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2008年9月 4日 (木)

☆『蜘蛛巣城(1957)』☆

2日(火曜)の夜、衛星第2で放送されたモノを鑑賞。
昨夜は地上波初放送だった邦画『嫌われ松子の一生(2006)』を楽しみに観始めたものの、、序盤わずか30分で“緊急報道特番”により中断されたままに終わってしまい、フラストレーションも溜まってたが・・今夜(本作を観て)ようやく溜飲の下がった気がした(・ω・)

黒澤明監督がシェークスピア悲劇『マクベス』の舞台を日本の戦国時代に置き換え、再構築したファンタジー(?)作品。
日本の伝統美を愛してやまなかった黒澤の作り上げた“能楽+幽玄”の和風テイストが存分に味わえる1作と言える。

冒頭、とある山麓の霧の中に佇む記念碑が映し出される。その木肌には「蜘蛛巣城址」の文字が読み取れる・・
そう、かつてこの地には、山腹にその巨躯を横たえる「蜘蛛巣城」と呼ばれた城があったのだ。

2人の武将、鷲津武時(わしづたけとき:三船敏郎)と三木義明(みきよしあき:千秋実)が領内で起こった謀反を見事制圧し、大殿(=主君)に報告すべく馬を駆っている。その途中、2人は霧がかった深い「蜘蛛手ノ森」に迷い込み“もののけ(物の怪)”と思しき老婆に遭遇する。
その老婆が言うには「鷲津と三木はこたびの武勲で出世、殊(こと)に鷲津はいずれ“蜘蛛巣城”の城主となる」とのこと。

「大殿を討ち、わしが城主となるなど有り得んこと」と当初は予言に耳を貸さなかった鷲津だが「蜘蛛巣城」へ辿り着き(老婆の言葉通り)「北ノ館(たち)」の主(あるじ)に出世したことで、自らの心に“ざわめき”の起こるのを抑えることは出来なかった。

妻である浅茅(山田五十鈴)が鷲津を巧妙にそそのかす・・「いざ大殿を討て!」と。そんなことは出来ん、とその意見を一蹴しようとした彼だが、最後にはとうとう主君を討ち果たし、予言通り「蜘蛛巣城」の主の座におさまるのだった。

そして、老婆のもう1つの予言に「三木の嫡男・義照が、鷲津を継ぎ蜘蛛巣城の城主となる」なるものがあったが、浅茅は「三木の世継ぎのための反逆だった訳ではありませんぞ!」と言い切り、自らの懐妊(!)を伝えるとともに「義照を養子に迎えさせる」と言う元々の鷲津の気持ちを翻させたのだった。

主君を討ち、次には幼き頃からの強敵(とも)・三木にまで血塗られた刃を向ける鷲津。次第に狂気に蝕まれてゆく彼に「老婆の予言には続きがあったこと」にまで気を回す余裕はなく、そして自身もまた壮絶な死を迎えることになろうとは、その時の鷲津には思いもよらぬ事であった・・

とにかく終盤、逃げ惑う三船(鷲津役)に向かって大量の矢がびゅんびゅん飛んで来るシーンが凄まじい! CGやトリックなど有り得ない時代の映画なので、(弓道の)プロが狙ってたとは言え、その緊迫感はまさしく本物!
『HERO/英雄(2002)』で描かれた“無数の矢が飛んで来る”映像演出でさえ叶わない。だってあんなの・・CGだもん(・ω・)
終盤の三船の表情が“まじに恐怖に歪んでる”のはある種「ドッキリ」的な撮影進行だったんかもな〜と妄想したり。
このシーンの(撮影)終了直後、三船が黒澤監督に殴り掛かりつつ「俺を殺す気か!」と叫んだと言うエピソードも耳にしたことがあり、あながち「ガセネタ」にも思えない説得力が、確かにこのラストシーンにはある。。

意外とセリフが少なめなのも好感度が高く、以前に我が国の首相をされてたとある方(誰?)のように、短い言葉を声高に叫ぶパターンが多いのは、実に耳に心地よかったし(=^_^=)

「開門!」「逆賊!」「物の怪!」う〜ん、分かり易い☆

反対に長々としたセリフが語られるシーンは、何だか良く聞き取れず、そこは至極残念に感じられた。

終盤の“映画史に残るべきその名シーン”を観客に叩き付けんがため、次第に(緊迫感の)高められてゆく構成もなかなか良いが、私的には以下の「惜しいなぁ」と感じる点もあるにはあった。
ま、今だからこそ冷静にこんな評価が出来るんだろうけど・・きっと当時、劇場の大スクリーンで本作を(予備知識なしに)見せられた日にゃ、衝撃で自身も森の中を走り回ったことだろう(←いや、何処の森やねんな)

・大殿を討ち果たすまででちょうど半分・・と贅沢な時間配分をしているが、も少し前半を短くしても良かったか
・鷲津と三木が「ゆるりと語る」シーンが結局挿入されず、も少し「(友情の崩壊と言う)悲劇性を高める工夫」があっても良かったのでは
・「蜘蛛巣城」そのものの造形を楽しみたかったが、城全体がどうにも“安普請”な印象であり、天守閣も近くから殆ど映されなかったのが残念
・「蜘蛛手ノ森」が1つのポイントとなるロケーションだが・・「迷い込んだ森」と「動き迫る森」の印象がどうも一致せず「別々の場所ではなかったんか?」と言う違和感が残った
・強烈な存在感を放ってた奥方=浅茅が後半すぐ「本筋から離脱」してしまった感があり惜しかった

~ こんな武士(もののふ)トークなどもありました ~

鷲津「戯(ざ)れ言も程々にせい!」
  「主君を討つは大逆ぞ!」
  「大逆を犯して何と面目を保つ?」
  「その友義(ゆうぎ)には報いなければならぬ」
  「出あえい、物の怪!」
  「戦(いくさ)は、最後に勝つ者の勝利ぞ!」
  「何につけ色を失う腑抜け大将め!」

三木「夢は愚欲の現れと申すからな」
  「いずれ、ゆるりと話そう」
  「血も流さず屍(かばね)も積まず、一國を我がものに」

浅茅「(謀反の)お覚悟は定まりました?」
  「弓を執るのを望まぬ者が?」
  「功名の為ならば、親が子を、子が親を殺さねばならぬ世の中です」
  「大望を抱いてこそ男子!」
  「私は三木様のお世継ぎの為に、この手を血で汚したのでは御座居ません」
  「思わぬ事に座興が過ぎあい済みません・・今宵はこれにてお引き取り下さい」
  「幾ら洗っても何故消えないんだかねぇ・・どうして奇麗にならないのかねぇ・・この手は。
   手に染み付いて取れやしない、洗っても洗っても・・」

追記1:鷲津の奥方=浅茅(あさぢ)を静かに演じた山田五十鈴さんのエキセントリックさが光る! 夫が色を作(な)し自論を肯定しようとするのを、静かに「私はそうは思いませぬ」とひと言。どんな暴君でさえ「キャイン!キャイン!」状態ですわな(←どんな状態だよ!)
極め付けは囁くようなひと言「私、身籠りました・・」 鷲津以上に、全ての観客に“忘れ得ぬ衝撃”の走る瞬間です(=^_^=)
追記2:死ぬ寸前の鷲津の表情が“竹中直人っぽくて”ちょっと面白かった。。
追記3:原典『マクベス』では「バーナムの森」が動く設定となっている。

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コメント

こんばんは。
観ていないので又もや“的外れ”的コメントかも、、、お許し下さい。

原作ではマクベス夫人が結構重要ですよね。
夫人の存在なくしては成立し得なかった物語、とでも言うような。
山田五十鈴さん、凄みがありそうです。

なんか、こういう「西洋もの→和もの」というような、時代も背景も変えての大胆な創作って無条件に凄いなと感じます。
「原作にあくまで忠実に」というのも映像化の一つの在り方なのでしょうけれど、映画化するという段階で「別ものの藝術作品にする」という醍醐味がそこにあるべき気もして・・・。


>首相をされてたとある方(誰?)のように

「改革!」「民営化!」「感動した!」のあの御方でしょうか???

投稿: ぺろんぱ | 2008年9月 5日 (金) 20時04分

ぺろんぱさん、ばんはです。

今夜は『宇宙の彼方へ』を観て来ました☆

ファンタジックかつドキュメンタリー的な奇妙な味わいで、なかなか面白かったどす。

>原作ではマクベス夫人が結構重要ですよね。

魔女とか亡霊とかが出て来るので怖そうですが、一番怖いのはあの奥方でした(⌒〜⌒ι)なんまんだぶなんまんだぶ・・

>夫人の存在なくしては成立し得なかった物語、とでも言うような。
>山田五十鈴さん、凄みがありそうです。

後半で、明らかに物語(本筋)から逸脱してしまったのが残念でした・・
まぁ、直後に主人公も退場するんですが・・

>なんか、こういう「西洋もの→和もの」というような、
>時代も背景も変えての大胆な創作って無条件に凄いなと感じます。

まずは、宗教観の違いをどう巧くさばくのか、でしょうかねぇ。

>映画化するという段階で「別ものの藝術作品にする」という
>醍醐味がそこにあるべき気もして・・・。

やろと思えばジャンルを変えることも出来ますしね。
シェークスピアが原作ってことで、骨組みは頑丈な訳ですから、
「近未来のロスを舞台とした犯罪アクション」とかに脚色しても通じるかも知れませんよね☆ ←いや、それはなんぼなんでもいじくり過ぎやろ!

>「改革!」「民営化!」「感動した!」のあの御方でしょうか???

そうです。
『日本沈没』も『相棒/劇場版』も“あの方”を模した首相が登場したからこそ、面白く仕上がったと思ってます(=^_^=)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年9月 5日 (金) 23時51分

こんばんは

衛星放送で今夜も『七人の侍』をやってましたが
黒澤週間なんですかね?
『蜘蛛巣城』は日本の歴代ホラー映画のなかでもトップ10に入るくらい怖かった印象を持ってます。

森の老婆のシーンは深夜にひとりで鑑賞してたときは
ほんとうに怖かったです。

投稿: ituka | 2008年9月 7日 (日) 00時59分

itukaさん、ばんはです。

>衛星放送で今夜も『七人の侍』をやってましたが
>黒澤週間なんですかね?

監督が亡くなられて10周忌ってことで、全監督作品を定期的に放送してます☆ 初めて観る作品も多く、かなり楽しんでおります(=^_^=)

もうじき「カラー作品群」に突入することとなりそうで、楽しめなくなるかも知れませんが(おいっ)

>『蜘蛛巣城』は日本の歴代ホラー映画のなかでもトップ10に入るくらい怖かった印象を持ってます。

「動く森」「飛来する矢」などの衝撃的な画面が多かったです!

>森の老婆のシーンは深夜にひとりで鑑賞してたときは
>ほんとうに怖かったです。

昔あったアーケードゲーム『源平討魔伝(1986)』のオープニング等でストーリーを語って聞かせる婆さま(安駄婆:あんだばぁ)が出て来るんですが、それになかなかそっくりなキャラ造形でした(=^_^=)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年9月 7日 (日) 02時11分

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