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2008年5月26日 (月)

☆『素晴らしき日曜日(1947)』☆

24日(土曜)の夜、衛星第2で放送されたものを観た。
黒澤明による6本目の監督作品。今回は終戦(敗戦)から2年後の東京を舞台に、若き恋人たちの1日の物語が紡がれる。薄っぺらなCGでは決して描けない(・ω・)、リアルな当時の東京の姿である・・

雄造と昌子はとある春間近(?)の日曜日に東京駅で待ち合わせ、週に一度のデート(劇中では“ランデブー”と言ってた・・(・ω・))をする(←当時は週休1日制だった)。
2人の所持金を合わせわずか35円。そんな精一杯の“軍資金”で2人は楽しい時間を過ごそうとするのだが・・

「セットが準備出来んならオールロケだ! スターが不在なら新人の起用だ!」とないないづくしの事情の中で、クロサワ自身、ちょっと“新境地”に足を踏み出したようだが(本作は旧友=植草圭之助氏が脚本を単独執筆し、彼の起用もまた(クロサワ映画)初である)、逆に主人公の何処か神経衰弱なキャラ像、ヒロインの決して美女と言えぬ(←済みません)その容貌と共に、実にリアルなカップルの映像を観る者に叩き付けてくれた(・ω・)

2人は仲良く、新興模範住宅(10万円)の展示場を見に行ったり、広場で少年らと野球に興じたり、戦友の経営するキャバレー“ドラム”やら、はたまた動物園に行ってみたりするも、所持金が確実に減って行くだけで少しも気持ちが晴れない。
そんな中、雨までも降って来る。
「俺のアパートへ来いよ」と誘う雄造には同意せず、昌子は「ピアノコンサートに行きましょう」と誘うが、雨中を小走りで辿り着いた公会堂では、寸前で切符が売り切れ、ヤミ切符売りとひと悶着を起こした雄造は彼らの仲間に叩きのめされる・・
失意の中、いよいよ2人は雄造のアパートへ戻る。
天井から雨漏りのする狭い部屋で、雄造は情動の命ずるまま、昌子を求めようとするが・・ってな流れ。

中盤までの約1時間がとにかく楽しい。当時の東京の“お散歩ムービー”みたいな感覚で、観てて飽きない。貨幣価値が現在と全然違うので「潰れまんじゅう3つで10円」「ぼろアパート(六畳一間)の部屋代が600円、権利金が2000円」「演奏会のA席25円、B席10円」「コーヒー5円、お菓子も5円」・・とセリフの中で並べられてもパッと換算出来なかったり(⌒〜⌒ι) だいたい今の250倍ぐらいだったんかな?

しかし・・後半からは作風が一転、暗澹とした空気が垂れ込める。昌子は泣くし、それを励ます雄造までもがしまいには泣き出してしまう。
「泣いてる彼女を慰めながら、とうとう泣いてしまう男」、、そして彼は「泣くなよ」「いいんだよ」「バカだなぁ」と繰り返すしか言葉が見つからないのだ。このシーンだけは観てるこっちまでもがボロボロっと来てしまった。

往年の消費者金融マンガ『ナニワ金融道』で言うトコロの、債務者家族が身を寄せ合って「ウウッ・・」と嗚咽するあの救いようのないシーンのようだ(×_×)

ただ、その後は雨も上がり、少しばかりは彼ら若い2人に「夢と希望の炎」が再びポッと灯る・・そんな些細な“再生感”は確かにあったし、それは観客にも伝わったことと思う。

そしてラスト。冒頭で足元に落ちていた吸い殻(俗称:シケモク)を拾おうとし恋人にとがめられた主人公は、今回は足元に転がる吸い殻を踏んづけ、そして蹴飛ばすのである。
この辺りの「何気なくも、少しだけは変われた主人公」ってな等身大の変化は爽快だったし、観ていて救われた気がした。

少なくとも彼にとって、この1日はきっと“素晴らしき休日”に終わった筈である。

〜 こんなセリフもありました 〜

雄造「俺も男だ、女のカネで遊ばして貰うなんて嫌だ!」
  「夢じゃ、腹はふくれないからな」
  「俺たちが(動物に)見られてるような気がするな」
  「金のない時間なんか・・幾らあっても仕方ないよ」
  「35円の日曜日は、35円のことだけしかなかったってことさ」
  「そろそろ愛想が尽きたろ? 野良犬だよ俺は、こんな惨めな自分がつくづく嫌になったんだ。
   惨め過ぎらぁ・・何もかも真っ暗だ、堪んねぇんだ」
  「近ごろ、誰もが俺に背中を向けてる気がするんだ・・いっそ、何かこう・・めちゃくちゃに・・!」

昌子「靴に大きな穴が開いてるのはね・・水が入った時、出て行くよう開けてあるのよ」
  「私ね、幸せな時はなぁんにも喋らないの」

昌子「あなた、変わったのね」
雄造「少し利口になったのさ」

昌子「昔は・・戦争に行く前は、あなたにも夢があったわ」
雄造「この戦争で、夢もすっ飛んじまったさ・・君だけなんだぜ、今の僕に残っているのは」

昌子「腕が痛むの?」
雄造「痛いのは、体じゃないよ」

追記1:平成の混迷の世(?)の東京を舞台に、本作の“リメイク”をぜひ制作して欲しい。雄造役は佐々木蔵之助さん辺りがイメージ的に似合ってそうな気がするけど・・(・ω・)
追記2:雨の中を、公園から公会堂へと走る2人の長回し! このシーンが特に素晴らしい!

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コメント

またおじゃましてすみません。

これ、BSの予告編をほんの一瞬チラッと見ただけですが、”中北千枝子”という表示にえぇーっと驚いた記憶が・・・。

”わっ、わっかい(若いー念のため)でないの!”と・・・。
おばちゃんなってからの”中北千枝子”しか知らんもんで、”いやぁ、誰しも若いときがあるもんやぁ”としみじみしてしまいました。(あたり前やが)

ていうか、”中北千枝子”を知っているつう段階で、自分どんだけ年いってんねん!て世界ではあります・・・。(すまん)

投稿: ビイルネン | 2008年5月26日 (月) 03時05分

ビイルネンさん、ばんはです。

返信が遅くなり恐縮です、、

>これ、BSの予告編をほんの一瞬チラッと見ただけですが、
>”中北千枝子”という表示にえぇーっと驚いた記憶が・・・。

ワタシも観賞後にウィキペディアで調べ、後に“ニッセイのおばちゃん”のCMに出てはった方と知りました(⌒〜⌒ι)

>ていうか、”中北千枝子”を知っているつう段階で、
>自分どんだけ年いってんねん!て世界ではあります・・・。

ぬぬ・・でもその世代の方の方が、より「全盛期のクロサワ映画」に対する親近感も高いのでしょうね〜 羨ましい!

投稿: TiM3(管理人) | 2008年5月27日 (火) 00時35分

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