☆『酔いどれ天使(1948)』☆
12日(木曜)。衛星第2で放送されたモノを録画しておいた、黒澤映画『酔いどれ天使』を3日に分け鑑賞した。この日、ようやく観終えた次第である☆
以前、少し関わりのあった「自主制作映画と任侠作品の鬼」みたいな方(最近はお元気なんやろか?)が言うに「黒澤作品で最も好んでいる1本」とのことだったが、ようやく鑑賞が叶った。
いつもながら「モノクロ時代のクロサワ、まるで水を得た魚のように凄まじいな・・!」と圧倒される。
戦後、復興期をひた走る東京。が、その下町で静かに忍び寄る「結核菌」の存在に人々は怯えていた。
舗装の進んでいない闇市(=南新町マーケット)の広場。大きなどぶの傍にある「眞田醫院(=真田医院)」では、名医だが「貧乏・アル中・毒舌」の中年医師・真田(志村喬)が儲け(営業)を度外視した“面と向かっては(患者を)罵倒するも、実は思いやりに溢れた診療”でささやかに近隣住民の支持を集めていた。
そんなある夜「ドアに手を挟まれた」として“ちょっと苦みばしった痩せっぽちの青年やくざ”松永(三船敏郎)が医院を訪れる。果たして、執刀した彼の患部からは“鉛玉”が転がり出す。
本当は“抗争で被弾した”モノだったのだ。
治療の中で、彼が肺結核に冒され、恐らくはその肺に穴が開いているであろうことを掴んだ真田は「酒・煙草・女は禁止だ!」と言い付け、彼の自堕落で無軌道な生き方を修正しようとするが・・持ち前の毒舌が災いしてか(?)松永は一向に暮しを改めようとせず、下町の「顔」として“肩で風を切り”闇市を闊歩するのだった。
そんなある日、傷害事件を起こし服役していた松永の兄貴分・岡田が4年ぶりに娑婆(シャバ)に舞い戻る。一度は真田の元に足繁く通い、改心の兆しを見せ始めたか・・に思えた松永だったが、岡田の影響で、またもや「酒・煙草・女・博打」の悪循環に転げ落ちてしまう。
賭場でついに吐血⇒昏倒し医院に運び込まれる松永。「絶対安静」を真田に言い付けられた彼だが、やはり看護師・美代(中北千枝子)の制止を振り切り町へ・・。
花屋で“この界隈は今や岡田の縄張りだ”と耳にした松永は、親分の真意を聞きに本拠へと向かうのだが・・
ウィキペディアにも記載の通り(=^_^=)、黒澤監督の描きたかった(?)主人公像=真田医師を超え、準主役である松永=ミフネがすっかり主役を喰ってしまってる感があった。
が、ワタシなりに感じたのは「クロサワ自身にも“主人公を真田に引き戻すための(挽回的)演出を敢えて(脚本に)盛り込まなかった”と言う「狙ってた部分」があったのでは?」ってこと。
ある意味、それ程までに当時(彼の)感じたミフネの印象が強烈だったんだろう(ご存じの通り、本作は“ミフネ初登場のクロサワ作品”である)。
ちんぴらが自滅して行く物語、と言えばひと言で「粗筋に変わるもの」となるが・・そこを視覚的に彩る三船の強烈な「言動・パワー・輝き」が確かに本作の見所ではある。
前半では白スーツ、後半からはダークスーツ・・と“お色直し”するのも面白い。
番組解説においては「本当の主役はある意味“どぶ”」と言う刺激的なコメント(=^_^=)が交わされてたが、確かに(ロケ移動の比較的少ない中)要所要所で映し出されるどぶの様々な表情&映像表現は、それだけで強烈なビジュアルイメージを観る者に叩き付ける。モノクロならではの味わいに「どんな色をしとるんやろ?」と思いを馳せるのもアリだろう(馳せるなよ!)
全編を通じ、真田医師を支え続けたのが中北千枝子さん演じる看護婦・美代だったが(←後半で急に出て来なくなりちょっと気になる(・ω・))、それよりも(2シーンのみ出演の)女生徒(久我美子)と(1シーンのみ出演の)ブギを唄ふ女(笠置シヅ子:クレジット表記は“笠置シズ子”)の方がはるかに強烈であった。特に後者、、(⌒〜⌒ι)
私的には「最後は改心モノか?(所謂「君は悪くない」「ごめん、今まで」的な、、)」と予想してたが、流石は黒澤、徹底的に“暴力を否定”するオチを描き切った。
が、1シーン「長いな〜」と感じたのは、終盤の「松永vs岡田」の対決だった。劇中で唯一(?)の「アクションシーン」ではあったが、あそこはアキ・カウリスマキ監督『白い花びら(1999)』の終盤みたく、断片的に描き、(真相を)観客の想像力で補わせて欲しかったものだ(・ω・)
ほか、劇中で黒澤作詞による1曲「ジャングル・ブギ」が笠置女史により披露されるが、歌詞にあった“♪骨の溶けるような恋をした”の一節を聴いて、思わず松任谷由実(ユーミン)の「真夏の夜の夢」を思い出してしまったワタシである。。
〜 眞田語録! 〜
「タダ飯喰ってるヤツからは、出来るだけボることに決めてるんだ」
「結核患者5人持ってりゃ、医者は左団扇(うちわ)だからな」
「聴診器で何が分かるもんか、そんなものはおまじないだよ、医者は格好が付かねぇからあんなことするだけさ」
「お前んとこの酒はアルコールよりも石油に近いんでな」
「元来、医者って商売がバカらしいんだから仕方がねぇよ、この世の中に病人がなくなったら
一番困るのは医者だろ? それなのに、医者ってヤツはその病人をなくす事ばかり考えてるんだからな」
「説教聞いて出直すには老け過ぎてらぁ」
「グレるにはグレるだけの訳があるんでな」
「あいつは何て言うか・・芯がやられてやがるんだ」
「お前の一生は、まだ半分残ってるよ」
「病気を恥ずかしがる、お前の根性がおかしいんだ、お前たちはそれが勇気だと思ってやがる・・
俺に言わせりゃお前たちほど臆病者はないよ」
「年寄りはそうじらすもんじゃねぇ」
「酒喰らってへべれけにならなきゃ、ここへ来られなかったんだろ? 情けねぇヤツだ」
「何処の死に損ないだ? とんだ時間に世話焼かせやがる」
「何がムリだ、いつもムリばかり通してやがるくせに」
「お前の肺ばかりきれいにしようったって駄目な相談だよ、
お前の周りには腐り切った、ばい菌みたいな奴らばかり集まってるからな」
「もしその女がこの家にいたとしても、てめぇの声聞いて飛んで出て来ねぇようじゃ脈はねぇんだ」
「仁義なんてものは、悪党仲間の“安全保障条約”みたいなもんさ、結局はカネだよ」
「日本人ってヤツは、とかく下らねぇことに身を棄てたがっていけねぇ」
「結局、けだものはけだものさ、人間にしようなんて考えるのがそもそも甘っちょろいんだ」
「人間に一番必要なクスリは理性なんだよ」
追記:本作の三船には若い頃の役所広司っぽい野性味を感じた。志村には何処となく老けた柳葉敏郎ってなイメージを感じたりした。
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コメント
再びこんばんは。
黒澤作品は実は3作品くらいしか観てないような気がします。ちゃんと封切作をリアルタイムで劇場で観たのは多分、『夢』だけ・・・でしょうか。
なのでコメントは難しいなぁと読んでいますと後半にカウリスマキの名前が・・・!
この作品のレヴューでカウリスマキの名を目にするとは・・・。
>白い花びら(1999)』の終盤みたく、断片的に描き、
斧のシーンでしたっけ?
久々に『白い花びら』、観返してみたくなりました。
(本編の内容にからめられず、本当に申し訳ありません。)
投稿: ぺろんぱ | 2008年6月16日 (月) 20時13分
ぺろんぱさん、ばんはです。
>黒澤作品は実は3作品くらいしか観てないような気がします。
>ちゃんと封切作をリアルタイムで劇場で観たのは多分、『夢』だけ・・・でしょうか。
カラー時代の作品は、殆ど親しんでませんねぇ、、
『夢』『まぁだだよ』はTVで観て、そこそこに良かったな、と。
>この作品のレヴューでカウリスマキの名を目にするとは・・・。
そうなんですよ。カルーセルマキじゃないですよ(分かっとる!)
>斧のシーンでしたっけ?
その通りです。モノクロであるが故の衝撃的演出です。
詳細は描かずとも良いシーンだし、その必要もありません。
>久々に『白い花びら』、観返してみたくなりました。
いいですよね。
だらだら壁の巨大液晶に映しておきたいような作品です(=^_^=)
>本編の内容にからめられず、本当に申し訳ありません。
ちょっとだけからんで頂けて、嬉しぅございました(・ω・)
投稿: TiM3(管理人) | 2008年6月16日 (月) 21時06分