☆『リアル/完全なる首長竜の日』☆
16日(日曜)の夜。
久しぶりに市内のシネコン“MOViXココエあまがさき”へとドライヴがてら繰り出し、レイトショー鑑賞したのは・・「世界のクロサワ」こと(?)黒沢清を監督に迎え、佐藤健+綾瀬はるかのW主演で描かれた恋愛SFミステリー(?)『リアル/完全なる首長竜の日』だった。
さて・・
今春から兵庫県民となり、意外とご近所にシアター数の多くなったのは嬉しい限りだが・・色々とプライベートが忙しく、なかなか足を運べないのが悲しいトコだ。コレが昨年の今頃だったら“最優先事項”としてシネコンにもっとガンガン突進してたハズだったろうが・・
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“売れっ子ホラー漫画家”である愛妻=和敦美(かず・あつみ:綾瀬はるか)が、湾岸の堤防から謎の入水自殺未遂を起こし、意識を失って1年。藤田浩市(佐藤健)は首都圏にある先端医療センターを訪れる。
担当の精神科医=相原(中谷美紀)の提案で、昏睡状態が続く敦美の“意識”に入り込み、直接的な対話を行えると言う、最先端脳神経外科医療術(?)『センシング』の被験者となった浩市。
敦美の意識の中では・・彼女は高層ビル群を遠くに望むマンション自室で、締切に追われながら漫画を描き続けるのだった。
自室に閉じこもったまま、戸外(=現実世界)へ出る(=戻る)事を頑(かたくな)に拒む敦美。
連れ出そうとする浩市に対し、彼女は「小学校の頃、私が首長竜の絵を描いた事、覚えてる? あれが今、何処にあるのか捜して、此処へ持って来て欲しい。“完璧だったあの絵”をもう1度眺める事が出来たら・・漫画家としての自信を取り戻せそうな気がする・・」と要求する。
首長竜の絵とは? そしてそれは何処に? 浩市は『センシング』の回数を重ねつつ、更なる敦美への“対話”を試みる。
その結果、問題となる絵が、どうやら2人の故郷である“飛古根島(ひこねじま)”に隠されている事を掴んだ夫は、妻を現実の世界に連れ戻す(=寝覚めさせる)ため、15年ぶりに島に帰る事を決意するが・・
※
高松勤務の頃、確か浜※淳さんの朝の某ラヂヲ番組内だったかと思うんだが・・本作に関する事前情報を仰ってたのを耳にした事があり「面白そう~!」と直感した覚えのある作品である。
関西に戻り「お、まだ観れるんや!」と都合をつけたワケだが・・(結果的に)何となく微妙な完成度だったのは否めない。
冒頭からは『インセプション(2010)』『マトリックス(1999)』『ザ・セル(2000)』『パプリカ(←映像化作品(2006)は未見。原作小説版)』辺りの世界観を連想させられたが、次第にホラー&スプラッターのテイストが強まってゆき『呪怨(2003)』やデヴィッド・クローネンバーグ的な“ワケわからん世界”が繰り広げられた。中盤から後半にかけては『サイレン/FORBIDDEN SIREN(2006)』そして『ジュラシック・パーク(1993)』の印象がかなり強い感じだったろうか。
ラストは『トータル・リコール(1990)』『オープン・ユア・アイズ(1997)』を彷彿とさせるテイストで幕。
少なくとも本作(映像作品とし)が『インセプション』より前に世に出てたら「おお、エエ感じやね!」と健闘を称えたい気持ちにもなったろうが、残念ながらそうではなかったため「二番煎じ」「迷走気味な実験映像を延々見せつけられたなァ」ってな想いが募った。
ジャンルも良く分かんない感じで、怖がらせたかったのか、夫婦間の絆&愛を描きたかったのか、恐竜系CGの出来を誇りたかったのか、過去のリゾート開発ブームを批判したかったのか、どれに絞ったにせよ「イマイチ」だった。
『トウキョウソナタ(2008)』ではその手腕に唸らされた黒沢監督だが、こと「SF絡みの恋愛モノ」については、全然“本来のパワー”を出し切れてない気がしたなぁ。このしとは、もうちょっと「より現実的で、描きたい事を絞った」作品を撮るのが向いてるように思う。
~ こんなトコも ~
・中盤辺りから「またコレかい!」と突っ込める「手垢が着き過ぎ、驚きの全くない展開」に突入した。
・「スカッと騙される心地良さ」でなく「これまでさんざ見せつけられて来た映像・演出を根底からひっくり返された腹立たしさ」のみが残った(⌒~⌒ι)
・主人公の入れ替わる「2部構成の要素」は面白いかな。もう少し“同じシーン”をカメラワークを変えたりして映し出して欲しかったトコだ。
・初期の(主人公2人の)服装によるイメージづけは「夫:白」「妻:黒」だったが。。
・本作の設定がいつか実現したら・・「他者の意識下への“強引な潜入”に対する法的整備」が行われたりするのかも知んない。。
・先端医療センターの外観や詳細な設定、インターフェイスの構造などが詳細に描かれなかった。コレじゃ説得力にも欠けるワケだ。
・「1年前までスポーツジムでバイトしてた」ってな、浩市にまつわる具体的な職業設定は、どっから造られたんやろ?
・あちこちに転がる御遺体描写は、、リアルでグロテスクで・・ぶっちゃけ「無意味」だった(×_×)
・てっきり“トシオ君”かなと思ってたら、本作では“モリオ君”だった(=^_^=)
・“モリオ君”の「モリ」は、ラテン語“memento mori”から来とるんやろか?
・シーンにより『ミスト(2007)』『ミッション:8ミニッツ(2011)』なども連想した。
・本作で知った“フィロソフィカル・ゾンビ”なる用語は、勝手な造語でもなさそうだ。
・首長竜=ネッシーかなと思ったが「生息地が異なるだけ」と理解しとけばよろしいんでしょうか?
・そこそこの売れっ子漫画家ともなると、休載中にアシスタントが代わりに描いて発表する、ぐらいの芸当は容易く出来るらしい。
・コルト・ガバメント(拳銃)の装弾数=7発って事で(・ω・)
・宙に浮かぶペンの仕掛けは「単なるCG」らしい(×_×)
・街の風景が上空に向かって(絵の具のように)溶け出す・・って描写があったが「・・う~ん」って感じだった。
・浩市がいきなり首長竜を描き始めるんだが、これがムチャクチャに巧かった(=^_^=) 誰もが「なら、お前が描けよ!」と突っ込む、本作屈指の名シーンだと思う。
・和敦美の初期読み切り短編作品『もげもげ島』に興味津々。
・コミックブレイン編集部は東京・水道橋に存在する設定らしい。
・劇中で「7月31日(火)」のカレンダーがあった。2012年の物語って事やろか?
・エンディング曲の「REM」は、ミスチルっぽい歌い方やな~と思ってたらその通りだった。最近はこんな曲風なんか。
・八丈島や牧之原市(静岡県)がロケ地となってた。
・中谷美紀の「思わせ振りな言動」は何だったんた?
・浩市の母(演:小泉今日子)の現亭主と、浩市の亡き父親の「不在感」には、妙に心をザワザワさせられた。
・佐藤健って「6~7部丈ズボン」が似合い過ぎる!!
・“シトロエンC3(フロントガラスのデザインがカッコいい!)”に乗る浩市と高木(演:染谷将太)のシーンの合成は「酷過ぎ」なレベル!(意図的なんやろけど?)
・オダギリジョー(沢野役)、中谷美紀の“立ち位置の後退ぶり”に何だかしみじみ(×_×)
・大河主演をこなしつつの綾瀬さんの頑張りは凄い!! 流石はホ※プロ!
・全く本筋や主人公らに関係ないゾンビキャラが多かった。
・終始不機嫌だった松重豊さん(某父親役)・・綾瀬さんとの「リアル会話シーン」の皆無だったのがちょっと笑える。スケジュールが合わんかったんか?
・「現実世界に虚像の紛れ込み出す展開」は「どちらが、どこからが現実か?」って部分で、正直観てて疲れる(=^_^=)
・生活感のない医療スタッフの面々こそが“フィロソフィカル・ゾンビ”に思えて来たり。
・将来、夫婦ってものはこんな風に「まだら認知症・記憶の捏造&ご都合修正」を積み重ねて老けて行くんやろか?
・「昏睡状態でも存在感ある綾瀬さん」「其所までのレベルには至ってない佐藤くん」の差が見受けられた。
・こんな綾瀬さんだったら『トーク・トゥー・ハー(2002)』の看護士みたいな役回りで、色々とお世話したげたいトコだ(こらッ!)
・リゾート開発は「15年前」との事だから、1998年前後の設定なんやろか? ワタシの中では、記憶的に新し過ぎて、全然昔話じゃないんですけどぉ・・
・『センシング』直後の「運転行為」はちょっと危ない、、
・エッチは当然として、キスらしいキスもハッキリ描かれなかったような、、それで恋愛モノですか(・ω・)
・本作が「八丈島観光」に繋がれば良いんだけど。
~ こんなセリフもありました ~
浩市「消えない・・どうして?」
「外に出て、行けるとこまで行ってみよう」
「多分、此処が(意識の)限界だ」
「“それ”に近付いちゃダメだ!」
「悪いけど、俺は戻る」
「ウソだろ・・」
「やっぱり俺は“赦されない”みたいだ」
敦美「悪いけど、今、あんまり相手出来ないんだ」
「“首長竜の絵”って、覚えてる?
・・完璧だった絵・・まだどっかに仕舞ってある?
捜して来て呉れないかな?」
「いったんペンが止まると、心がふわふわして来る」
「漫画は私の人生」
「怖いけど・・此処から出たい」
「此処は私の意識の中だもの。
だから・・どうにでもなるんだ」
「私から漫画を取り上げないで」
「あなた達に私の漫画が分かるわけない」
「これが私・・眼が醒めても忘れないで」
「ずっと待ってた・・外に出たい」
「漫画を描いてない自分の事を思い出せない」
「やっと逢えたね」
相原「最初は誰でも不安になるものです」
「ちょっと“夢をみる”感覚です」
「是非探してみて下さい、その絵」
「今は医療を信じて下さい」
「まだ“その船”に乗っちゃダメよ!
すぐに降りなさい!」
「・・やり遂げたんだ」
父「どうなってると思ってたんだ?
“夢のような未来の風景”が広がってるとでも思ってたのか?」
「悪いのは誰だ? 誰がこの責任をとるつもりだ?」
妻「どうしてかな?
生まれてからずっと、こうして一緒に暮らしてる気がする」
夫「これからだって、そうだよ」
夫「生まれてからずっと、ずっとこうやって
俺の意識の中にお前がいたような気がして」
妻「これからだって、ずっとそうだよ」
浩市「どうしたらいいでしょう?」
相原「どうしたいですか?」
追記:間違っても「アラブ首長国連邦」を「くびながこくれんぽう」と読んではならない(=^_^=)
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