの?」と不安にかられてたら・・翌朝にシーンが切り替わり、大悟が佐々木&上村に「無我夢中でやりました」と報告するに演出がとどめられてて「よっしゃ!」と思わず喝采を送りたくなったり(=^_^=)

物語のあちこち(特に中盤まで)に「職業差別?」と思わせるような言動が、主人公の周囲で描かれたのは少し重かったか・・結局そこには余り踏み込まれぬまま、残りの物語が無難に(?)進行したようでもあった。確かに、微妙な問題やしね、、

まぁ、何はともあれ「いま、生きている人」「いつか、死ぬ人」(=^_^=)はなかなかに必見かと!

〜 こんなトコロにも注目したり 〜

・1つの“只の石ころ”が父から子、そして孫へと受け継がれることだってある
・孤独死して2週間が経ち、ようやく発見された老婆。『デスペラード(1995)』に登場した“世界一汚いトイレ”に対抗し得る“映画史一汚い、腐乱遺体の眠る日本家屋”が拝める(やめんかい!)
・劇中で製作された「良く分かる“納棺の儀”解説DVD(業務用)」をDVDソフト発売時「ボックス版」に特典として付属すべし!(=^_^=)
・「鮭が故郷の川を遡上する」ってなシーンは映画史の中でも珍しい映像かと!
・どうやら棺のフタは「重い!」らしい(・ω・)
・同じ脚本をベースとした“山田洋次監督ヴァージョン”と“故・伊丹十三監督ヴァージョン”が観てみたいものだ(・ω・) ←無理!
・かつて『天国と地獄(1963)』で“究極の悪”を力演した山崎努氏も今や老境に・・
・一度は実家へ去った美香が、ひょっこりと戻る後半。あそこにも「“1人の人間”が家族を繋ぐ」ってドラマが底辺にあった
・『ねらわれた学園(1981)』で“学園を狙ってた(←まんまや!)”峰岸徹さんも、だいぶ老けはりましたねぇ・・
・「米沢牛サーロインのすき焼き」「河豚(フグ)の白子の塩焼き」・・うーん、美味しそう(・ω・)
・井戸水を汲み、薪で沸かしたお風呂は“熱いが(肌には)チクつかない”らしい
・美香さんの“ウェブデザイナー”としての手腕は未知数なままだった(=^_^=)?

〜 こんなセリフもありました 〜

大悟「子供の頃に感じた冬は、こんなに寒くなかった」
  「色んな意味で、このチェロは僕には重過ぎた」
  「・・付いてるんです・・“アレ”が」
  「それまで夢だと信じていたものは、夢ではなかった(=重い現実だった)」
  「人生最後の買い物(=棺)は・・他人が決めるのだ」
  「僕は一体、何を試されているのだろう?」

佐々木社長「大丈夫、大丈夫」
     「サボテン・・咲いたなぁ」
     「練炭自殺だな・・(遺体が)傷んでいない」
     「・・やってみるかい?」
     「ちゃんと(遺体の両足を)持て!!」
     「生き物は生き物を喰って、生きている」
     「同じ喰うなら・・旨い方がいい」
     「これが旨いんだ・・困ったことに」
     「君の“天職”だ」

上村「左の(棺)は合板、右の(棺)は総檜。燃え方も灰も、おんなじだけどね」

※「お前ら“死んだ人間”で喰ってんだろ?」
 「あいつ・・今迄で一番奇麗でした」
 「ありがとう・・また逢おうの」
 「死は・・“門”だ」

大悟「ここをたまたま通ったんですか?」
佐々木「偶然じゃない・・運命だ」

追記1:物欲にどっぷり浸かってるワタシなどは「買う」「遊ぶ」が人生の醍醐味だと思ってるんだが、、「喰う」「話す」こそが正しく“生きる”ために本当に必要な要素なのかも・・
追記2:本木雅弘氏。今や「監督」「作品(脚本)」を“自由に選ぶ権利のある”希少な存在の“ホンマもんの俳優”であろう・・と思わせてくれる。“邦画界の至宝”的存在に近付いている気すらする・・

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コメント

さっきぺろんぱさんのところでも書いたけど、お二人ともこの映画良かったとのことなんで、今月映画館に行っていない私の観るリストに入れました。
でもメジャー系だからドサ廻りでどこか田舎の映画館で見るのも面白そうな気がします。
ありがとうございました。
TiM3さんの言葉に乗りましたよ。

投稿: west32 | 2008年9月21日 (日) 23時10分

west32さん、今晩はです。

さっきまで『YAMATO』の終盤のみを観てて、またも余貴美子さんに泣かされました(⌒〜⌒ι)

こう涙もろくなっては、とても“おくりびと”はつとまりますまいて。。

>今月映画館に行っていない私の観るリストに入れました。

それは有難うございます。
笑って泣ける、邦画ならではの醍醐味とパワーを感じ取って下されば幸いです。
(ってお前はスタッフかい!(=^_^=))

west32さんの心にも「何か」が残ると良いですね。

投稿: TiM3(管理人) | 2008年9月21日 (日) 23時49分

こんばんは。
観てよかったです・・・いつかは「おくられびと」となる身としても「覚悟」の準備にはなったかと。
作品としては深かったですね。

詳細に描くところとそうでないところの取捨選択。
緊急事態勃発の深夜・・・あそこでアレを詳細に描いていたら方向性や作品世界ががらりと変わってしまってでしょうね。私もあの描き方でホッとしました。
仰る通り、微妙な問題に付いても限りない言及は避けておられたのも、監督としての“在り方”と思いました。
しかしそういう点にも触れて記述されるところ、流石はTiM3さんと思いました。監督としては実は全く無視して欲しくはなかったところかもしれないな、と思いますので。

>“映画史一汚い、腐乱遺体の眠る日本家屋”

そうですね。
あの後お風呂に飛び込む大悟さんせしたが、服(繊維)も結構匂いの吸着度は高いと思いますので、着替えを渡して上げたかった私です×××。
(深い内容のこの長い貴レヴューの中でココに喰い付くか?!私! (^_^;))

>“邦画界の至宝”的存在に

次回作に大いに期待したいです。(*^_^*)

投稿: ぺろんぱ | 2008年9月22日 (月) 20時17分

ぺろんぱさん、ばんはです。

同日、同作鑑賞、とは何だか嬉しいですね。
あと1つ「同劇場」が欲すかった。。

>観てよかったです・・・いつかは「おくられびと」となる身
>としても「覚悟」の準備にはなったかと。

孤独死はやはり悲しいですね。
尤も死んでしまった当人にとっては、その後、自らの遺体がどんな運命を辿ろうが、分かんないのでしょうが、、

>緊急事態勃発の深夜・・・あそこでアレを詳細に描いていたら
>方向性や作品世界ががらりと変わってしまってでしょうね。
>私もあの描き方でホッとしました。

撮影自体はされてたんじゃないかな? と妄想。
DVD化の曉には、特典映像として収録されるかも、、

>しかしそういう点にも触れて記述されるところ、流石はTiM3さん
>と思いました。監督としては実は全く無視して欲しくはなかった
>ところかもしれないな、と思いますので。

大きなメディアほど、コメントを避ける部分かも知れませんね。
とにかく、ざらっと苦い印象です。

>あの後お風呂に飛び込む大悟さんせしたが、服(繊維)も結構匂い
>の吸着度は高いと思いますので、着替えを渡して上げたかった私です×××。

あそこだけは美香さんの食い付き(嗅覚)が甘かったですね(⌒〜⌒ι)

>次回作に大いに期待したいです。(*^_^*)

作品としてはかなり描きにくいでしょうが、いつか藤田嗣治画伯(レオナールフジタ)の自伝的映画に主演して欲しかったりしますね、私的には。

投稿: TiM3(管理人) | 2008年9月23日 (火) 00時38分

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