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2008年7月22日 (火)

☆『白痴(1951)』☆

19日(土曜)の夜、衛星第2で放送されたものを鑑賞。
観始めるまで「クロサワ映画やし、そんなに長くもないやろ・・」と軽く考えてたら、、これが前&後篇ぶっ通しで2時間46分もあり「ぐえぇぇ・・」と凹んでしまった(×_×)
考えたら、原作がロシアの文豪ドストエフスキーの長編小説なんだから、仕方ないトコでもあるんだが。。
まぁ、それでも当初の企画では何と! 4時間25分もあったそうだ・・!
流石にこのオリジナル版では会社側が許可せず、フィルムを切られたとか何とか・・で、黒澤明監督が「これ以上フィルムを切ると言うなら、タテに切るがいい!」と憤慨した、なる逸話が残ってるそうだ。

良くも悪くも大河ドラマ的な大長編・・分かりにくい部分や唐突な部分はきっと「消された1時間39分」の中に封じ込められたまま、闇に葬られたのかも知れない・・??

戦後間もない極寒の地・北海道を舞台に、戦地から復員して来た青年・亀田(森雅之)を中心に、愛憎の火花を散らす那須妙子(原節子)、赤間(三船敏郎)、大野綾子(久我美子)・・の4人の男女の物語。

ポイントは何と言っても、戦地で死の恐怖にさらされた挙げ句“白痴:てんかん性痴呆”となってしまった青年・亀田の言動と、それが巻き起こす波紋の数々であると言えよう。
(なお“白痴”と言う表現は、差別的な意味合いを含んでおり、誤解を招かぬよう使い方に注意されたい)

愚直な人物が主人公となり周囲に変化を与えて行く物語としては、
『フォレスト・ガンプ/一期一会(1994)』
『イワンのばか』(ロシアの作家トルストイによる教示的小説)
『さぶ』(山本周五郎による時代小説)
などがパッと思いついたトコで挙げられるだろうか。

ただし・・本作では、そんな主人公の生き方が、余計に周囲に“ねじれ”を生んでしまった・・そんな気もした。

第1部:愛と苦悩
北に向かう汽車の中で赤間は「悪夢にうなされていた」亀田と出会う。2人は辿り着いた札幌駅で別れるが、その直前、駅前の某写真館のショーウィンドー内に飾られた美女のポートレイトを2人は眺めるのだった。その1枚の主こそは“恋多き女”那須妙子その人である。
妙子はとある大物政治家の愛人であったが、60万円と言う(巨額の)持参金付きで、香山と言う男のもとへ嫁ぐ運びとなっていた。そこへ殴り込んで(?)来た赤間が100万円をポンと投げ出し・・結局、妙子は赤間と共に香山のもとを去ってしまうのだった。
何処かへ去ってしまった妙子に、亀田は「美しさと秘めたる寂しさ」を見出し、彼女を追い求める。一方、彼が身を寄せる大野(志村喬)家の2女=綾子もまた、表立っては烈しい性格ながら「自らと正反対の分け隔てない優しさ」を持つ亀田に想いを寄せ始めていた。
亀田は札幌に舞い戻った赤間と再会するが、赤間は「近くにいながらも心を開かない妙子」に苛立ちを感じ、その心が今も亀田にあると知るや、いきなり隠し持っていた刃物で彼に襲いかかるのだった・・!

第2部:恋と憎悪
襲われた瞬間、亀田は発作を起こし昏倒してしまう。そんな彼を見て逃げ出す赤間。
しばらく療養していた亀田も次第に良くなり、大野家の人々と「氷上カーニバル」(後の“さっぽろ雪祭り”?)に出かけられるほどに回復する。そこに現れた(仮装した)妙子が亀田に接触をはかり、それに鋭く気付いたのはやはり綾子だった。
終盤。赤間の屋敷では、彼を背後に控えさせた妙子が、亀田への想いを伝えようとするが・・そこに綾子が現れ、亀田は妙子に「私か、この娘か、どちらを選ぶのか決めなさい!」と迫られることとなる。

うーん・・書いてても重いだけでつまらん(×_×)
極端、途中を端折っても、ポイントさえ押さえとけばOK的な作品の気もする。いわゆる「名シーン」ってヤツですね。正直、ワタシとしては「もっともっと短く切っても良かったんでは?」と感じるトコもあった。そもそもが「重く」て全く「エンタテインメント路線」ではない故、長編映画として放つより、連続ドラマとして分割放送した方が正しかったんじゃないか、などとも・・
クロサワ監督は「何としてもこの重厚なロシア文学を映像化したかった」なる意欲を本作に叩き付けたようだが「あなたでなくとも描けた物語かも知れませんよ」と言ってあげたい気もする(済みません)

ただし・・森、原、三船、久我・・の主要キャストのアップ映像がいずれも素晴らしく、ポートレイトにそのまま使えるし、ぜひ使いたいような、そんなイキイキ&キラキラした表情だったことは特筆に値する! 当時、久我さんが20歳で原さんは31歳だったそうだが、2人ともが強烈な「ヒロインオーラ」を放っており、(モノクロ画面なのに)圧倒されたのは確かである。

後で知ったんだが(=^_^=) 主人公4人はそれぞれオリジナル版の人物名を微妙にアレンジしてるそうで、
ナスターシャ ⇒ 那須妙子
ムイシュキン ⇒ 亀田欽司
ロゴージン ⇒ 赤間伝吉 (間違えて「ご老人」と言ってはならない(⌒〜⌒ι))
アグラーヤ ⇒ 大野綾子
となるようだ。

中でも、ナスターシャのアレンジセンスはなかなか光ってるなぁ〜などと“そう言う切り口のみ”には素早く反応しちゃうワタシであった(⌒〜⌒ι)

〜 こんなセリフもありました 〜

赤間「世の中は狼ばっかりだ、気を付けな」

亀田「あなたはそんな人じゃない・・そんな人じゃないのに」
  「僕、黙りませんよ。あなたは1人で苦しみ過ぎたんです」
  「僕、あなたの写真を一目見た時から、あなたが僕を呼んでいるような気がしたんです」
  「僕はただ、あの人が可哀想なんだ・・あの人が幸せでさえあってくれれば、それでいいんだよ」
  「それ、うそですね」
  「それも、うそです」

妙子「私、あなたみたいな赤ちゃんの・・一生を台なしには出来ませんわ」
  「愛と哀れみはね・・同じことなんですよ、お嬢さん」

綾子「人間の知恵には、大切なものとそうでないものと2つあって・・誰にもそれが分からないんだわ」
  「こんな大きな・・奇麗な心は生まれて初めてです」

亀田「これ紙切りナイフじゃないね」
赤間「肉を切るナイフだ」
亀田「それにしても・・ずいぶん新しいね」

(以下は観客の想像力を刺激する“スゴい演出”と言えましょう! 監督、こここそが描きたかったか?)

亀田「あれは・・君がやったんだね?」
赤間「奇麗な身体してるぜ・・夜が明けたらお前も見てやんな・・ただ臭いが出やしねぇかと心配でな」
   しかし、猪口(ちょこ)に一杯も血が出ないんだぜ」
亀田「それは僕、知ってる・・内部出血って言うんだよ」

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コメント

これ、観てませんが、コメントすみません。

愚直な人物が・・・てとこで、自分がふと思い出したのが、(愚直という言葉をいまいち理解してないかもですが)”奇跡の海(監督ラース・フォン・トリアー)”のエミリー・ワトソンです。

けっこう、痛い映画でございました・・・。

投稿: ビイルネン | 2008年7月23日 (水) 04時23分

こんばんは。
(ビイルネンさんに続き)私も観ていませんが、コメントします、すみません。
否、当日の放映で実は第一部終盤から第二部冒頭部まで観ました。(←「観た」とは言わんのでしょうね、こういうの。)

ドストエフスキーですか・・・。
村上春樹がドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を人生の書の如く愛読しているのに触発され、いつかきちんと読まねばと思っているものの・・・。
そしてカウリスマキが『罪と罰』をモチーフに同名の映画を撮っていることからも、いつかきちんと読み直さねばと思っているものの・・・。
『白痴』をモチーフに黒澤監督が映画を作っておられたとは知りませんでした。

チラ見した時に「サイキックな題材を“実直に”描いていらっしゃる感じ」だなと思ったのですが・・・。

投稿: ぺろんぱ | 2008年7月23日 (水) 20時22分

ビイルネンさん、ばんはです。

夏風邪を引いてしまいました(×_×) 扇風機の直撃風にご注意を(・ω・)

>愚直な人物が・・・てとこで、自分がふと思い出したのが、
>(愚直という言葉をいまいち理解してないかもですが)

周りの人を苛つかせ、時に勇気づけ、時に何かを教示する立場にも成り得る人物・・って解釈をしております(・ω・) ひと言で言えば“ピュア”とか、、

>”奇跡の海(監督ラース・フォン・トリアー)”のエミリー・ワトソンです。
>けっこう、痛い映画でございました・・・。

わお、エミリーさんですか。いいですね。
『アンジェラの灰』『リベリオン』ですっかりファンになりました(=^_^=)

トリアー監督作品は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』しか観てなくて・・衛星第2待ちですかね(⌒〜⌒ι)
確か自室に『ドッグヴィル』のDVDが転がってる筈だけど、まだ開封すらしてなくて(×_×)

でも、貴重な情報を有難うございました。

投稿: TiM3(管理人) | 2008年7月23日 (水) 23時55分

ぺろんぱさん、ばんはです。

夏風邪にご注・・(くどい!)

>否、当日の放映で実は第一部終盤から第二部冒頭部まで観ました。
>(←「観た」とは言わんのでしょうね、こういうの。)

ううむ・・(⌒〜⌒ι) でも、第一部終盤の「赤間が亀田に襲いかかるシーン」は“ヤマ場”の1つだと思います。
考えたら、総合的にやや「吸引力不足」なんですよねぇ、、

>村上春樹がドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を
>人生の書の如く愛読しているのに触発され、

そうなんですか、、流石、世界の文学を網羅されてる村上センセイですね(⌒〜⌒ι)
私的には『カラマーゾフ〜』に登場する「劇中詩(?)」の『大審問官』のくだりがモノ凄いらしいので、どこがどうモノ凄いのか(=^_^=)、そこだけでもかいつまんでいつか読んでみようと思ってます。

>そしてカウリスマキが『罪と罰』をモチーフに同名の映画を
>撮っていることからも、

こちらも未読ですが(×_×) 『青年が強欲な老婆を殺害する』と言うプロットだけは江戸川乱歩の短編小説『心理試験』に似てるみたいですね。

>『白痴』をモチーフに黒澤監督が映画を作っておられたとは知りませんでした。

ワタシも、あんなに和製アレンジしてるとは知りませんでした(⌒〜⌒ι)

>チラ見した時に「サイキックな題材を“実直に”描いて
>いらっしゃる感じ」だなと思ったのですが・・・。

終盤では、クロサワ監督ならではの「描かず観客に想像させる」演出テクニックを放ってたのが、やはりワタシなりに衝撃的でした。

このクロサワ手法って、案外『セヴン』のデヴィッド・フィンチャー監督などにも影響を与えているのかも知れませんね。

追記:こちらで紹介されてますね「大審問官」

http://www013.upp.so-net.ne.jp/hongirai-san/pro-t.html

投稿: TiM3(管理人) | 2008年7月24日 (木) 00時14分

 白痴はすごい面白かったと思います。原作のドストエフスキーの白痴を読んでいた頃見て、読む気がしてきました。
 原節子さんは名演技だったと思います。この映画は、一人一人の名演技で、魅力ある作品となりました。この映画のおかげで黒澤監督の良さが分かりました。

投稿: フラワー | 2008年7月28日 (月) 13時21分

フラワーさん、初めまして・・でしょうかね?(・ω・)

>白痴はすごい面白かったと思います

そうですね・・ただ「観るべき名場面」と「そうでもない繋ぎ場面」
の吸引力の差が、確実に存在してたような気がして
「クロサワ先生、ちと情熱にうかされ編集が甘くなったか?」
と感じてしまうトコもありました(私的には、ね)。

>原節子さんは名演技だったと思います。
>この映画は、一人一人の名演技で、魅力ある作品となりました。

(それまで)どちらかと言うと、原さんに対しては「清純派の頂点におられる女優さん」って印象が強く、

本作と『わが青春に悔なし』での演技&人物造形にはホントに驚かされました。

次回はいよいよ『生きる』ですね、BS2(=^_^=)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年7月29日 (火) 00時20分

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