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2007年11月30日 (金)

☆『いつか読書する日(2004)』☆

※溜まってる映画メモをまとめた記事です。

7日(水曜)の夜。衛星第2で放送されたものを観た。「静かに燃え盛り、やがて散ってゆく」・・そんな中年男女の恋模様を描いた佳作である。
実を言うと、あんまし期待してなかったんだが・・『コキーユ(1999)』同様、たぶんワタシの心の奥底に、ずっと生涯に渡り記憶(の片鱗)の残されてゆく・・そんな作品となるんではないか??
現時点で、そう思っている映画である(←大げさやな〜)

早朝に「田畑牛乳店」の牛乳配達を、その後「Sマート」でレジ打ちのパートをし生計を立てている50歳の未婚女性・大場美奈子(田中裕子)。
そんな彼女と町なかで微妙にすれ違いつつ、市役所職員(児童課)としての決まり切った日々を積み重ねる高梨槐多(かいた)(岸部一徳)。
2人は実は35年前の若かりし日、中学校の同級生であり、ほのかな恋心を互いに描き合っていた仲でもあった。

現実には、高梨には重病の妻・容子(仁科亜季子)がおり、彼女の介護を第一に考える彼は、とにかく余計な言動に時間を割くことを避け、自宅と職場を往復するだけの男だった。

そんな中、「Sマート」で常習的に万引きをする少年の保護を巡り美奈子と槐多は急接近することとなる。

自らを律し、ひたすら無関心を装う夫に対し、容子は“ある決心”をし、毎朝牛乳の届くポストに配達人=美奈子へ宛てた手紙をそっと忍ばせるのだった・・そんな展開。

本作で「直感的に感じた」のは・・「死が迫った時、人の感性は鋭敏になるのかも」ってことだろうか。
寝たきり状態の容子が、真夜中にむっくりと起き上がり、癌に蝕まれた躯に残された“最後の力”を振り絞って部屋を出、玄関のポスト(牛乳箱)へと向かう・・その姿に「このシーンは幻想なのではないんだろうか?」「大仕事を済ませベッドに戻った時、きっと彼女の躯は冷え切っていたんだろうな」などと色々な想いを巡らせた次第だ。

夫の、長年秘めて来た想い・・を的確に見抜いていた病床の妻。
亡くなりゆく存在に対しては、憐憫と言うよりも、直接的な恐怖を感じてしまうものなのかも知れぬ、家族と言うものは・・
(ときに「配達された牛乳を殆ど飲まず、流しに棄ててる槐多」なる描写は秀逸である!)

一方で、半ばコミカルに「認知症老人」の日常が描かれる。
午前6時に新聞を手にトイレに入り・・出て柱時計を見上げたら午前10時。
妻の姿は見当たらないが、入れたてのお茶がテーブルに置かれ、湯気を立てている。
家じゅうに妻の姿を捜し、やがて台所へ戻れば午後4時。
テーブルの上の器がいつの間にか増えており、湯気を立てている・・

妻がいなくなった“事件”を何かに例えたいが、巧く言葉が出て来ず・・最後に捻り出されたのは
「マリー・テレサ号??」などと言うトンチンカンな船舶の名前だったり(⌒〜⌒ι)

ああ、将来はこんな感覚に陥ってしまうのやろか・・(×_×)

細い坂を「よしっ!」と気合を入れ上ってゆく女がいたり、
一方で棺に入り、無言でその坂を下ってゆく女がいたり。
そう言った“対比映像”も独特のセンスで描かれており、印象深かった。

最後の最後に美奈子と槐多とは結ばれるのか? そしてその後は・・?

本作における岸部一徳氏を観ていて、ふと連想したのは『顔(2000)』における切ない役柄だった。あちらもショッキングでやるせない運命を迎える同氏なのだが・・本作では「ラストで確かに笑っていた」のがまだしも救いになっていたかな、と。

・・にしても「ずっと思って来たこと、したい!」「全部、して!」の激しくエッチなやり取りには何とも圧倒された(⌒〜⌒ι)
本作を沢田研二が観たとして・・どんな批評を妻(田中)にするんやろね??(・ω・)

〜 こんなセリフもありました 〜

妻の手記「全てが判った朝だった」
    「もしこの願いが届いたら・・私も救われると思うのです」

槐多「あの・・50歳から85歳って長いですか? 今、50歳なんで・・」

↓ 問われた老人の答えは、さぁどっち?!(=^_^=) ↓

A)「あっと言う間さ」
B)「長ぇぞ」

敏子「ふと思うのよ。貴女に別の生活とか、人生があったんじゃないかって」
  「この人(認知症の夫)ね、昔に向かって生きてるのよ、どんどん元気になっていく」
  「2人とも長生きしてね、色んなことが分かって行くから」
  「若い頃にね、奪ったんだ、妻子のいたあの人を・・その時に決めたんだ、絶対にこの人を看取ってやるって」

同僚「最近やけに熱心だな」
槐多「仕事だし」
同僚「そうだな・・だが前はそうじゃなかったろ?」

ラジオの女性DJ「恋愛って、片想いの時が一番幸せだったんじゃないかな?」

容子「労らなくていいの、うそつかないで本当のことを言って欲しい」
  「自分の気持ちを殺すって、周りの気持ちも殺すことなんだからね」
  「蚊が飛んでいたけど・・私を刺してもくれない」

槐多「オレさ、若い頃に「平凡に生きてやる」って決めたんだ・・今まで必死でそれを守って来た」

美奈子「私、つまんなそうな女ですか?」
   「これからは・・本でも読みます」

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コメント

因みに本作のロケ地は「長崎」だった。

市電のある街って、やっぱりエエですね〜。

助演で頑張ってたのが「Sスーパー店長」を演じた香川照之と、槐多の亡き父・陽次を演じた杉本哲太。

和製マット・ディロン(杉本)と和製ケヴィン・スペイシー(香川)の共演とは、コレなかなかに豪華である(=^_^=) ←似てるかぁ?(=^_^=)

投稿: 管理人(TiM3) | 2007年11月30日 (金) 00時22分

「Sスーパー」じゃなくて「Sマート」ですた。ぎゃふん!

投稿: 管理人(TiM3) | 2007年11月30日 (金) 00時23分

こんにちは。
私もこれは何度か思い出す作品になりそうです。

で、先日に観て以来、今思うことは「カイタは二度、美奈子を置いてけぼりにしてしまったことになるんだなぁ・・・」ということ。
二度目はもうその存在と微かにせよ触れ合うことすら出来なくなってしまった、なんかそのことが凄く悲しいです。

ところで!
>和製マット・ディロン(杉本)と和製ケヴィン・スペイシー(香川)
似てます似てます!
なるほど、です!(*^_^*)

投稿: ぺろんぱ | 2007年12月 1日 (土) 13時34分

ぺろんぱさん、ばんはです。

今日は終日(ひねもす)家でゴロゴロしてました。
明日には、気分転換に外出したいっす〜

>私もこれは何度か思い出す作品になりそうです。

女性の静かながらもしたたかなパワーを感じますね。
田中さんも仁科さんも強かったです。

>「カイタは二度、美奈子を置いてけぼりにしてしまったことになるんだなぁ・・・」ということ。

次の場所で奥さんに「あんた、早くこっちに来過ぎ!」と叱られてそうですね(⌒〜⌒ι)

>二度目はもうその存在と微かにせよ触れ合うことすら
>出来なくなってしまった、なんかそのことが凄く悲しいです。

いやでも、また彼女なりの毎日に戻ったような「穏やかさ」を
ワタシは感じましたね。
女性はやっぱり強いと思います。

>和製マット・ディロン(杉本)と和製ケヴィン・スペイシー(香川)
>似てます似てます!

願わくば、舞台劇版の『メリケン美人(原題:American Beauty)』で、主人公のレスタァ・バァナム氏を演じて欲しいですね、香川さんには(=^_^=)

※終盤で(クリス・クーパー似の)小松まさお氏とキスしたりして・・(ううっ)

投稿: 管理人(TiM3) | 2007年12月 1日 (土) 21時29分

ぺろんぱさんの「映画で描かれる認知症」から飛んできましたです。ここでのコメント返しの中で、
いやでも、また彼女なりの毎日に戻ったような「穏やかさ」をワタシは感じましたね。
て書かれていますが、自分もそのように感じてたもんで、軽い衝撃を覚えました・・。

それと、クリス・クーパーと小松さんはほんま”似てるっ!”と思います。(キッパリ)

投稿: ビイルネン | 2008年10月26日 (日) 22時08分

ぺろんぱさんの「映画で描かれる認知症」から飛んできましたです。ここでのコメント返しの中で、
いやでも、また彼女なりの毎日に戻ったような「穏やかさ」をワタシは感じましたね。
て書かれていますが、自分もそのように感じてたもんで、軽い衝撃を覚えました・・。

それと、クリス・クーパーと小松さんはほんま”似てるっ!”と思います。(キッパリ)

投稿: ビイルネン | 2008年10月26日 (日) 22時08分

ビイルネンさん、ばんはです。

急に冷え込んで来てますねぇ・・

そういや、また旧作のリメイク『いつか地球が静止する日』
ってのもあるんですね〜 ←「いつか」はタイトルに付かねぇよ!

>て書かれていますが、自分もそのように感じてたもんで、
>軽い衝撃を覚えました・・。

愛する女を失った男は比較的早死にするが、
愛する男を失っても女はしたたかに生きる

って統計(?)をどっかで耳にしたように思いますが、
まさにそんな印象を受けましたか。

>それと、クリス・クーパーと小松さんは
>ほんま”似てるっ!”と思います。(キッパリ)

職場の映画の師匠(?)との間では「小松クーパー」の名で
すんなり通ってます(=^_^=)

しかしこれでは「小松氏」をさしてんのか「クリス」をさしてんのか、正直良く伝わんないですよね(苦笑)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年10月27日 (月) 00時05分

ー女はしたたかに・・ーとかそういうのではなく、もっと複雑な説明しきれない感情の後の「穏やかさ」と感じたわけで・・。
急展開した状況にとまどう間もなく亡くなった大切な人への悲しみよりも、今後背負っていくだろう心の葛藤を逃れたことに「穏やかさ」を感じようとしているように見えました。(うまく表現できませんが・・)

投稿: ビイルネン | 2008年10月27日 (月) 01時09分

>そういうのではなく、もっと複雑な説明しきれない
>感情の後の「穏やかさ」と感じたわけで・・。

ワタシは(女性心理が掴めていないのもあり)
「そう言うのも(表現は不適切かも知れないけど)ある種のしたたかさかなぁ」
と思う気持ちがありますねぇ(・ω・)

ビイルネンさんには、やはり抵抗のある表現でしょうけどね・・(⌒〜⌒ι)

投稿: TiM3(管理人) | 2008年10月28日 (火) 07時42分

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