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2008年4月20日 (日)

☆『ノーカントリー』☆

20日(日曜)の鑑賞。
「今日こそ、奈良方面へドライヴじゃあ〜!」と気合だけは高めてたモノの・・起きたら正午前だったので、あえなく計画を断念⇒変更(×_×)

午後から電車で大阪市内へ繰り出し、なんばの「TOHOシネマズ」で、前々から予定してた1作『ノーカントリー』をついに観て来た☆

“運命のいたずら”に“ブラックな笑い”を絡め描かせたら、世界でもトップレベルの監督である(たぶん)コーエン兄弟(ジョエル&イーサンの2人。ヒラカタ・コーエン?・・んなヤツはいね〜っての!)。今作では“喪失感”“虚無感”を全編に漂わせつつ、狙われてしまった男と狙う男、そして彼らを追う男・・の3者のドラマが“逃避行”“猟奇殺人”を軸(?)に、余すトコロなく描かれる・・

1980年、テキサス州の西。荒野でハンティングを楽しむ男=ルウェリン・モスは、偶然にも狩猟地の先に広がる谷間で麻薬取引&銃撃戦の行われた直後の現場を見つける。5台の四駆車は全て前輪がパンクし、彼らの連れていたと思しき犬までもが無惨に殺されている。
まだ微かに息のある男(メキシコ人)から「水(アグア)をくれ・・」と懇願(スペイン語か?)されたモスだが、あいにく水筒の持ち合わせはなかった。
うち1台の荷台には大量の麻薬が積み残されており、現場から距離を置いた大木の下では(深手を負いつつそこまで逃げたと思しき)男の遺体と、大きな黒いブリーフケースが残されていた。
モスがケースを開けると・・果たして中には200万ドルの大金が・・!

彼は“ひとまず”遺体から集めた銃器と共にケースを自宅へと持ち帰る。
だが、彼はまだ知らなかった。奪われたケースに仕込まれた「発信器」を辿り、メキシコ人たちが自身を追って来ることを。そして、最凶の殺し屋=アントン・シガー(ハビエル・バルデム)もまた“独自のルール”に従い、静かに動き始めたことを。

一方で、老齢の保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は州内で発生した「(シガーの手による)保安官補殺し」の捜査を開始する。
モス、シガー、保安官の繰り広げる追跡劇の先に待ち受けていたものは・・みたいな展開。

コーエン兄弟と言えば・・未だにまず思い浮かぶ佳作が『ファーゴ(1996)』ぐらいしかなかったり(・ω・)
あ、調べたら『赤ちゃん泥棒(1987)』『未来は今(1994)』も観てましたっけ、、

う〜ん・・どうだろ、本作。
最も意外だったのは“追われる立場”である(一応の)主人公=モスのキャラ造形か。追われる一方のか弱い若者か、と思いきやベトナム戦争に2度従軍したこともあるたくましい兄さんだった。殺し屋シガーは劇中で2度ほど手傷を負う訳だが、うち1度がモスによる反撃、と言うのも頼もしかった。

が、一方では物語が不必要に拡大し散漫な印象となり、主人公像もぶれ始めてた感があった。観客によっては「後半、物語世界が崩壊してましたやん!」と言う意見も(小声なりに)きっとあるに違いないし、実際そう言う見方も出来るかな、と。

物語の性質上、仕方ない部分はあろうが、メキシコ人ギャングの行動とシガーの暗躍が混ざってしまい、ワタシなどは「シガーの大暴れ」こそを観たかったので(どんなヤツだ!)生ぬるいドンパチなどは正直どうでも良かった。そのため、後半の(エル・パソの)モーテルで起こる“事件”に対して、どうにも納得出来ない演出だと思った。

※前半はモスの言動を描いてたのが、次第にシガーの言動ばかり追うようになる流れは「あ、監督のチャンネル(興味とも言う(=^_^=))が切り替わったな」と思わせてくれた(=^_^=)

保安官の名やモスの妻の名が殆ど劇中に出て来なかったのも「不親切やなぁ・・」とか。

あと、全般的に「既視感」に包まれまくったのも本作の特徴か、と・・個人的には。

・(殺人現場である)モーテルの部屋に入る保安官と、暗闇でひたすら待ち続けるシガーの姿の対比。このカットバック(=2つの映像の連続切替え)は『羊たちの沈黙(1991)』のクライマックスとそっくり。
・遠くへ歩いて行く※※※の姿・・この映し方も『羊たち〜』のラストっぽい。
・終盤、シガーが“意外な人物”に会いに行く展開は『ゼヴン(1995)』において描かれなかった「ケヴィン・スペイシーとグウィネス・パルトロゥの対話シーン」・・を連想させる。にしても、あの家の中の薄暗さと、戸外の明るさの対比にはクラクラ来ましたワ。
・老いぼれた保安官がただただ「後手に回る」描き方は『パーフェクト・ワールド(1993)』ぽくはないか?
・テキサスの乾いた空気と何処までも広がる荒野の映像は『パリ、テキサス(1984)』辺りにどっか通じるモノがあったかも。
・“不気味なヤツ”がひたすら主人公を追って来る展開は『赤ちゃん泥棒』の焼き直しっぽいかも。

他にも、色々とネタがありそうな(・ω・)

それとは別に、ふと理由もなく(直感的に)思い付いたのが
「“殺し屋”を主人公にして、物語世界を描き始めた時点で、その監督のパワーも下降線を辿り始めたと言えるのでは?」
と言う勝手な仮説ではある。
それは、かつてのフランス映画の雄=リュック・ベッソン氏に対し、近年抱き続けている感情にも似ているが・・

〜 こんなセリフもありました 〜

保安官「昔の人の話を聞く機会を、私は決して逃さない」
   「出来れば、麻薬取締局とは関わりたくない」
   「牛が相手でも、(殺す時には)何が起こるか分からない・・人間であれば尚更だ」
   「メキシコ人たちの死因? “業務上の自然死”さ」
   「オレでは、力が足りない」
   「老境に差し掛かれば、神が人生に入って来ると信じていた・・だが神は入っては来なかった。
    ま、オレが例え神でも、オレを見棄てたろうが」

モス「起こったことは・・元には戻せないのさ」

モス「黙らないと、奥で“手ごめ”にしてやるぞ」
妻「口ばっかり!」

妻「こんな夜中に何処へ?」
モス「“バカなこと”をしに行くのさ」

妻「ケガしてるのね?」
モス「何故?」
妻「声が違う・・“人をだます時”の声だわ」

妻「スーパー勤めのお陰で“悪口”には慣れてるわ」
 「正気じゃないことは、あなたをひと目みて分かったわ」
 「決めるのはコイン(の裏表)じゃない・・あなたでしょ?」

店員「そのコインに何を賭けると?」
シガー「お前のすべてだ」

シガー「それはポケットには入れるな、普通のコインと混ざってしまうからな
    ・・とは言え、只のコインだが」
   「オレが何処から来たか・・お前に関係が?」
   「“気に入らないことがあるか?”とこのオレに訊くのか?」
   「オレがどう言ったトコロで・・それが事実だろうが?」
   「自分がこれからどうなるか分かるな? 分かってる筈だ」
   「お前が(自分の)ルールに従った結果、こうなった。だとすれば、ルールは必要か?」
   「お前には自分を救うことなど出来ない」
   「仕事には“正しい道具”を使うべきだ」
   「オレの顔を見たろ?」
   「“その瞬間”が来たら、誰もがそう言う・・“私を殺す意味はない”と」

ウェンデル「単純な推理ですね」
保安官「オレも年をとったからな・・」

保安官「銃を抜いておけ」
ウェンデル「そう言うあなたは?」
保安官「オレは・・いざとなればお前に隠れる」

妻「ケガしないでね」
保安官「しないよ」
妻「他人も傷つけないでね」

※「遺体がコヨーテに喰い荒らされてないな?」
※「メキシコ人はヤツらも喰わないさ」

※「幾ら若くても、やめるべきだ・・ヒッチハイクは。・・危険過ぎる」

※「どうこの身を守ればいい?」
 「人間は、奪われたものを取り戻そうとして・・更に失うもんだ」
 「この国は人々に厳しい・・“変えられる”と思うのは(若さ故の)思い上がりだ」

ウェルズ「“優雅”とはほど遠い人生さ、この稼業は」
    「イスは座るもんだ」
    「言うなれば・・シガーは“ユーモアを持たない男”なのさ」

ウェルズ「来る途中に数えたら、このビルの階数がどうも1つ足りない」
ボス「早速、調べてみよう」

〜 ほか追記 〜

・本作ってば、コーエン兄弟の(近代の犯罪)社会に対する諦念か? それとも自虐的だが(実のトコは)不敵な我々へのメッセージなのか?(少なくとも警鐘ではなさそうだ)
・あの“オチ”は「夢ネタの一種」と評すべきか?
・“圧縮ボンベ”ネタはサム・ライミ&三池崇史の2監督辺りが狂喜絶賛しそう(=^_^=)
・もう1人の殺し屋=カーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)の劇中における殺害者数が・・ハンパじゃない!(=^_^=) ←観た者だけが苦笑出来るネタ
・本作って「全米モーテル協会(ってあるの?)」からクレームがつきそ。何だか「モテール=犯罪者の巣窟」みたいな取り上げられ方なもんで。
・濁流を泳ぎ切った“けなげな犬”があっさりと殺されてしまうシーンには、流石に怒りがこみ上げた(・ω・)

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コメント

こんばんは~

シガーとガスショップの親父との会話のやりとりに可也緊張して観てました^^
モスのエルパソでのあっけなさにはコーエン兄弟に怒りさえ感じるほどでした^^

モスの妻の実家から出てきたシガーの直後の交通事故は、モスの妻に説得されたために心の動揺が招いた結果という意見もあるようです。

シガーの運転姿勢って変でしたよね^^
免許取立ての御婦人のようなシート位置だったような・・。

投稿: ituka | 2008年4月21日 (月) 20時02分

こんばんは。
面白く拝読させていただきました。

>メキシコ人ギャングの行動とシガーの暗躍が混ざって

私もはじめはそこんところ「?」とマイナスに捉えてしまっていましたが、メキシカンはじめ他国をルーツとする人間が少なくはなく存在するこの州においては、それらの混在した犯罪こそが『ノーカントリー』と感じさせる根源であるのであると・・・そういう考え方もあるのだと聞くと、あのルウェリンの最期に関する一連のシーンも、監督の意図した展開なのかな・・・とも思えたりしました。

>このカットバック(=2つの映像の連続切替え)は『羊たちの沈黙(1991)』のクライマックスと

ここには大きく頷いてしまいましたぁ。
さすが、ですね、TiM3さん。

投稿: ぺろんぱ | 2008年4月21日 (月) 21時51分

itukaさん、ばんはです。
ようやく、観たかった作品を大体観終えましたですワ。

>シガーとガスショップの親父との会話のやりとりに可也緊張して観てました^^

序盤にあのシーンがあって良かったです。中盤(以降)だとダレてたことでしょう。
それにしても、しょっぱなの「保安官補」襲撃が“ズポンッ!”じゃないのは、演出的に理解出来なかったですね(・ω・)
アレは実に凡庸でつまらない手段でした・・

>モスのエルパソでのあっけなさにはコーエン兄弟に怒りさえ感じるほどでした^^

あの辺りの印象から「最高傑作とは言えないな」と見切ったモノです。
兄弟ゲンカしてるんでしょうか(=^_^=)

>モスの妻に説得されたために心の動揺が招いた結果という意見もあるようです。

ちゃんと信号は「青」だったと思いますが・・

>シガーの運転姿勢って変でしたよね^^
>免許取立ての御婦人のようなシート位置だったような・・。

あの辺だけ観てると「ミスター・ビーン」みたいですね(=^_^=)

※正直、ワタシが監督ならあの交差点のシーンでカメラを上空に持ち上げて行ってエンドロールとし、

それが終わった後で、運転席のドアが開くシーン・・に続けたかった所です。妙に映像が連続してたので、勿体ないなぁと感じました。

にしても「骨が出てるよ!」のセリフは“まんま”でしたね(⌒〜⌒ι)

怒ったアイツが「言われんでも分かっとるわい!」とか怒鳴りながら
“ズポンッ”“ズポンッ”と2度の「空気音」を響かせるオチでも良かったかも(=^_^=)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年4月21日 (月) 21時58分

ぺろんぱさん、ばんはです。

>面白く拝読させていただきました。

愛情ゆえに容赦なく書きました(←ってコーエン兄弟の側近の耳にも届いてねーっての(=^_^=))

>・・そういう考え方もあるのだと聞くと、あのルウェリンの最期
>に関する一連のシーンも、監督の意図した展開なのかな
>・・・とも思えたりしました。

それならそれで、せめてギャング団に対する“オトシマエ”ぐらいはトミー・リーにやっといて欲しかったです。シガーとは交わらないにせよ・・

>ここには大きく頷いてしまいましたぁ。

古今東西のサイコムービーを研究しまくったようにも感じました。
(原作小説『血と暴力の国』からしてそうだったのかな?)

もっと自分に知識があれば、更に指摘(決め打ち)出来たトコですが・・

投稿: TiM3(管理人) | 2008年4月21日 (月) 22時11分

はじめまして、コンバンハ。
ワンチェ先生と申します。
先生とか称してますが、塾講師やってるもので。
他意はございません。

今回は、BLOG PET 経由で来ました。
そして、キリぺた踏んじゃったらしく、
ご報告も兼ねて訪問した次第です。

『ノーカントリー』
すごく良い映画だったと思います。
しかし、どうしても納得いかなかったことが一つ。
これ原題は
『No Country For Old Men』
ですよね。
なんで日本では『ノーカントリー』だったのか。
この「For Old Men」って部分が
非常に重要だったと思ってしまいました。

まぁ、個人的な意見なので、
聞き流していただいて結構ですが、
邦題って、よく考えてほしいなぁ、
って特に思った映画でした。

投稿: ワンチェ先生 | 2008年4月22日 (火) 00時23分

ワンチェ先生、ばんはです。
初めまして。

>先生とか称してますが、塾講師やってるもので。
>他意はございません。

立派な先生ではありませんか。
(ワタシは)教えるのも、教わるのも向いてない性格なので、全くもって敬服いたします(=^_^=)

>今回は、BLOG PET 経由で来ました。
>そして、キリぺた踏んじゃったらしく、
>ご報告も兼ねて訪問した次第です。

そうなんですね! 有難うございます。
ただ、ブログペットって何じゃ〜いって感じで余り良く分かってません。。
「何かキミ、いっつも寝てるやんか!」って画像ですし(⌒〜⌒ι)

>『ノーカントリー』
>すごく良い映画だったと思います。

コーエン兄弟作品としては、平均点か、少し下な印象もありましたかね、、私的には。
まま、コレばかりは主観の問題ですからね(=^_^=)

>なんで日本では『ノーカントリー』だったのか。
>この「For Old Men」って部分が
>非常に重要だったと思ってしまいました。

ばっさり「オリジナルな邦題」を付けた方が良かったですよねぇ。
いっそ『ノーカントリー/HAKAISHA』とか(←また、それかい!)

>まぁ、個人的な意見なので、
>聞き流していただいて結構ですが、

そう言った、色々な意見がコーエン兄弟を変えて行くことと思います!
(いや、だから、ちっとも届かないってば(=^_^=))

投稿: TiM3(管理人) | 2008年4月22日 (火) 00時41分

こんばんは。そしてコメントありがとうございました!
こちらにはおそらく初めておじゃましたと思うんですが、
とても面白く読ませていただきました〜。

>全般的に「既視感」に包まれまくったのも本作の特徴か、と・・

以前、コーエン兄弟の映画は他の作品のいろんなシーンを
けっこう切り貼りしてるなんていう事をどこかで目にしましたが、
記憶力が悪いせいもあってか私には今ひとつピンときてなかったんですよねぇ。
今回、TiM3さんの文章を読んであっそういう事ならうなずけるかもぉと思いました。
※それにしてもTiM3さんはなんでこんなに劇中のセリフを
 覚えてるんですか! 実に驚異的や。。。。

私個人は、なぁんか漠然と面白いなぁと感じさせてくれるシーンが
ちょっと少なかったのが残念やったかなぁ。
結局一番印象に残ったのがラストシーンに出てくる自転車少年の
爽やかさ(シガーと対照的な)でしたよーん。

投稿: ゆるり | 2008年4月26日 (土) 22時00分

ゆるりさん、ばんはです。
あ、まずは「初めまして&いらっしゃいませ」でしたね。

さっきまで『カンフーハッスル』をダラダラ観てました(=^_^=)
やっぱし、チャウ・シンチーはカッコええですね〜。

チャップリンもキートンも(←古っ)そうでしたが、アクション&コメディを得意とする俳優さんって、みんな美男子ですねぇ・・

>とても面白く読ませていただきました〜。

ネタバレがなければいいんですけどねぇ・・

>以前、コーエン兄弟の映画は他の作品のいろんなシーンを
>けっこう切り貼りしてるなんていう事をどこかで目にしましたが、

共通する(監督好みの)演出や表現テイストがあるのかも。
大御所でも、過去作品の(テーマの)焼き直しや、まんまリメイクをしたりしますもんね。

>それにしてもTiM3さんはなんでこんなに劇中のセリフを
>覚えてるんですか! 実に驚異的や。。。。

それは・・暗闇で「ペンを走らせてる」からです(⌒〜⌒ι)
まだそこまでは“禁止条項”に挙がってませんからね☆

>私個人は、なぁんか漠然と面白いなぁと感じさせてくれるシーンが
>ちょっと少なかったのが残念やったかなぁ。

観客的には「血みどろのとある人物が、深夜の(メキシコ)国境をすんなり通過する」辺りで一番笑ってましたかね(・ω・)

>結局一番印象に残ったのがラストシーンに出てくる自転車少年の
>爽やかさ(シガーと対照的な)でしたよーん。

ちょっと「児童ポルノかよ」と思ってしまったりしました(⌒〜⌒ι)
妙に少年のバストアップを長く写してましたから、、

投稿: TiM3(管理人) | 2008年4月26日 (土) 23時30分

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