☆『トランセンデンス』☆
先月、8月3日(日曜)の夜。ご近所のシネコン「MOViXあまがさき」にて“レイトショー”で観たのは、ジョニー・デップ主演(?)のSFサスペンス作『トランセンデンス』だった。
公開前には予告編をイヤと言うほど見せられ(?)、ナレーションを担当されたエンケン(遠藤憲一)さんの「・・トランセンデンス・・」っちぅタイトルのご発声に、妙に期待値を高められたモノだった(=^_^=) ←人違いだったらすんません(×_×)
しかしながら、だ。
本作をスペック面で(冷静に)眺めた場合、注意を払わなければならないのは「監督がクリストファー・ノーランでなく、ウォーリー・フィスター」って点だろう。
このフィスター氏と言えば、ノーラン監督とのタッグで『メメント(2000)』『インソムニア(2002)』『バットマン ビギンズ(2005)』『プレステージ(2006)』『ダークナイト(2008)』『インセプション(2010)』『ダークナイト ライジング(2012)』などの作品群で撮影を手がけており「映像を捉える事」に関しては確かにベテランなんだろうけど・・ 監督としては本作が“デビュー作”って事で「作品を総合的に捉える事」が出来はるのかどうか、多少は警戒しとくべきだった(⌒〜⌒ι)
※
カリフォルニア州バークレー。かつて繁栄を誇ったこの街は、荒廃した都市へとその姿を変えていた。
人々が食料(例:乳製品)を渇望し、家庭から電化製品(例:冷蔵庫)のなくなった世界。往年の“コンピュータ時代”を象徴する入力装置=キーボードは、今や「ストッパー」の代わりにドアの隙間に挟まれるだけのガラクタと化していた。
マックス・ウォーターズ博士(ポール・ベタニー)は、凋落した街を歩きながら、5年前を思い返していた。
“世界最高の頭脳”とし自他共に認められていたキャスター博士夫妻と一緒に、リバモア国立研究所で働いていたあの頃を・・
・・
最新の人工知能システムを搭載する量子プロセッサ「PiNN(ピン)」を研究開発した科学者=ウィル・キャスター(デップ)と妻エヴリン(レベッカ・ホール)は「感情や自我を持つ、自立した人工知能」を目指していた。
『EVOLVE THE FUTURE(未来に進化を)』をテーマに基調講演を行うウィル。しかし“UNPLUG(プラグを抜け)”を唱え、飛躍的に発展するテクノロジーに反発する過激派組織「RiFT(リフト)」は、各地の研究施設を爆破したりと、その活動を激化させていた。
演壇を降りたウィルは、直後「RiFT」のテロリストに銃撃される。キズ自体は致命傷に至るものではなかったが、弾丸に放射性物質(ポロニウム)が含まれていた事から中毒症に冒されてしまう。医師は「余命4〜5週間」と夫妻に宣告する。
間もなく病床に就いたウィルは「PiNN」に言語を覚えさせる作業を続け、エヴリンはそんな彼の頭脳(知能・記憶・意識)そのものをデータ化し、人工知能上にアップロードさせようと試みる。
こうして、ウィルの肉体は地上から姿を消し、その頭脳はサイバー空間に“再生”を遂げる事に。
ネットに接続する事で、世界中から情報を得た「PiNN(=ウィル)」は驚異的な進化を加速させ、人類を脅かす存在となって行く・・
※
「人工知能を巡る(空想ベースの)プロモーション映像」として観たら、それなりに好奇心をくすぐってくれる作品と言えるんだろうけど、、全体的に「学説・理論の具体的な映像再現にばかりこだわった」ような物語(脚本)となってしまっており、エンターテインメント性やサスペンス性に著しく欠いてた印象がある。
何となく連想したのは、ロバート・ゼメキス監督の『コンタクト(1997)』だろうか。あちらも「過激なテロ組織との攻防」「壮大な研究の具現化(=映像表現)」などを活写してくれてはいたんだが・・総じて面白くなかった(・ω・)
また、不器用な天才科学者とその妻との「ラヴストーリー」が作品の根底(?)に流れてる辺りには「ポール・ベタニー助演」の印象も手伝ってか『ビューティフル・マインド(2001)』を想起させられた。
その一方、ワタシが本作(の作品世界)にすんなり入って行けなかったのは「RiFT」の絡み方に因るトコが大きいように自己分析している。
序盤〜中盤にかけ「赦し難い残虐非道なテロ組織」にしか思えない(描かれてない)のに、後半〜終盤にかけ「真っ当な活動をしてる組織」とし肯定的に描かれ始めるのだ。その辺り、なかなか「彼らに対する気持ちの切替え」が出来ず、観ててスッキリしなかった次第。
また、ウィルが(表舞台から)姿を消して(?)以降、エヴリン&マックスが物語の舵を取り、そんな彼らの周囲を『バットマン組』のジョセフ(モーガン・フリーマン)、ドナルド・ブキャナン連邦捜査官(キリアン・マーフィー)がサポートするワケだが・・ そんな2人のキャラ造型&言動が中途半端&地味な仕上りで「登場してもしなくてもあんま関係ねぇし」ってな絡み具合だった。そこはホンマに残念である。
常に、ノーラン監督作に対し「暗く、地味で、面白くない」ちぅ印象を抱きがちなワタシなんだが、そう言った「悪い部分」が更に顕著に現れてたように感じざるを得なかった。
それってば、監督が悪いのか、脚本が悪いのか、製作総指揮(←ノーランじゃん)が悪いのか・・はワタシにはハッキリ分からないんだが、、「ジョニー・デップ主演作」とし捉えても「ワーストランキングで上位に喰い込む事に間違いない1本」と評せそうである(・ω・)
(因みに『シークレット・ウィンドゥ(2004)』『ツーリスト(2010)』『フロム・ヘル(2001)』なんかが上位に堂々の(?)ランクインを果たしている)
〜 こんなトコも 〜
・要人ともなれば「差入れのケーキにダイオキシンが混入してるかも」「撃たれた弾を通じ放射能汚染しちゃうかも」などと色々気にしなければならなくなりそうだ。
・某FBI捜査官が、大した活躍もしてなかった。ってか、キリアンさんはテロリスト役で出演された方が引き立ってた気もする(⌒〜⌒ι)
・エブリンの乗ってたクルマはレガシィワゴン(BG系)だった。
・PiNNと繋がったウィルの意識の中で、電脳世界の広がる様子が“セレブロ接続”を連想させる。
・世界と繋がり、ある種「神」に近付いて行く辺り、寺沢武一氏のコミック『MIDNIGHT EYE ゴクウ』の主人公(風林寺悟空)を思わせる。
・「RiFT」のアイドル的存在(?)ブリー・ネヴィンス(ケイト・マーラー)に関し、も少し魅力的なキャラ造型は出来なかったんか?
・地下にデータ・センターが建造され、地表に太陽光パネルの敷き詰められたブライトウッドの街って、何処にあるの?
・少なくとも、最新鋭の治療設備を備え、難病を無償(?)で治す行為については、もの凄く人類の役に立ってた気がするが・・ ←いわゆる“奇跡の村”状態(・ω・)
・モーガン、レベッカと共に並ぶと・・意外に背の低さの露呈したキリアンさん(×_×) ←公称ではさほど低いワケでもないんだけど、、
・体内に仕組まれた(?)ナノレベルのマシーン(ロボット)により、急速で細胞の修復と再生の行われる“ハイブリッド人間”が登場! 当初こそ「新時代のゾンビや!」と驚いたワタシだったが・・「怖さ」を全く感じさせないのが「その設定の限界」だった。
・データ・センター内に並ぶサーバ機に、カタカナで「コンピューティング」と書かれてるのが、何とも滑稽だった(×_×)
・『マイノリティ・リポート(2002)』に登場のアイリス・ハイネマン博士もそうだったが・・科学者って園芸(庭いじり)がお好きなんやろか?
・世界規模の混乱・崩壊が描かれるワケだが、実際には田舎町(ブライトウッド周辺)が映されたのみである。やはり、限られた視点(ロケーション)で世界全体を描くのにはムリがあるのかも・・
・ナノロボットに関するCG描写は『地球が静止する日(2008)』で既に観たような気がする。
・データ・センターを遠くに臨む建物の屋上(?)にロケーションが限定され、しばらく物語の進行するトコは『ランボー(1982)』とか『ドーン・オヴ・ザ・デッド(2004)』を連想した。
・オープニングのナビゲーション映像で「トランセンデンスの世界へようこそ」などと喋り始める、ナレーターの爆笑問題。いや、そんなナビゲーションパートなんて、要らないんだけど・・
・ジョニデ主演作品としても、ノーラン製作作品としてもイマイチ過ぎ。
・ヒロイン(レベッカ・ホール)も、テロ組織の少女(ブリー)にしても、魅力に欠けてる。
・レベッカさんはスカーレット・ヨハンソンを平凡にした感じにも見える。ケイト・マーラーはクレア・ディンズを平凡にした感じにも見える。で、どちらにも“華”がない(×_×)
・時間の経過が淡々としてる。
・世界規模のハナシが見えて来ず。
・いきなり崩壊しちゃう「奇跡の村」状態のラボ・・ 並んでたしとたちは何とも可愛そう(×_×)
・ウィルのみならず、マックスも中盤で拉致監禁され“不在”に・・(×_×)
・「トランセンデンス映画祭」なんてのを開催してはどやろ?
・ナノロボットの動力源や設定が適当だった気も?
・「全世界に向け発信する演出」が一切なかった。例えば大統領演説なんかが盛り込まれてれば、少しはリアルに仕上がった事だろう。
・国家(軍)やFBIやCIAの動きが良く分からんかった。
・「夫婦愛のドラマ」としても薄味だった。
・「地下5階にコンピュータ設置」ってのは何か“根拠”があっての事か?
・構想自体には「古いB級作のテイスト」も漂ってた本作。
〜 こんなセリフも 〜
マックス“以前とは全く違う”
“人類と科学技術の対立・・それは必然”
“かつて、ネットの登場で世界は狭くなってしまった。
だが、ネットのない(今の)方が狭く感じる”
“キャスター夫妻は才能の塊だった”
「何故“彼”だと言える?」
「あれは・・“彼”じゃない」
「聞きたくないね」
「“Y2K”以上の混乱になるぞ」
「必要なのは“原始的”な装置だ」
「ナノロボットは世界中に運ばれる」
「いつ、彼が変わった? 変わったのは※だろ?」
「あれは、最初から※※※じゃない」
「人の感情は、非論理的で矛盾に満ちている」
「僕らは折り合えない」
“ウィルスが総てを破壊したが
きっと、意味があるはず”
“あの事件もこの庭も、
作ったのは、彼女の愛だった”
ウィル「銅は電磁波を遮断する」
「ここは“聖域”だからね」
「進化し始めてる感じだ」
「愚かな支援者達は“商業利用”って
言葉を聞きたいだけだろ?」
「妻は“世の中を変えよう”と考えてますが、
私は“世の中”ってものが分かっていません」
「政府からは、口出しも資金提供も受けたくない」
「人間は、未知なるものを恐れる」
「テロ組織のやり方は、論理的には
筋が通らないが、皮肉には溢れてる」
「最期ぐらい、君と過ごしたい」
「ナノテクを活用すべきだ」
「テロで死ぬなんて」
「死後も彼女を愛せるのか、不安だ」
「彼女を頼む」
「無理するな」
“聞こえるか?”
“誰かいるか?”
“暗い・・突然、夢から醒めた気分だ”
“意識が分断されている”
“治療しただけじゃない。彼は僕と繋がってる。
・・これで君に触れられる”
“君も喜んでくれると思う”
“今の僕なら、肉体的なハンディに
苦しんで来た彼らを治せる”
“これはまだ「初期段階」に過ぎない”
“「僕らの夢」が叶うんだぞ?”
“君をアップロードして彼らから護る”
「僕は生きたかった」
「恐れてるね?」
「何故、僕を信じなかった?」
「滅ぼす? 違う、この星を救うんだ」
ジョセフ「世界は偉大な考えと、偉大な男を失った」
“ここから逃げるんだ(Run from this place.)”
「意識が劇的に変化してるが、問題はそこじゃない」
「奴は“軍隊”を造っている」
「君の字は汚いな」
エヴリン「聞こえるかしら?」
「出てって!(Get out!)」
「音を立てるのは止めてくれない?」
「あなたの肉体は、もう天国にいない」
「あんまりだわ!(This is wrong.)」
「彼は私しか信じないわ」
ブキャナン「奴は・・誰も殺さなかった」
ブリー「私達は“一線”を超えてしまったの」
ウィル「電磁波や信号を(銅の網で)遮断するのさ」
エヴリン「いっそ、携帯の電源を切れば?」
エヴリン「何処へ行くの?」
ウィル「何処へでも」
エヴリン「人間とは戦えないわ」
ウィル“戦うまでもない・・超越する”
聴衆「神を創りたいのですか?」
ウィル「いい質問だ」
ジョセフ「良くぞ無事で」
ウィル「あなたに護身術も教わったおかげです」
ジョセフ「自我を証明出来るか?」
ウィル「・・難しい質問だ。
だが、そう言うあなたは出来るのか?」
マックス「僕に君を救えるだけの頭脳があれば」
ウィル「卑下するな・・君は僕ら夫婦に次いで優秀だよ」
マックス「本当にいいのか?」
ウィル「猿でも出来たんだ」
ジョセフ「大丈夫かい?」
エヴリン「最高に幸せよ」
エヴリン「あなたは?」
マックス「・・矛盾だらけさ」
エヴリン「あなたなのね?」
ウィル「ずっとそうさ」
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