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2007年12月 1日 (土)

☆『炎上(1958)』☆

残業に暮れた感じの11月が終わり、12月1日(土曜)。起きた時間こそそんなに遅くはなかったモノの、何か出かける気分にもなれず「たっち君」上でFCソフト『珍説ムサシの冒険』を走らせて遊んでみたり、はたまた「たっち君」上でジャケット(画像)の表示されない音楽アルバムに関し、ちまちま画像を埋め込んだり・・
それらもひと区切りついたので、夕方からDVD版を購入しておいた邦画『炎上』を観た。

ほぼ半世紀前のモノクロ作品。三島由紀夫による原作『金閣寺』を映像化した市川崑監督の手腕は流石になかなかのモノ。昭和期のリアルな京都の映像が満載・・ともなると、コレはもはや映像遺産と呼べるのかも知れない☆

三十路半ば過ぎにて、惜しくも病気で世を去ってしまった花形俳優=市川雷蔵を主演に、ゆくゆくは京を代表する古刹“驟閣寺(しゅうかくじ)”の住職に、とも目されつつあった青年の孤独、苦悩、そしてやがては黄金の楼閣に火を放ってしまう姿を描いた展開。

この時代の映画に多く見受けられる「ぼそぼそ喋り」がやはり目立ってたので、所々で聞き取れない言葉もあったが、多少のセリフを聞き逃しても十分にフォロー出来る、ある種のシンプルさがあった(ま、シンプルながら“浅い”訳では決してないが) 反面、映像面では傷みや乱れが全く見られず、そこは驚愕させられた!

※後でパッケージを確認すると「デジタルニューマスター仕様」と記載されていた。流石!

原作通り、主人公の溝口青年(市川)が吃音の設定であり、そこに絡んで来る悪友(?)の戸苅(とがり)なる男(仲代達矢)もまた歩行に障害を持つ青年であるから、、本作ってちょっとすんなり放送出来ないような・・そんな仕上がりになっている訳である(問題発言も多いし)。。

冒頭は、木造建築“驟閣(=国宝!)”の放火消失事件後、取調室で検事や刑事部長に詰問される溝口の姿から描かれる。そこから彼の回想が始まり、その回想の中で更に「父の死」などの回想が二重構造で描かれる面白さがあったり。

以前、実相寺昭雄監督の初期長編(?)『無常(1970)』を観たときも感じたが、この手の「反骨的な物語(と単に評して良いか分からないが・・)」に登場する“アウトロー”たち(本作での仲代、『無常』では田村亮)のしたたかな言動&生き方って、何ともパワフルやな〜と驚かされてしまう。
やってること、言ってることはメチャクチャなんだが、そのメチャクチャさが偽善や平静を取り繕っているその(作品)世界の中にあって、実に生き生きと輝いているのだ。
前述の“問題”により、テレビ放送はほぼ絶望視せざるを得ないんだが、機があれば、是非観て頂きたい1本ではある。尤も、後味は決して良くないンだけど。。

仕方がないとは言え、惜しいのはやはり全編モノクロである点。乱暴な意見とは承知の上で、是非劇中に描かれる“驟閣”を全てパートカラー処理で「金色に再現」した映像を何とか観てみたいものだ(・ω・)

元ネタである“金閣・舎利殿”に比べると、どっしりした三層の楼閣ではなく、どちらかと言うと正方形型の二重塔として登場したのが本作の“驟閣”。屋根にも鳳凰像でなく、通常の相輪が配されていた。
しっかりと木造塔を建造し、終盤で火を放っているトコロ、スタッフの本作にかける意気込みを感じた・・反面、木造塔好きなワタシとしては「燃やすのはミニチュアにしといて、どこかの寺(←関西圏きぼん(=^_^=))へ移築(寄贈)して欲しかったよなぁ〜」と思ったものだ。

DVD付属のブックレット内の市川監督インタビューによると、金閣寺住職からの注文により「作品名」「登場する寺の名」を修正したところ、すんなりOKが出たそうだ。インタビュアーが苦笑まじりに言ってるように「その程度の改変をしても、誰が観ても『金閣寺』の映画化と分かるのに」と言うのはあるンだけど。。
(冒頭では「登場する人物及び背景はすべて完全に架空のものである」みたいな注釈がどど〜んと出るが)

〜 こんなセリフが印象的でした 〜

老師「寺にいる人間やから言うて、誰も彼もが“仏さま”と言う訳にはいかん」
  「“終わったこと”を、今さら言い訳して何になる?」
  「知っても分からなければ、それは知らぬも同じことだ」
  「学生同士の(カネの)貸し借りに“利子”などと言うことは認められません」
  「仏の裁きじゃ・・」

母親「万一、京都が空襲されても、驟閣寺みたいな“勿体ないお寺”は、きっと焼けしまへん」

溝口「この驟閣で火に焼けて死ぬんやったら・・本望や」
  「暗い毎日をたった1人で生きることを覚えたら・・人とすらすら話しが出来んようになるんや」
  「驟閣は誰のものでもないんや、はじめからそこにあって、はじめから奇麗やったんや。
   それを皆が金儲けの道具にしようとかかってるんや。
   ・・驟閣は生きてるけど、変わらへん」
  「俺のすることは、たった1つ、残っているだけや」

戸苅「孤独になれば、お前も俺のように“超越”して暮らせるようになる」
  「他のヤツらが馬鹿騒ぎしてる時間を、俺は“人間を観る”ために使うのだ」
  「面白いものなんか、何処を捜したってあるものか!」
  「驟閣など、ただこれまで天災に遭わなかっただけの理由でやっとこさ残ってる建物だろ?」
  「俺は死なんよ。早ぅ死ぬ人間は、どっかにひ弱いところがあるんだ。しぶとう生きる人間は
   そう簡単には死なん」  
  「世の中が変われば、坊主だって変わる。殊に、厳しい戒律の中で暮して来た人間は
   カネの力にはもろいからな」

まり子「ここ(遊郭)が焼けたらえらいこっちゃけど、そんな寺が焼けても焼けんでも
    どっちでもよろしやないの」 ←演じたのは、若き日の中村玉緒(!)

追記1:溝口の通ってるのが「小谷(こたに)大学」と言う設定には、ちょっと苦笑させられた。まんまですやんか。。
追記2:ご覧頂くと分かるが、ラストの展開が原作と違う。スパッと作品を終わらせる意味では良いのだが、ああなると母の運命とダブってしまってる感じがするなぁ。
追記3:本作、タイトルもまんま『金閣寺』として1976年に再映画化されているそうだ! 主演:篠田三郎、共演:加賀まりこ。参考サイトはこちら ↓

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD20053/story.html

※無断リンクですみません。(にしても、今度はすんなり金閣寺側の許可が下りたのね・・)
追記4:「カラーで本作を!」と訴えてしまったワタシだが、製作当初から市川監督の胸中では「モノクロで作らせてくれなきゃ、やめる」との意思が固かったようだ(インタビュー記事より) 監督曰く「カラーだと描きたい炎の赤が白々しく仕上がってしまう。白(炎)と黒(驟閣)のコントラストによる格調を狙いたかった」とのこと。そうおっしゃられると・・シロウトはもう、黙るしかありまおんせん(×_×)
追記5:もしまた、再映画化する機があるなら、私的には荒川良々氏にぜひ主演をお願いしたい。結構雰囲気を出してくれるハズ・・
追記6:ワタシの中では、本作(原作)を中心に、水上勉『雁の寺』とか、円谷プロの秀作特撮ドラマ「怪奇大作戦」の『呪いの壷(第23話)』『京都買います(第25話)』などと物語世界がリンクされてしまっている(・ω・)
追記7:不謹慎ではあるが・・私的に映画化して欲しいのは“谷中五重塔放火心中事件(1957)”であろうか。この時期に官能芸術作品(?)として公開すれば、その話題性が“塔再建の起爆剤”となるように思う!

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