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2007年8月22日 (水)

☆『出口のない海(2006)』☆

19日(日曜)。「日曜洋画劇場・終戦特別企画」として地上波初放送されたものを観た。

第2次世界大戦末期、既に敗戦が色濃くなりつつあった“大日本帝国”の命運を変えるべく、人間魚雷“回天”に乗り込み、生命を散らして行った学徒兵らの物語。
“エビちゃん”こと、市川海老蔵の映画初主演作であり、原作は横山秀夫。映像化にあたり脚本執筆陣に山田洋次がその名を連ねている!(←共同脚本だが)。
ほかの出演者に、香川“イチゴ娘”照之、伊勢谷“キャシャーン”友介、上野“のだめ”樹里、古手川祐子、三浦“その火を飛び越えて来い!(=^_^=)”友和など。
キャスト面で眺める限り、なかなかに豪華な顔ぶれである。

物語は、明治大学野球部に属する球児(ピッチャー)=並木浩二少尉(市川)の海軍志願に始まる。
そして戦争・・やがては死への避けられ得ぬ(運命の)流れを軸に、彼が家族や学友、そして恋人と過ごした日々を時折回想したり、軍事訓練を経て(潜水)艦内生活を送る(現在の)時間を綴ったりする進行で展開される。

特筆すべきは、焦点を“回天”なる「“戦後生まれ”には耳慣れぬ名称なれど、決して忘れてはならぬ忌まわしき兵器」のみにほぼ絞り切ったことであり、「原子爆弾」や「(終戦を国民に告げる)玉音放送」などの(太平洋戦争を語る上で筆頭に挙げられるべき)要素(≒事件)は、意図的に(脚本から)割愛されたように感じた。
そのため、本作を単体で観た限りでは、決定的な敗戦に突き進んで行く日本の姿&動きは(マクロ視点的に)伝わりにくかったかも知れない。
が、大真面目に“回天”を用いた演習を繰り返す兵士らの姿には何とも言えぬやり切れなさと、少なからぬ狂気が感じ取られ、改めてゾクッとするのだった。

“回天乗り”の中でも、ライバル関係とし描かれる、並木少尉と北中尉(伊勢谷)の確執や価値観が、当時の思想(“小声のホンネ”や“声高なタテマエ”)を直球で伝えてくれもする。それは、彼らが最期に辿り着く、それぞれのセリフに現れている。

北「特攻は最高の名誉だ、軍神と成れる」
 「このまま(死ねぬまま)戦争が終われば、俺は一生“生き恥”をさらすことになる」
 「俺に残された道は、特攻を完遂させて“軍神”になるしかないんだ」

並木「本当のところ、(特攻で)死ぬ覚悟なんて、何も出来てやしなかったんだ」
  「俺はな・・“回天”を伝えるために・・この悲しい“事実”を(後世に)伝えるために、死ぬ」


さて、抑揚ある演技を封印(←いつまで続けてるんだ?)した感じの“エビちゃん”は「まさに本領発揮!」って感じで、水を得た魚の如く感情を抑えた言動で本編を泳ぎ切った(←尤もこれは言葉のアヤであり、物語上では泳ぎ切れなかったのだが)。もう“ラディッシュ・アクター”と評しては失礼だろう(・ω・)
彼につられる形でか(?)本来は明るい役柄の多い(←増えて来た)上野嬢までが、何やら眉をひそめっ放しな印象だった。。(そういや彼女ってば、昨年にTV放送されたドラマ『僕たちの戦争』でも特攻隊員(森山未來演じる)を恋人に持つヒロインを好演されてたっけな)

『ローレライ(2004)』も潜水艦内に搭載された“究極兵器(?)”を軸に進行するハナシだったが、本作の方がより“密室感”は高かったように感じた。これには「敵そのものの姿が殆ど描写されなかった」ことや「“回天”が射出された時点で、乗組員キャラの出番がスッパリ切り落とされてしまう」こと、など・・思い切った脚色の簡素化が手伝った故かも知れない。

ワタシが不満だったのは、香川演じる潜水艦長や、永島敏行演じる海軍将校が、さんざ若い命を死に追いやりながら、自身の「人間的な言葉」を殆ど吐露してはくれぬままに、物語が幕となってしまった辺りだろうか。
自決せぃ、とまでは言わないので、せめてその後(戦後)の人生・・そしてそれぞれの「ホンネの言葉」を他人の口を借りてでも構わないので、語らせて(残して)欲しかった。

一方で、並木の人生は意外な形で終わってしまうのだが、あのエンディングにするよりは(後日談の枕崎台風など描かず)「ただ海底に眠る※※の姿を長回しで映す」のみで良かったんじゃないかな、と。
(作品では)神々しさよりも生々しさが前面に出てしまいイマイチな演出だったぞ。

ラスト、やっぱり「その※※※を海に投げるご老人の姿」には「お茶を濁された」と言うか・・結局『トップガン(1986)』で『タイタニック(1996)』な呪縛からは逃れられんのかよ・・と悲しくなった。

ってことで、着眼点(“回天”を描くと言う)までは素晴らしいのに、細かい“小技”がいちいち鼻にツイて、どうにも後味の悪い作品だった(・ω・)>

〜 こんなセリフも語られていた 〜

艦長「後は金比羅様にすがるしかないだろう」
  「今までは金比羅様のご利益で何とか生きて来られたが」←あんた、神仏頼みばっかし(×_×)
  「辛いな・・出撃命令は。“死ね”と言うことだからな」

並木「いずれ(赤紙は)来るのさ」←召集令状のこと
  「敵、敵って言うが・・彼らにも愛する家族がいるんだ」
  「有難う、お前と会えて良かった」
  「僕の見ることが出来なかったものを、僕の代わりに見て欲しい。
   (中略) そして、(僕が死んで)1年が過ぎたら、僕を忘れて欲しい。
   (中略) そして、生きて、生きて、もう嫌だと言うまで生き抜いて欲しい」←遺された手記より

喫茶店マスター「(そんなことを言うのは)おやめなさい。誰が聞いているか分かりませんよ」

将校「天を廻(めぐ)らし、戦局の逆転を図る・・名付けて回天」

父親「そう言うお前は・・“敵”の姿を見たことがあるのか?」
  「国とは・・いったい何なのだろうな?」
  「そうか・・お国のために、行くのか・・」

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コメント

劇中で何気なく「上坂貫十」なるバス停(の看板)が映ってた。

妙な地名やな〜とその時は思ってただけだったが、後でそのメモをネットで調べてみたら・・(・ω・)

東京都中野区の「十貫坂上」が正しいことを知った!
そか、戦時中は右読みだったんやもんな(⌒〜⌒ι)

看板ウォッチング的(=^_^=)に観た本作、他にも
「代書屋」とか「助産所」とかあった。

※私的には「助産院」てな表記の方がすんなり理解出来る気がするかな。まぁ現世では当分、ご縁はなさそですけど・・(・ω・)

投稿: TiM3(管理人) | 2007年8月25日 (土) 13時45分

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