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2008年8月20日 (水)

☆『雨月物語(1953)』☆

さる6日(水曜)、衛星第2で放送された『雨月物語』を2夜に分け鑑賞した。
と言っても、約2/3までを鑑賞した1夜目とその残りを鑑賞した2夜目(18日(月曜)の夜)の間には1週間以上ものブランクが空いてしまった。。本来、こう言う鑑賞の仕方はしたくないんだが、、

上田秋成の著した怪奇短編集『雨月物語』から2つのエピソードを抜き出し、巧妙に味付け(アレンジ)を施したモノクロ作品。名匠・溝口健二が監督した本作は同年(1953)のヴェネチア映画祭で賞を獲ったそうで、冒頭には

“1953年度イタリーヴェニス國際映画コンクール 最優秀外國映画賞 栄冠獲得”

と誇らしく表示される。

実際のトコ、劇中に大きな区切りなどはないが「第一部 蛇性の婬」「第二部 浅茅が宿」と章立てが最初に表示され、続いて

“「雨月物語」の奇異幻怪は 現代人の心にふれる時 更に様々の幻想をよび起す これはそれらの幻想から 新しく生れた物語です”

と製作意図(?)が紹介される。なくても何ら差し障りないのに、敢えてこれらの表示をはじめに持って来る辺りに溝口監督の律儀さ、のようなものが感じられた。

ある年の早春、近江國は琵琶湖北岸。時は“戦國時代”のただ中であり、一円は「羽柴勢」と「柴田勢」が火花を散らす緊迫の状況下にあった。

こつこつ地味に器を作る真面目な陶工・源十郎(げんじゅうろう:森雅之)には妻・宮木(みやぎ:田中絹代)と幼子・源市(げんいち)なる愛する家族がいたが・・ある時、弟分の藤兵衛(とうべえ)を伴い“長浜の市”へ器を売りに行った所、これが大成功し、欲をかいた彼は帰宅後“取り憑かれたように”更に大量の焼き物をせっせとこしらえ、今度は“大溝の市”(現在の高浜市)へ商いに向かう。

戦(いくさ)の火の手が街道沿いに村落に迫ったため、船で“尾上の浜”(現在の湖北町)から湖水を渡ることとした源十郎。一行は彼と藤兵衛、その妻であり船頭の娘・阿浜(おはま:水戸光子)の3人となり、宮木と源市は同乗せず“美濃街道の裏山”にある隠れ家に潜伏することとなる。

霧深き湖面を無事に渡り、大溝へ着いた一行。

藤兵衛は陶器を売って得た金で「具足」「槍」を買い揃え、かねてより念願だった侍の家来(丹羽“五郎左衛門”長秀配下の雑兵)となる。

夫に去られた阿浜は、これまた何処へともなく姿を消す。

源十郎は大溝城下で商い中、多数の注文(花生け、徳利、皿など)をした美しい娘に心を奪われる。彼女は朽木左衛門(くつきさえもん)の娘・若狭(わかさ:京マチ子)と名乗り、朽木屋敷まで器を届けて欲しいと彼に頼む。

屋敷を訪れた源十郎は、美しい若狭の歓迎を受ける。彼女に付き添う老婆が「若狭様とこの折りに“お契り”なされたら良い、あの声のお嬉しそうなこと・・」と彼の耳元で囁く・・
確か(=^_^=)妻子持ちであった筈の源十郎なれど人の子、、この“OKサイン”を受け「据え膳をがつがつ食す」のにさほど時間はかからなかった・・

藤兵衛は卑劣な闇討ちで、不破某(=佐久間“備前守”安政の名だたる家臣)の大将首を討ち取る(・・と言うか彼の自刃直後、介錯した部下を背後から襲い、首を盗んだだけ、、)。その武功で「馬・鎧・家来」の3点セットを与えられ、いっぱしの武将気分となるも・・立ち寄った街道沿いの遊郭で落ちぶれた阿浜に再会、愕然とするのだった。

源十郎は、久しぶりに下山し出向いた市で通りがかりの高僧(?)に「お前の顔には死相が出ている!」と指摘される。お前がただ亡者に取り殺されるのを見るにはしのびない、と語る高僧は彼の背中一面に護符(的な梵字?)を墨で黒々と描く。

(朽木一門の亡霊を振り払い)命からがら屋敷を後にした源十郎がやっとの事で故郷へ帰った時、彼は宮木が既にこの世にいないことを知らされるのだった・・

「立身の夢」に「絶世の美女」・・どちらも男の本能(=^_^=)とロマンをくすぐる代名詞のようなものであるが(そうなのか?)今も昔も、そこに盲目的に走ったが故に“大きなものを失った”男も多かったことだろう。時代が平成の世に移ろうと、本作と似たような運命の皮肉はきっと起こり得るんだろうな、と思わせる普遍的な味わいが確かにあった。

作品のラストで“千の風となった”宮木が、空から源十郎に「あなた本来の場所で、あなた本来の姿に戻るのです」と優しく呼びかける演出があるが、ここのセリフがどす〜んと背中にのしかかった。

ときに、戦国時代の農民の生活と言えばかなり悲惨なモノで、ひとたび戦が起これば、男はさらわれて人夫にされ、女は暴行を受けるのである。その当時の貞操観念が如何なるものだったかは分からないが、後世から眺めるには、これは悲惨極まりなかった(×_×)

「成功や性交(おい!)」「出世や出精(こら!)」の亡者となる悲しき漢(をとこ)の性(さが)を見よ!

生きるため、辱めに耐えるしかなかったかつての婦(をんな)の慟哭を聞け!

と言う下世話っぽい(?)教訓を、ともあれワタシなりに得たのであった(・ω・)

~ こんなセリフもありました ~

阿浜「分を守って働かないと、きっと不幸せが来るよ」
  「どさくさ紛れに儲けたような金は決して身に付くもんじゃない、金が入ればまたその上に欲が出る」

宮木「この(土産の)小袖が嬉しいのではありません、買って下さるあなたの心に」
  「戦(いくさ)は人まで変えてしまうのね」

源十郎「万事は金だ、金がないから辛くもなるんだ、望みもなくなっちまうんだ」
   「人も物も処(ところ)によって、こうも値打ちが変わるものか」

家来「お頭、出世祝いを兼ねてのご器量の見せどころですぞ!」

阿浜「人が偉くなるためには、嫌な辛抱もしなけりゃならないさ」
藤兵衛「立身も出世もお前がいればこそだ」
阿浜「あたしは汚れてしまったの・・みんなお前の罪だ!」

老婆「妻子がありながら、何故契りを交わされた?」
  「男はいったんの過ちで済もうが、女は済まぬ!」
  「姫様のお幸せをそんな儚いものにされて、お心に咎めはしませぬか?」

阿浜「幾ら言っても、お前さんは馬鹿だから、自分で不幸せな目に遭わなきゃ気が付かなかったんだねぇ」
藤兵衛「戦が俺たちの望みを歪めてしまったんだ」

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コメント

こんばんは。

作品は未見ながら、京マチ子さんの公家眉の白いお顔のビジュアルがしっかり目に焼き付いている映画です。
その<一枚>のビジュアルからも十分「妖度」を感じました。

そして、、、ここには現代にも通じるテーマがあるのですね。

投稿: ぺろんぱ | 2008年8月20日 (水) 22時11分

みやぎさんの良妻賢母ぶりに感動しつつ、表現方法こそ違うものの、夫をひたすら思うおはまさんもまた良妻も良妻ーなのに強姦(あえてこの言葉を使います)されてーものすごく痛かったです。
邦画にせよ洋画にせよ、そういうシーンはそこそこあるとはいえ、自分は昔の邦画のそれに特にウゥッときてしまいます。今改めて考えるに、子供の頃親と観た邦画でそういうシーンがたまたまあってそれに非常に恐怖と嫌悪感みたいなものを感じたからかもしれません。誰でも嫌な気分になるとは思いますが・・・。

それにしても、水戸光子さんて痩せたはったんですね。(おばちゃんなってぷっくりした水戸光子さんしか知らんもんで・・)

投稿: ビイルネン | 2008年8月21日 (木) 03時10分

ばんはです。

夜半は、暑さが和らいで来ましたね。

今年もクーラーなしで乗り切ったぜ! と得意満面なワタシです(買えよ、と)

>作品は未見ながら、京マチ子さんの公家眉の白いお顔の
>ビジュアルがしっかり目に焼き付いている映画です。
>その<一枚>のビジュアルからも十分「妖度」を感じました。

いわゆる「麿眉」ってヤツでしょうかね(・ω・)

私的にはロケーションが琵琶湖畔の各地なので、予想以上に楽しめました。ロケツアーしたいけど、当時の面影残ってませんてば(=^_^=)

>そして、、、ここには現代にも通じるテーマがあるのですね。

演出次第では、シェイクスピア路線の劇にも改変出来ると思います。

「性」と「金」に無軌道な、最近の若いもんに鑑賞を義務づけたい(=^_^=) ←何をエラそうに

投稿: TiM3(管理人) | 2008年8月23日 (土) 00時04分

ビイルネンさん、ばんはです。

>みやぎさんの良妻賢母ぶりに感動しつつ、

ラストシーンには「これって何かに似てるぞ?」と思いました・・
表現方法は全く異なりますが、痛切に流れる「悔いの感情」がフェリーニ監督の『道』に似てるんや〜・・と後で気付かされました。

くそだわけ(岐阜弁?)な自己中オトコこそは黙って観るべき作品かも知れません。 ←だから何をエラそうに!

>表現方法こそ違うものの、夫をひたすら思うおはまさんもまた良妻も良妻ーなのに

「命があればこそ、まだやり直せるんや」と言う少しばかりの希望がささやかに光ってました。
どんなに傷ついても、夫婦はああ言うおさまり方をすべきものなのかも知れません・・

>今改めて考えるに、子供の頃親と観た邦画でそういうシーンが
>たまたまあってそれに非常に恐怖と嫌悪感みたいなものを
>感じたからかもしれません。誰でも嫌な気分になるとは思いますが・・・。

「こんなの観ちゃいけない」とただ子供の眼を覆うだけでなく、そういうシーンを通じて、きちんと家庭内教育すべき問題なのかも知れませんね。

>それにしても、水戸光子さんて痩せたはったんですね。
>(おばちゃんなってぷっくりした水戸光子さんしか知らんもんで・・)

そちらを知らない・・(×_×)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年8月23日 (土) 00時20分

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