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2008年5月15日 (木)

☆『わが青春に悔なし(1946)』☆

10日(土曜)に衛星第2ちゃんねるで放送されたものを鑑賞。黒澤明監督の「戦後第1作」でもある現代劇(?)には、ヒロインに大女優=原節子が迎えられた!
にしても・・原節子さん。ワタシはこれまで「『青い山脈(1949)』『晩春(1949)』『麦秋(1951)』・・と順調にステップを重ね、その才能が開花。遂に代表作『東京物語(1953)』に至った演技の極みか」・・と思ってたんだが、それが全然違ってて、本作の主演時点で、既にその演技が“完成の域”に達しておられた印象があった! これにはびっくり!
まだまだオレの知識も甘い、と言うことか・・

満州事変勃発⇒軍閥の隆盛・・と戦乱の気運高まる昭和8年。京都大学で起こった“京大事件(政府による思想弾圧)”を発端に、教職を罷免された八木原教授 (大河内傳次郎)の娘・幸枝(ゆきえ:原)を中心として、軍国化に加速する日本において「青春期を揺るがされる」こととなる若者たちを描いた大河ドラマ(?)。

何不自由なく、お嬢様生活を満喫していた幸枝を巡り、両極端な人生を辿るのは「熱き行動派の無頼=野毛隆吉(藤田進)」と「冷静な常識派のお坊ちゃん=糸川(河野秋武)」の2人。結局のトコロ、彼女は「(京都での)平穏無事な生活は・・きっと退屈になると思う。キラキラした、眼の眩むような(東京での)生活が・・怖いけれど魅力」と考え、単身上京する。
やがて昭和16年。都内(築地)に「政治経済研究所」を構えていた野毛と3年ぶりに再会、運命に導かれるかのように彼と同棲するようになる。

だが、程なく野毛は「スパイ罪容疑」で逮捕され、幸枝自身もまた「国賊=野毛の情婦」として検挙、厳しい獄中の日々を強いられるのだった。
父の計らいでやっと放免となった彼女だが、既に野毛が獄中で病死したことを知る・・

獄中では自失し、半ば枯れ果てていた幸枝であったが、回復するや毅然と「私は野毛の妻です・・!」と言い放ち、彼の遺骨を抱え、夫の実家である田舎へと走る。
老いた野毛の両親に会った彼女は、そこに自らも骨を埋める決心をし、慣れない手つきながら鍬を振り上げ、開墾の手伝いを始めるのだった。
義父母との絆が深まりつつあったある日、苦心して耕して来た田畑がめちゃめちゃに荒らされる。そこに残されていたのは心なき村民らの「賣国奴、入ル可カラズ」「スパイ、入ル可カラズ」なる“心ない立て札”だった。
義父母の眼に諦めの色が・・だが、幸枝はそんな悪意にもへこたれず、再び鍬を取り、田を耕し始める・・心の中で「私は野毛の妻だ・・!」と繰り返しながら・・

高飛車なお嬢様キャラを演じる前半。大人びたキャリアウーマンから幸せ一杯な若奥さんへ・・そして収監され、全ての感情を喪失したかのような荒んだ姿を見せる中盤。
1人の農業家とし「泥こそ我が化粧!」とばかりに顔面を真っ黒に染めながらも、キラキラとその瞳のみは秘められた生命力に輝く後半。
そして、農村で得た仲間たちを束ねる女性リーダーとし、自信に満ち溢れた態度も頼もしい終盤・・と恐ろしく多様なキャラ造形をさらりと演じてみせる。
当時、御年26・・と言うまだまだ華やかな年頃だったにも関わらず、こう言う“(ある意味)汚れ演技”に体当たりで挑んだのは何故だろう?!

上っ面ばかりを眺める限りは、原さんを超える現代(=平成の世)の女優さんは枚挙に暇がないだろうが、これほどまでに「複雑で華やかさのない演技を延々と要求される作品」を、誰が受けられるだろう? そして、何処までその要求に真摯に応えられるだろう?
そう考えると・・「やはり原節子、恐るべし・・!」と心より感服せざるを得ない。

〜 こんなセリフもありました 〜

幸枝「この世の中は、理屈ばかりじゃないと思うわ」
  「あの人は“本当のこと”を言っただけ。貴方にはあれだけのことは言えないわ」
  「良かったわね、貴方。“裏切り者”に成らずに済んで」
  「今の私は“生きていない”ように思えて・・」
  「この体も心も投げ出す・・そんな仕事に身を捧げたい」
  「貴方、秘密があるのね・・それを私に下さい」
  「いいの、行く先が怖くても・・私は平気よ」
  「この手はもう・・ピアノの上に乗せても似合わないわ」

八木原「正義は必ず勝つ。今年の花は散ったが、時来たらば・・また爛漫に咲くだろう」
   「華やかな自由の裏には、苦しい犠牲と責任のあることを忘れちゃいかん」 ←『スパイダーマン(2002)』系やね、、
   「諸君の中に、第2、第3・・無数の野毛を期待する」

野毛「“その日”が来る迄に、やれるだけのことを慌てずにやるだけのことです」
  「我々の仕事は、10年後に真相が分かって、国民に感謝される・・そんな仕事なのさ」
  「今でも親父に叱られるのが怖い、おふくろに泣かれるのが怖い」
  「顧みて悔いのない生活を・・!」

糸川「貴女の生命力の前では、僕なんか恥ずかしいな」

追記1:「素敵ね・・土の匂い!」冒頭の京都・吉田山でのピクニックシーンにおける、幸枝のこの何気ないセリフが、後々の“大きなフリ”となっている!
追記2:野毛に会うため、彼のオフィスビル前でいつまでも待ち続ける幸枝。ビルのドアガラスの内側にカメラを据え、定点的に“幸枝&行き交う人々の服装”を捉え続けたショットで“季節の経過を表現”する演出はなかなか! 『ノッティングヒルの恋人(1999)』での同様のシーンにも決して負けてないと思う。
追記3:「ピアノを弾く美しい手」と「田畑の傍を流れる川に浸す、汚れた手」を交互に写す、カットバックなカメラワークも気に入った☆
追記4:志村喬演じた、特高警察の取調べ係。キャスト名「毒いちご」って・・(⌒〜⌒ι)
追記5:原さんってワタシと全く同じ誕生日であることをウィキペディア情報で知った☆ 彼女の方が半世紀ほど年上ではありんすが、、

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