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2008年5月 8日 (木)

☆『姿三四郎(1943)』☆

6日(火曜)の夜、衛星第2で放送されたものを鑑賞。とうとう4連休も終わっちまったな〜と寂しい気分に浸りつつ観た次第。

本作、巨匠・黒澤明(当時33歳)の“監督デビュー作”ってことで“クロサワ映画の原点”とし、幾つかの「後作に通じる演出」が早くも練り込まれていた☆
1つに「師弟関係」・・1つに「迷う主人公」・・1つに「個性的なライバルキャラ」など。

明治15年。ふらりと上京して来た(と思しき)好青年=姿三四郎(notせがた三四郎)を主人公に、若さ故の色々な迷いに苦しめられつつも、柔道の道に邁進してゆく若者の成長を描いた快作。

何がまずイイって、主人公を演じた藤田進のキャラが素晴らしい!
不器用な言動と、朗らかなその笑顔が良いのだ。黒澤監督は、デビュー作にして、もの凄くキャスティングに恵まれたような気がする。

冒頭で心明活殺流・門馬三郎道場に入門するものの、とある展開から、修道館柔道・矢野正五郎(大河内傳次郎)を師と仰ぐことになる。この辺りの“鞍替え”も中盤に控える「門馬との試合」に繋がる巧いフリとなっていた。
本作において恐らく最も語り継がれるエピソードが、「人の道に外れた柔道だ」と師に自身の柔道を否定された三四郎が、縁側の外に広がる蓮池にいきなり飛び込み、棒杭にしがみつきながら悟りを得ようとするシーン。

早朝、杭にしがみつつふと顔を上げた三四郎の眼に「一輪の白い(?)蓮の開花した姿」が・・
すかさず彼が「先生!」と叫んだ次の瞬間、障子ががらりと開いて矢野師範が飛び出して来る演出には、思わず泣いてしまった・・

夜通し障子をぴったり閉め切り、池で震える三四郎を無視したように見せ・・実は誰よりも彼のことを心配もし、まんじりともしなかった師の姿に、である(ちょっとはしてたかも知れんが)。
こんな優しさを内包した人物、ワタシには正直、思い浮かばない。

ここで一句・・ 「 先生と 呼びて障子の 開く早さ 」(季語なし)

言葉少なくして三四郎を導く矢野と対照的に、びしばし思ったままの悪態を投げつける“和尚”のキャラも、一見「うざく」映りもするが、その実“必要不可欠”なのである。『宮本武蔵(吉川英治版)』で言うトコロの「柳生石舟斎・宗厳」と「宗彰沢庵和尚」みたいなそれぞれの立ち位置だろうか。

ライバル=檜垣源之助(月形龍之介)とのいわゆる“剣難”のある一方、対戦相手である村井半助(志村喬)の愛娘=小夜(轟夕起子)との“女難”も並行し描かれる。
どちらも観てて実にまどろっこしいんだが、そこのジワジワ盛り上げる脚本こそが、黒澤監督の狙いだろうから、観る者は決して焦ってはいけないのだ(・ω・)

どうやら本作には完全版(97分)なるものが(公開当初)あったらしいが、戦時中のどさくさに紛れ「20分間」ほどのフィルムがカットされ、行方不明となってるらしい。
その部分を苦し紛れながらも補うテロップが2度劇中に挿入されたが・・少なくともワタシとしては「蓮池のシーン」「右京ヶ原での果し合いのシーン(終盤)」が(恐らくカットなしで)しっかり残っていることだけでも、素晴らしいと思いたい☆

柔道家なのに、洋装(舶来)スタイルにこだわる伊達男なライバル=檜垣の造形はなかなか☆ 筋骨隆々なプロボクサーがスーツ姿でバリッと決め、対戦相手の試合を事前偵察に来る、みたいなシチュエーションが連想される。

(父の)武運を祈るためお参りを欠かさぬ小夜に対し、(彼女が村井の娘と知り)黙って立ち去るか・・と思いきや、戻って来て「僕がその姿三四郎です、お父上のご武運をお祈りします」と律儀に名乗るシーンは「ホンマにええ奴やなぁ」と感じた(・ω・)

〜 こんなセリフも良いのです 〜

矢野「お前の柔道と私の柔道には、天地の隔たりがある。お前の柔道は人間の道を知らん」

和尚「それは命の杭。這い上がるは無念、(じゃが)杭なくば(沈んで)死ぬ」
  「三四郎に“蓮池に棒杭を見に来い”と言ってやって下さい」

三四郎「(娘が父の武運を祈る)あの美しさ以上に強いものはないのだ」
   「この戦いは、僕たちの宿命でした」

檜垣「柔道と柔術が雌雄を決する日が来よう」

追記1:「警視廰武術大會」と書かれた巨大な会場ゲートの両脇に「龍虎相撃(右)」「武術振興(左)」と書かれてるのがちょっと面白かった。明治期はホンマに「漢字の時代」やったんやなぁ(・ω・)
追記2:戦時下のアメリカでディズニーが『ダンボ(1941)』『バンビ(1942)』を作ったのもスゴいが、本作も1943年とは、すごい時代に作られたものである。世界に誇って良いのでは? と思う。

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